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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第六話 ウブキ山脈と悟りの書②

 渓谷の深い奥の大地に日の光が照り始めた。時刻は午後近くなろうとしていた。静かな渓谷に石が転がり始めると、それを合図に時上空から雨の様な矢が降り注ぐ。矢じりは木の枝を鋭く研いだ簡易的なものだが、その色が独特の色をしている。矢じりを固める為に何かを塗っているのか?それとも毒を塗っているのか?たぶん後者だろう。

 

 僕達はウブキ山系の洞窟へ逃げたとされるシオツの残党を追って来た。マトゥキ隊が北の洞窟、ラーナキュアル隊が南側南洞、僕達が南側北洞を調べる事になり、この洞窟へと向かってきたのだ。

 南側北洞は洞窟と言うより岩盤の裂け目から出来た谷間の様な存在だった。そこへ入り込み、残党を捕まえた所までは良かったけど、どうやら罠にかかった様だ。崖の上に隠れていたゴブリンの軍団が僕達へ向けて矢を射ってきたのだった。岩陰に隠れて矢の猛攻は躱せたが、これからどうするべきか?

 途方にくれていた。


 矢の雨が降り終わった瞬間を見計らって、エージナは崖の上の方を見あげた。

「エージナ!あまり顔を出さない方がいいわよ。狙い撃ちされるわ。」

 ストナがエージナを止めるが、当のエージナはあまり気に留めていない様子である。

「相手はゴブリンじゃからな。そんなに心配しておらん。」

「あのね。ゴブリンの中にはホブゴブリンと分類されるスキルを使う奴らもいるから危険よ。だから、そう言う時は、こっちもスキルで調べるのよ。」

 ストナはそう言って僕を指差した。マナ寄せ開眼で確認しろと言う意味である。


 僕はエージナのマナを使ってマナ寄せ開眼で上空を確認する。崖の上のマナが見え始める、崖の上までは開眼の力が及ぶ様である。そこにゴブリンのマナが見える。

 ざっと200体が上空(崖の上)にいる。5体が特別に濃いマナを発していた。ゴブリン以外にはマナを感じない。近くにバンパイアや人はいないのだろう。ゴブリン達が僕達を襲ったのはリリラの命令なのか?たまたま僕達と遭遇して攻撃を仕掛けてきたのかは分からない。けど、ここにこれだけいると考えるとリリラ側の命令の可能性が高い。


 ストナが僕の話を聞いて少し考えこんだ。

「その5体はホブゴブリンね。弓系スキル持ちと考えると厄介ね。エージナ。昔使った火炎鳥って使える?」

「あれをここで使うのか?無理ではないがそれなりに衝撃力があるからな。崖崩れを懸念せんとこっちが埋もれるぞ。それにあのスキルは奥義じゃからな。ホイホイ使えるものではないんじゃぞ。」

「何よ。奥義だろうと。死んでしまったらおしまいでしょ。」

 エージナと言い合っていたストナが突然こっちを見た。

「テロット。あなた大地の鉄槌スキルでなんとか出来ない?崖崩れをそのスキルで防げるでしょ。」

「出来ない事はない。ただ、連続的に使えないぞ。」

「何で?」

「何で?スキルとはそう言うもんじゃ。」

 ちっ。と言うストナの舌打ちが岩陰に響いたのだった。


 エージナは鍛冶細工資質のドワーフ族である。武器は普段から炎のロッド(自作)を使っている。炎系の攻撃を得意としている。スキルは熱風、火炎球、奥義火炎鳥を使うお茶目なおっさん。

 テロットは鉱山守資質のドワーフ族で、大地のハンマーと言うこちらも模造品を武器としている。スキルは大地の鉄槌、稜角の翼、鉄板などの土系スキルを使う根は真面目なおっさん。

 気さくなおっさんコンビである。


 おっさんコンビの能力を使う事で、ストナはこのピンチを回避しようと考えている様だ。

 降り注ぐ矢を火炎鳥で防ぎ、その後テロットの大地の鉄槌で飛来する残り矢や岩を防いでここから避難する作戦だ。無理ではない案だと思う。逃げるだけなら十分である。

 ……。

 逃げるだけ?

 ……。

 逃げるだけで良いのか?

 この場合、出口に伏兵を仕込むのが定石だと思う。

 

 僕はもう一度マナ寄せ開眼で周りを確認する。しかし伏兵らしき雰囲気はない。200体がこの穴上に集結している。

 ここさえ切り抜ければ、逃げられそうだ。


 ストナとエージナの話が大きく過熱している。

「ナギト。ちょっといい?」とストナに呼ばれる。

 僕が行くとストナ達が地面にざっくりとした地図を書いていた。この空間への入口から5回屈折してこの丸い空間に繋がっている。この丸い空間を越えても5回の屈折路、その後この域を逃げるまでは崖の上から狙われる可能性が高い。この領域からどうやって離れるかを検討していた。

「ここまではエージナのスキルで行けるでしょ。ここからどうすかと言う問題よ。」

 そう言って屈折路の中央部を指差した。屈折部中央まではテロットのスキルで対応が出来ると言う事だ。

 僕は先程見たゴブリンの集団がいる位置に点を付けて行く。ほとんどはこの上に居座っている。残りは屈折路の反対側にいる。走るスピードは一緒と考えてもやはり分は悪い。

「ケリケリ達に誰かいないかな?」

 僕はそう言いながら別のところに避難しているケリケリ達を見た。するとケリケリ達は何人かが怪我して手当てをしている最中だった。

「だめだ。怪我人がいる。」

 そうだ、ケリケリ達の隊には怪我人がいる。僕達より逃げるスピードは落ちる。更にゆっくり逃げる方法を探さないと……。

「そうね。そうよ。エージナ!あなた2回くらい火炎鳥使えるでしょ。頑張りなさいよ。」

「奥義じゃぞ、そんなホイホイ使えるか!」

 僕はこの状況を空から眺める様に書かれた地図を見つめていた。

 どこかに隙はないのか?焦るな。そう心に言い聞かせる。ここにいるだけなら、いつか助けは来る。

 ……。

 ラーナキュアルやマトゥキが来てくれれば必ずチャンスは出来る。

 落ち着け……。

 ……。


 この状況はどっちが不利なのだろうか?


 お互い早めに決着付けたいはずだ。ゴブリンだから知能がないか?いや、ホブゴブリンの類ならそれなりに知力は高い。今だって何体か飛び降りて来る事も出来るはずだ。

 なんだろう。

 静か過ぎる。


 何かを狙っているのか?


 僕はもう一度マナ寄せ開眼で上空のゴブリンを見た。

 ……。

 いや、何も変わらない。

 そう思って視線を下げた時、ふと僕のいる地面にマナがある事に気が付いた。

 ……。?

 これは……。

 転移陣?


「ストナ!この下に転移陣が埋まっている!」

 僕達は自分達の地下を眺めた。

「ここが魔物の出口?」

 ふと周りを見た。しかし、ゴブリン達が大量に出てきた痕跡はない。この中が隠れ家なのか?

「ここが隠れ家の入口かも。」

 僕がそう言うとストナが考え込んだ様子でこっちを見た。

「そうかもね。ナギトが書いたゴブリン達の立ち位置、確かに不自然。私ならこっちに多く配置する。」

 そう言って屈折路の出口を指差した。確かにここに配置するのが攻防戦で優位に立てるはずだ。しないのは逃がす為?僕達がこの仕掛けに気付かせない為なのか。

「もしナギトの言っている内容が正しければ、この転移陣の奥に相手が知られたくない何かがあるかも。でも……。」

 エージナももう一度足元の地図を見た。

「もしかすると、リリラの目の前に転移する可能性もあるわけじゃな。危険な賭けと言うわけじゃ。おぬしはどうしたい?」

「どうするって?僕?」

「だから隊長にうかがいを立てているんじゃないの。私達は隊長に従うわよ。」と意地の悪いストナの顔が現れた。

「マトゥキさんからは深追いするなと言う命令があるから、ここは引くのが鉄則だと思うよ。」

「現状を調べるのが命令でしょ。それなら一度入ってみないと、洞窟はあそこよ。」

 そう言ってストナは円形の空間の下を指差した。

「面白い、乗った。わしらも行くぞ。お宝があるかもしれない。」

「エージナさん、聞いてます?さっきも言った様にリリラの目の前に転移されるかもしれませんよ。」

「考えてみろ。ここに聖京都への転移陣があるなら真っ先にさっきの残党は使っていたじゃろ。ここに何かあるとしか知らされてないから、ただ助けを持ってここにいたと言う方が正しいと思うぞ。」

「エージナってお宝に興味あったの?意外ね。」

「何を言っておる。お宝と言っても金銀財宝だけがお宝ではないわ。わしらにとってはそこの剣もお宝じゃ。」

 そう言って、僕の脇にさしてある炎粉飾剣を指差した。

「魔王大戦後に姿を消した名武器や名防具を見てみたい。これはわしらの夢でもある。テロットの持っている大地ハンマーも本物があるなら見てみたいものだ。」

「それなら行きますか。」

 全員が顔を合わせて頷いた。



 この膠着した場面を先に動かしたのは、僕達でも、ゴブリン軍でもなくケリケリ隊だった。

 全員で円形状の空間の中央へと出た。

 もちろん、この時点でゴブリンの矢の標的になる事は分かる。ケリケリ隊の10名中2名が負傷、その2名を別の2名が背負い、残り6人で応戦する形である。

 弓士4名、2名が剣士だ。弓と弓の応酬でゴブリンを減らして、上から降り注ぐ矢を剣士のスキルで対応する作戦の様だ。ケリケリが一瞬こっちを見た。付いて来いと言わんばかりの表情だった。

「仕方ないわ。一旦引きましょう。彼らを巻き込むのも気が引けるし、彼らの力を借りれば、出口までならなんとか出られそうね。」

 ストナが言い出した。僕達はもう一度お互いを見合って頷いた。まずは引こう。

 

 僕達も参戦しようとしたその時、ケリケリ達の数名が倒れた。

 スキルだ。このスキルのマナ見覚えがある、心臓の矢!やはりホブゴブリンはスキル使いだ。ケリケリと剣士2名が突然心臓から血を噴き出して倒れ込んだ。

 そのスキルをきっかけに矢の雨が降り注ぐ。このままでは矢の急襲で他のメンバーもやられる。僕は彼らを助け様と飛び出そうとした。しかし、既に多くの矢が降り注いでおり、あたりは見るも無残な惨状と化していた。

 僕より一歩早く飛び出したエージナが火炎鳥を使った。炎の鳥が上空へと舞い上がって行く。その瞬間、矢の応酬が止んだ。

 僕は近くにいる弓士へと近寄った。しかし、もう息がない。全身を矢が刺さって一部の矢が心臓や頭部に刺さっている。くそ!

「行くわよ!」ストナの声が響いた。

 ストナが持っている大剣で円形中央部を切る様に叩きつけた。もう迷ってはおられない、転移陣で移動するしかなかった。


 


 ストナが地面を叩きつけたと同時に風景が変わった。この感覚はスルーニルで転移陣を使った時に似ていた。


 僕達は薄暗い洞窟の中に立ち尽くしていた。


 ここは?

 僕は辺りを見回した。

 僕達5人は全員無事だ。でも、ケリケリ隊は3人しかいなかった。ケリケリ達の遺体もない。この転移陣は生きた人しか移動出来ないのか?それとも転移陣の範囲外だったのか?分からない。

 ただ、ケリケリ隊の3名は負傷者を背負っていた2名と弓士の1名だけだった。3人とも決して無事ではない。ストナ、エージナとゴンザが手当てにあたっている。僕とテロットでここがどこなのか注意深く観察していた。

 

 マナ寄せ開眼を使った。壁の奥にマナの動くの様子が見えた。このマナは人だ。バンパイアやゴブリンの類ではない。

 何人かいる。人のマナが壁の向こうで動いている。3人?4人?そんなに多くはない。この洞窟は特殊な鉱石なのか、壁を越えるとマナ寄せがほとんど機能しない。壁近くに人がいることだけは分かる。

 奥には大勢、いやゴブリンが大量にいるかもしれない。油断は出来ない。

 

 人のマナはゆっくりと左側へと動いてくる。残りのマナはこの周囲から離れて行った。

 ひとりのマナが動く先にこの空間の入口がある。丸く薄暗い空間、その外に何があるのか。

 足元に転移陣はない。どうやら、一方通行の転移陣の様だ。モンスターがひしめく洞窟ではなかった事は幸いな事だろうか。

 ゆっくりと忍び寄るかげに僕は剣を構える。この忍び寄る影は味方ではない。それだけは確かである。ぼんやりと映っていたマナが次第にはっきりとし始めた。

 影はゆっくりと姿を現した。

「お久しぶり。七本槍の道化衆の皆さん。」

 その声に聞き覚えがあった。いや、可能性の中には入っていた人物のひとり。元聖騎隊長フェアラーだ。

「いやー、懐かしい。今日隊長はいないですか?残念ですよ。あの憎たらしい顔を見られないなんて。」

 隊長とはライガの事である、彼はアタゴ山の戦いでライガに捕まった。その事を憎んでいることが伺える。僕は剣を強く握った。ストナもいつの間にか戦闘モードに入っている。フェアラーは槍騎士資質。強力なスキルはボルケーノである。槍と火炎系魔法を合わせた様な攻撃の投槍系スキルで落下点を名前の通り、火山の噴火の様する攻撃である。

 しかし、僕達にも炎帝御輪があるから炎系の攻撃は無効化出来る。

 そうなれば後は肉体戦となる。

 隊長格の相手にどこまでやれるかだ。ストナやエージナ達との連携が勝利の鍵だ。

 僕の緊張感が高まる。向こうか仕掛けて来るならその時が勝負の時だ。


 予想外の行動を彼は取った。槍を置いたのだ。

「まあまあ、私も君達と戦う気はない。どうだろう。取引をしないか。」

「取引き?」

「今から出口まで案内する、君達はそのまま出て、ここの事を忘れる。どうだ。悪くないだろう。」

「何を考えいるの!私達があなたの嘘に騙されると思っているの?」

 フェアラーは今度両手を上げて降参の様な身振りをする。

「まさか。君達と戦っても勝てない事は理解している。私もバカではない。せっかく命を長らえたのにここで命の取り合いなんてしたくないだけだよ。どうだろう?乗るかい?提案に乗ってくれれば、いい事を教えて上げよう。ナギトくんに関係する事だよ。ナギトくんの知らない七本槍の道化衆の歴史なんて。どうだい?」

「ナギト、こんな奴の言う事、耳を貸さないで。」

「おやおや、ストナ嬢にも関係はあるんだけどなー。七本槍の道化衆と言えば君のお父さんだろう。どうかな。聞いてみたいと思わないか?ゴブリン襲撃事件の真相を。」

 ストナが怒っているのが分かる。でも、ここで感情的になるのは相手の思うツボだ。

「ストナ!」

「ナギト分かっているわ。それならフェアラー死刑囚殿、あなたは何を知っていると言うの?何も知らないでしょ。いい加減な事しか言えないのよ、この人は昔から。」

「怖い、怖い、これだから聖騎士資質の人達は苦手なんだよ。そもそも私は君達の先輩なんだから、もう少し敬い給え。」

「敬う?その前に敬われる行動をしてほしいわよ。バンパイア側に付いて恥ずかしくないの?」

「恥ずかしい?それこそ偏った考えだ。モンスターが自分達より下とする卑劣な考え方。まあ、いいだろう。真相を私が知っているか?その質問から答えよう。真相と言うよりパーシウルを殺すように仕組んだのは私だからな。あの時、パーシウルが仲間に見放され、ゴブリンから八つ裂きにされるのを私は崖の上で眺めていたから。知っているとも。あれは爽快だったよ。あははははは。」

 ストナの剣にマナが宿る。やばい、これは完全に相手の思うツボだ。僕はストナの前に立つ。その事でストナは冷静になった様だ。

「なかなか、冷静だな。てっきりひとり突き進んでくるかと思ったよ。」

 やはり、相手の狙いは分断だ。

「フェアラー!お前がユウをそそのかしたのか!」

「ユウ?違うな。私が手札に置いたのはダグネルだよ。彼は自己顕示欲が強い、しかしな、残念な事に実力がなかった。だから、簡単に上にのし上がる方法を教えてやったのだ。パーシウルを潰せせと。簡単だったぞ、準備に手間をかかったがな。あとは……。」

「ふざけないで!絶対に許さない。」

「あははは。ストナお嬢様に許してもらうつもりはないな。パーシウルもバカなヤツだ。せっかくこっちに誘ってやったのに断るから、仕方なしに死んでもらうしかなかった。後は予定通りだ。ダグネルを使ってユウ達が独立する様にしただけ、ついでに……。」

 そこまで言うと一瞬彼の動きが止まった。

 なんだ?もしかしてこれ自体が時間稼ぎか?何の時間だ。奥には誰がいるんだ。

「そうそう言い忘れたよ。」またフェアラーが話し出した。

「七本槍の道化衆の命名の意味を知っているかな?とって素晴らしい命名なんだ。ぜひ記憶に残しておいてくれ。」

「なんだと!」

「ナギト。落ち着いて!あいつの口車に乗ってはダメよ。」

 一言ひとこと癪に障る言い方をする。でも、七本槍の道化衆の命名の意味なんてユウしか知らない。僕達だって知らされなかった。こいつが知っている訳がない。

「ほう。お前なんかが知るわけがない。自分達も知らないのにって顔だな。そりゃ、言えないよな。七本槍とは7人を表している。それは知っていたか?その7人は誰だかわかるか?分からないだろう。」

「お前が何を知っている、知らないくせに勝手な事を言うな!」

「ユウ、アイカ、グロス、コハルそしてお前、ナギトくんの5名と後2人だ。それはダグネルとアグルスの7名だ。」

「だ、誰だ、アグルスなんて知らない。いい加減な事を言うな!」

 僕は思いっきりフェアラーを睨見つける。何なんだ。こいつは!

「お、お、怖い。怖い。アグルスをナギトくんは知らないと思うがダグネルの兄だ。」

「そんな分からない人がなぜ僕達の隊に入るんだ。」

「本当に何も知らないのだな。お前達5人でダグネルとその兄を養うから7人なんだよ。ダグネルはユウをそそのかしパーシウルを見殺しにする様に仕向けた。それなのにその事を逆手に取って自分と兄を養う為に七本槍の道化衆を作らせたんだよ。ま、もう少し言い換えるなら、私が仕向けたんだがな。どうして聖騎隊外で手駒となる隊が欲しかった。ちょうどいいのが転がり込んで来たと言うわけだ。あははははは。」

 落ち着け、落ち着け。僕は心の中で自分に冷静さを取り戻させる。

「あははは。その時、ユウが自暴自棄に付けた隊名が七本槍の道化衆さ。自分達は道化だ。だそうだ。笑えるな。私からのすれば道化と言うより傀儡たがな。暫くして予想通りユウはダグネルを殺した。アイカもグロスもコハルもたぶん知っていただろう。しかし、見て見ぬふりをした。楽しいよ。可愛い後輩達が闇に堕ちていく姿は。彼らが犯した闇はそれだけではない。マーロンのクソ野郎の密かに放った密偵であるサファイを七本槍の道化衆へと紛れ込ませた。その密偵の事を軽く教えてやるとユウはそいつを我々に引き渡した。完全にいい部下が出来たと思えたな。もちろん今回も3名様は見て見ぬ振り。本当は彼女達も闇に手を染めて欲しかったんだけどな。しかし、本当に残念だ。本当に残念だ。迷い森であの館を見つけてしまった。私としてはもう少し手駒を手元に置いておきたかったけど、バーブル様には逆らえない。そう言う訳だよ。どうかな?七本槍の道化衆の命名の経緯は参考になったかな?あはははは。」

「クソボケ死刑囚!あなたに何がわかるのよ!これ以上私達の隊を侮辱するならここであなたを斬る。」

 そう言うとストナの剣にマナが宿る。

「その通りじゃ、だからなんだ。昔のことなんか必要ない。わしらは今を生きているんだ。」

 エージナ、テロットも身構えた。

「みんな、ありがとう。」

「別にナギトの為に怒ってないわよ。私達の隊なんだからね。」

 


 その時だった。洞窟が軽く揺れた。

 いや、洞窟全体のマナが揺れたんだ。

「ようやく、こちらの準備も整った様だ。紹介しよう我が同胞ヴォルカラフィエ死刑囚だ。」

 やっぱりヤツがこの話をした理由は時間稼ぎか。まんまと策略にはまった様だ。と言う事はこちらを迎え撃つ体制が整ったと言う事だ。今更悔やんでも仕方ない。やるしかない。

 次の瞬間、フェアラーの身体が横へと吹き飛び岩壁にぶつかり血しぶきを上げた。フェアラーのいた場所には巨大なバンパイアが立ち尽くしていた。

「ウォーーーーーーーーーーーーーー!」

 バンパイアは唸り声を高らかにあげる。

「騙しやがったな。フェアラー!勝手に人をゴミクズバンパイアにしやがって、ウォーーーーーーー!」

 再び唸り声を上げる。怒りと悲しみの交じった様な声だった。なんとなく想像がつく。このヴォルカラフィエと言うバンパイアはフェアラーに騙されてバンパイアにされたのだろう。バンパイアには3種類あると言っていた。その最下層のバンパイア、ゴミクズバンパイア。何かの装置で作られるバンパイア。その核は脆く1年しか生きられない。

「どいつもこいつも私を馬鹿にしやがって!ウォーーーーーーーーーーーーーー!」

 そのバンパイアは再び唸り声を上げる。今度の声は僕達に向けて発している様だ。ヴォルカラフィエと言われたバンパイアは右手に巨大な大剣を持ち、左手にも巨大な斧を持ってこちらに怒りをぶつける様に立ち尽くしていた。


 色々とあったのがどうやら僕達の敵はこいつの様である。

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