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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第六話 ウブキ山脈と悟りの書③

 バンパイアのヴォルカラフィエは僕達に向かって右手の大剣と左手の大斧を一気に振り下ろしてきた。振り下ろす瞬間に彼のマナが全身から両手に集まった。マナ攻撃が来る!

「みんな避けて!スキルを使う!」

 僕が声をあげると同時にヴォルカラフィエはこの中心に向けてスキルを放ってきた。しかも大剣と大斧で別々の技を繰り出してきたのである。大剣の技は見覚えのあった「斬圧」だ。この技は圧力で周りの空間含めて一気に押し込む技で起点部から円周上に圧力波が飛ぶ。大斧の技は多重横切りの類の技だと思われる。

 ありえない。両手の技を別々に繰り出すなんて聞いた事がない。そもそも……肉体が持つのか?


 次の瞬間、防御が間に合わず「斬圧」を受けた衝撃で吹き飛ばされた。壁へと激突した所まで記憶にはあったが…………。



 気がつくと僕の隣にテロットがいた。

「大丈夫か?わしも吹き飛ばされたわ。今、お嬢とエージナが応戦しておる。」

 僕は前方を見ると、ヴォルカラフィエのスキル攻撃を躱しながら戦う二人の姿があった。立ち上がろうとしたが、うまく立てない。

「まずは落ち着きなさい。そのうちお嬢が来るから、回復してくれるじゃろう。」

「なんなんですか?僕は初めて見ましたよ。両手で別々のスキルを使う奴なんて。」

「わしもじゃ。ただ、あれは実験体だな。」

「実験体?」

「両手を見てみなさい。スキルを使うたびに筋からマナが放出しておる。おぬし先程両手別々のスキルを使うやつを見た事がないと言ったな。わしも見たことはないが、聞いたことはある。」

「聞いたこと?誰にですか?」

「カルメじゃよ。魔王大戦の時にはいたそうじゃ。ただ、効率が悪い。ゆえに悪手と言われておったそうじゃ。」

「効率が悪い?」

「そりゃそうじゃろ、身体に負担が掛かる上にマナを倍使う、いや、数倍じゃな。身体の負担を和らげる様にマナで多少覆う必要があるからな。二刀流武器のスキルを使える様に努力した方がよいと思うぞ。」

「二刀流武器のスキルが使えないから両手で使っているんでしょうか?」

「いやいや、わしなら剣と斧を別々に使うわい。見て見なさい。お嬢やエージナはスキルの特性を読んで既に攻撃を見切っている。この状況で常に両手別体スキルを使い続けるのはダメージを受けている様なものじゃ。」


 ストナがテロットを呼んだ。

「テロット、こっちに来て、応戦をお願い。その隙に私がナギトを回復させるから。」

 そう言うと、テロットとストナが入れ替わった。ストナは僕の横に来て「聖回復」のスキルを使ってくれた。

「どう?大丈夫?」

「ありがとう。これで戦える。」

「良かった。待って、今度はエージナを呼ぶからマナ寄せをお願い。」

 彼女の言うマナ寄せは聖と光のマナを武器に寄せる事だ。アンデット系のモンスターは光や聖のマナに弱い。バンパイアには両方のマナを寄せておく事が重要なのだ。あのヴォルカラフィエを倒すには両方のマナを寄せた攻撃でバンパイアの核(心臓)を突くこと。その事で核はマナを失い消えていく。

 聖のマナはストナの「聖回復」で放出されるから、そのマナを使用できる。光のマナは今のメンバーでは放出できるスキルを使う人がいない。その為マナを蓄えている魔吸石のマナを使う。石そのままでもマナ寄せ出来るが、エージナの分解のスキルがあればひとつの石から大量のマナを取り出せる。非常に便利なの技である。

 エージナが隙を見て僕達の方へ来た。二人のスキルで僕達の武器へマナ寄せをした。

 戦いの準備は整った。

「行くわよ。バンパイア退治。」

 ストナの声で僕達はヴォルカラフィエの方へ向かって行った。


 ヴォルカラフィエは両手振り上げた。今まで見ていた様子から考えると次の瞬間スキルを使う。その瞬間を狙うしかない。まずは相変わらず同じ攻撃を仕掛けてくる。そのスキル攻撃を避ける。

 避けると言っても残圧と斬撃が来るので簡単ではないけど、単純な攻撃なので大きく避けてすぐに距離を詰めればそこまで難解ではない。

 そしてもう一度振り上げた瞬間を狙う。

 相手はこちらが予想した通りの行動をとってくれた。チャンス到来。腕が上がる。

 『マナを渦を巻く様に細く細く針の穴を通す様に細く』マナを剣に集めた。

 相手が両手を挙げた瞬間に一気に相手の心臓を向けて放てば……。いや、ダメだ。

 早い!

 ヴォルカラフィエの動きが速くなった。単純だけど、こちらの動きに合わせて加速してスキルを叩き出してきた。

 完全に虚を突かれた。

 巨大な剣が僕の眼前に振りかざされた。


 やばい。


 そう思った瞬間に僕の身体が左右に振れた。と思うと思いっきり遠くへと吹き飛ばされた。

「大丈夫?」ストナの声が横から聞こえた。どうやらストナに助けられた様だ。

「ありがとう。ストナは?」

「私も大丈夫よ。けど、厄介ね、あのバンパイア。多分警戒系のスキルを使っているわよ。」

「警戒系?あまり聞かないかな。」

「相手のある一定の守備領域に入ると自分の意思に関係なく攻撃するスキルよ。難敵だけど、狙いはあるわ。」

「ストナは何か策がある?」

「一斉攻撃よ。私達が前方で一斉に攻撃を仕掛けるから、ナギトは相手の裏からスキルを使った瞬間を狙って核を破壊して。」

「分かった。」


 僕達は左右両方向に別れた。

 ストナやエージナが前方から通常攻撃を仕掛けている間に僕は後ろへと回り込んだ。

 ゆっくりと忍び寄る。ヴォルカラフィエの背中を捉えた。奴の動きは常に一定である。機械仕掛けの様な動き。意思があるのか分からない。すでに闇のマナに囚われている可能性もある。背中からも常に闇のマナが蒸気化して吹き出ているようだ。警戒系のスキルがなければそこまで強敵ではないのだが……。

 僕はマナ寄せ開眼で奴の核を確認する。完全に後ろは死角になっている。警戒系のスキルでもスキルを使った瞬間は何も出来ないだろう。スキルを使った瞬間、警戒していても何も出来ない瞬間を狙しかない。

 もう一度剣のマナを鋭く細く剣の回りに回転させる。そして、更に相手との距離を詰め、攻撃範囲へと近づいていく。近距離まで来ると、ストナ達と目配せをした。


 ストナ達が動く。スキルを使って相手を誘導する。

 誘導通り、スキルを使った。

 今だ!


 僕は一気に剣を突きつけようとしたその時、あと一歩の所で敵が違うスキルを使ってきた。

 しまった。

 体術系の旋回攻撃だ。

 まさか、剣と斧のスキルを使っていても、体術なら使える?そんなバカな?

 旋回した拳が僕の脇腹にあたった。いや一応右腕でガードしていたのにガードごと殴られた。そして拳を受けた勢いで吹き飛ばされた。

 あと一歩足りない。僕にはスキルが使えない。カウンター系の攻撃でからダメージを与えられるが、攻めではスピードが足りない。くそ!そのまま岩に激突する。


 一瞬、何かの声が脳裏に響いた。

『け……い……。し……ょう……し……ろ。』

 なんだ?誰?

『けい……しょう……しろ』

 誰の声だ?

『けいしょ……うしろ。」

 何なんだ?この声は?

 すると声はここで止んだ。今のは何だったんだ。衝撃を受けた際の何かなのか?


 戦場はエージナとテロットが対応している。ストナがこちらに来るのが見える。他のメンバーは先程の体術攻撃を受けなかった様だ。

「ナギト大丈夫?」そう言って『聖回復』で僕を回復してくれた。

「警戒系のスキルは厄介だ。」

「そうね。今度は私が飛び込むわ。聖流剣ならそれなりのスピードが出るから。ただ、私の攻撃で倒せるか分からないからナギトは援護をお願いするわ。」

「分かった。」


 僕達は再び後ろへ忍び寄った。


 ヴォルカラフィエはエージナ達へスキル攻撃を繰り返していた。その時、突然ヴォルカラフィエが上を向き大声を上げた。

「ウォーーーーーーーーーーーーーー!」

 何があった?僕とストナの方を見たが、ストナも何が起こったのか分からない様子である。

「ウォーーーーーーーーーーーーーー!」

 ヴォルカラフィエはもう一度大声を上げるとその場に倒れこんだ。地面が軽く揺れ、辺りは静けさを取り戻した。

 僕達はエージナ達と合流する。

「何があったのよ?」

「分からんわ。急に倒れ込みおった。」

 テロットが倒れたバンパイアに近づいていく。

「気をつけてください。まだ息があるかも。闇のマナは渦巻いています。」

 テロットは僕の声にハンマーを心臓の方へ指した。

「奴の核はどうじゃ。まだマナがあるか?」

 その声に僕はバンパイアの核を見た。身体中は闇のマナで覆われているが、核は真っ白であった。何もない様に見える。

「空っぽ?」

 僕がそう呟くとテロットがバンパイアの顔にハンマーを押し付けた。

「マナが尽きた様じゃな。使いすぎじゃ。どう考えても。無駄な両手で攻撃に加えて、警戒系スキルを使用。スキルの無駄使いじゃ。」

 暫くすると、バンパイアの身体から湯気の様に闇のマナが一気に吹き出してきた。そして、いつの間にか目の前の巨大なバンパイアは消えて行った。




 戦いを終え、体制を整える。

 僕達はケリケリ隊の手当を再開した。3人とも傷が大きい。弓攻撃で受けた毒ダメージが残っている。毒自体はエージナの分解で回復したが、なにぶん矢数多く、ダメージが髄所に残っている状態である。

 ケリケリ隊の生き残り(まだ転移陣の向こうで他のメンバーも生きてい欲しいけど)は弓使いのアポイと戦士資質で剣を使うキャリラ、そして槍を使うライドである。

 3人の体調に合わせてゆっくりと、このどこか分からない洞窟の出口を探す事になった。

 

 僕達が転移陣でやってきた空間の入り口(出口)には先程バンパイアに吹き飛ばされたフェアラーが倒れていた。

「そう言えばこいつもいたな。息はありそうじゃな。どうする?」

「軽く回復させて、出口を吐かせるわ。」

 そう言うとフェアラーを紐で縛りあげてから、亜空間から回復薬を取り出して、フェアラーの頭の上へと垂らした。

「お嬢も回復薬なんか持っておるのか。関心じゃな」

「持っているわよ。当たり前でしょ。ナギトのマナ寄せでの回復が便利だから滅多に使わないけど、運搬係りの基本です。」

 エージナとストナが話していると、フェアラーの意識が戻った。

「ここは?」

「こんにちは。フェアラー死刑囚殿。ご機嫌はいかがかしら。まずは質問してよろしいかしら?」

 フェアラーは辺りを見回して状況を理解した様子で諦めた様に首を垂れた。

「ストナお嬢様何を知りたいのでしょうか?」

「まずここはどこ?」

 そこである。ここがどこなのか、僕達は何も知らない。転移陣でここまで来たのだから、まずはここがどこなのかそれが重要である。

「ここですか?あはははは。ここは名もない洞窟です。イヒラ山脈の北東にある小さな小さな洞窟。名も無き最果ての洞窟ですよ。我々はこう呼びます。グリーテルの研究所。」

 …………!

「リトダの研究所?ここが!」

「そうだ。天才グリーテル・リトダの研究のすべてがここにある。人をバンパイアにする装置も闇のマナに覆わせて別人にする薬も全ては魔王バンパイアロード様を復活させる為の研究の糸口に過ぎない。あり得ない。多くの人はこの素晴らしい研究にあまり気にも留めていない。ここの価値を全く分かっていない。リトダ教授に申し訳ない。最高の知識。最高の設備。これこそ芸術としか言いようのないものだ。」

「だから何?」

 …………。ストナのひと言がフェアラーに突き刺さったのか?目を見開いてストナを何も言わずに見ていた。

「最高の知識?そんな事で人を実験して、それが何?それに何の価値があるの?魔王?そんなもの私……、このナギトがぶっ倒してやるわよ。」

 そこは僕に投げるんだ。

「フェアラーさん、ここに魔王の復活をさせる知識があるなら、魔王の復活を防ぐ知識もあると言う事ですよね。」

 僕がそう言うと、フェアラーの視線が一瞬僕の顔を逸らした。やはり、ここに何かがある。

「フェア……。」

 ガリ……………………。


 何かを噛んだ音が響いた。

 フェアラーが何かを噛んだ。毒?自殺?


 その時、フェアラーから闇のマナが溢れ出した。

「あはははは、お前達なんかの為に、これを使いたくなかった。良いだろう。最高傑作の闇装甲と呼ばれる力を見せて上げよう。」

 そう言うと身体中の筋力を使って巻き付けてある縄を引きさいた。身体の毛穴全体から闇と邪のマナが浮き出す様に立ち昇る。このマナ、見た事がある。どこでだ?僕は脳裏の記憶をフル回転させる。

 そのマナが僕達の方まで近づいてくる。僕は危険を察して、一歩下がった。

 その時、マナの香りが鼻についた。

「ゾンビパウダー?」

 匂いと言うより感覚だけど、これはゾンビパウダー?死狂の館でバンパイアのバーブルから振りかけられたあの粉に近い感覚だ。

「あはははははは、さすがはバーブル様から危険視された人物だ。褒めてやる。その通り、これはゾンビパウダーの最終形態だ。」

 闇の中からフェアラーの声だけが響く。

「楽しいぞ、最後にお前達を皆殺しに出来ると言う事だ。この秘薬はゾンビパウダーを改良したものだ。グリーテル教授の研究を受け継いだある学者の最高傑作。ゾンビパウダーにある種の妙薬とある種の血を混ぜるこ事でゾンビになる数時間だけ、最高の肉体を手に入れる事が出来るのだ。」

「馬鹿じゃないの?結局はゾンビになるだけでしょ。どんなに力を手に入れても、それを使う側が馬鹿なら、結局馬鹿なのよ。」

「あははははは、なんとでも言うがいい。まずはお前だ!ストナー!」

 そう言うとフェアラーが闇の中から飛び出そうとしていた。僕は彼の動きに合わせてちょうど心臓の位置へ剣先を置いた。

 フェアラーは飛び出して来たと同時に僕の剣先に気が付かず、ストナ目掛けて突進した。そのまま剣はフェアラーの心臓を貫き、フェアラーはマナが弾け飛ぶ様に消えて行った。

 驚いたのは彼の馬鹿さ加減ではなく、最後に闇のマナから飛び出して来た時の姿だった。

 一番隊隊長カラコロ厶の姿がそこにあったのだった。

 一瞬だった。僕の剣で心臓を貫かれた瞬間に元のフェアラーの姿に戻り、姿形もない様に消えて行った。

 フェアラーはこの薬の成分に『ある種の血』と言っていたが、それはカラコロ厶の血の事だろう。聖騎隊最強を作る薬だったんだ。


「最後まで馬鹿だったわね。」ストナが僕に近づいて来て言った。

「そうだね。闇から出てきた瞬間のフェアラーの顔見た?」

「見たわよ。カラコロ厶増殖薬ね。あれをする意図が私には分からない。何がやりたいの?」

「さあ?」

 最強を目指す者の性なのだろうか?ただ、この薬は聖京都内にまだ残っていると考えられる。次なる敵はカラコロ厶増殖軍なのだろうか?


 ドン!

 フェアラーがいた辺りからいきなり大きな音がした。何かが落ちた音だった。僕とストナがその音のした場所を覗くと、そこには本が落ちていた。

「何?」

「亜空間魔法かしら?当人が死ぬとその場に亜空間へ入れていた物が出てくる事もあるから。」

 僕はミリアンと戦った後のバンパイア軍団の落下を思い出した。亜空間魔法は文字通り亜空間に物を収納出来る魔法である。使い手は少ない上に人によってその収納量も異なる。そして使い手が亡くなると起こること3つと言われているらしい。ひとつは今の様にその場に現れる。大量の物が空から落ちてくるとかなり厄介だった。ふたつ目は時期がズレて出てくる。最後は消える。誰にも分からいと言うのが現在の結論となっているらしい。

 そもそも使えない者にとってはあまり関係ない。


 僕は本を手に取った。その表紙に上書きされた様に大きな文字で『悟りの書』と書かれていた。

「何これ?悟りの書?明らかに誰が別の人が書いた文字よね。」

「そう思う。フェアラーかな?」

 その表紙は肌に馴染む厚紙が使われている。俗に言うマナ紙だろう。劣化を防ぐ魔法を押し込んだ紙である。一枚開くと綺麗な文字で中にはびっしりと日記の様な研究記録の様な内容が書かれている。

 ストナも僕の横から覗き込んでくる。

「リトダの字?」

「知らないよ。そんなの、ライガさんは知っているかも。」

「そうね。お土産にはいいんじゃない。」

「そうだね。」

 


 その時。

 ドドドド、ドドドド。ゴトン。ドドドド。

 地面が揺れる。

 洞窟全体が揺れ始めて来た。天井の岩ご一部落下し始めた。岩が転がる。

「なんだ?」

「あいつらの仲間がなんかしたんじゃろ。逃げるぞ!」

 ここに到着した時フェアラーの近くに誰かがいた事を思い出した。フェアラーが何かあった時、この洞窟を破壊する様に命じていたのかもしれない。

 とにかくここにいては生き埋めになる。

「逃げよう!」



 僕達はフェアラーが出てきた通路をひたすら走った。ケリケリ隊の3名が付いて来られるスピードを維持しながら走り続けた。洞窟は時より大きく揺れて、その度に天井が大きく崩れて来た。

 揺れ動く通路をひたすら突き進んだ。

 暫くすると別の円形の空間に出た。

 やはりここに転移陣がある。

「転移陣だ!どうする?今度こそリリラのお膝元かも……。」

「行くわよ。どうせこのままいて洞窟で埋まるくらいなら、リリラに一矢報いてやるわよ。」

「わしらも構わん。やれ!」

 僕は全員が転移陣の中心へと来た時、陣の中央部を剣の鞘で思いっきり叩いた。

 


 ………………。


 気がつくとそこは見覚えのある風景だった。

 ……。

 やばい!

「みんな隠れて!」

 ゴブリンに取り囲まれていた空間へと戻って来たのだった。矢を串刺しにされて息絶えているケリケリ隊のメンバーがそこにはいた。

 それ以上に問題は上からのゴブリンの強襲である。そう思い一気に岩陰に隠れた。



 矢は降って来ない?

 矢の代わりに上空から声が響いた。

「ナギト殿?ストナ様も無事ですか?」

 ラーナキュアルの声だ。どうやら今度こそ助かった様である。

 ふと地面を見ると、転移陣が消えていく。マナが放出されていった。転移陣先がなくなると勝手に消えるのだろうか?

 一周回ってようやく落ち着けた。そんな感じだった。

 


 その後僕達はケリケリ達の遺体を葬ってから、イワクの古道にあった転移陣を封印し、マトゥキ達と合流した。マトゥキ側の北側の洞窟には転移陣は無かった。


 最後の転移陣があると思われるイヒラ山脈の塩の洞窟へ行く最初の分かれ道に来た時、東の方からまたモンスターの軍団が向かって来るのが見えた。

「私達がどこにいるのか分かっているみたいね。」

「本当に。」

 僕は空を見上げた。時は夕刻になろうとしていた。薄赤く染まった黒い雲で空は覆われている。時より見せる薄明るい空には光始めた星が見える。この空のすき間からリリラが僕達を覗いている様にも思えてしまう。

 僕達はリリラの手の中で踊らされているのだろうか?そんな不安をかき消すように、マトゥキが叫んだ。

「行くぞー!」


 僕も力の限り叫んだのだった。

「オーーーー!」

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