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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第五話 イーダーオーツと特別議会②

 火薬都市ガーマイン、クラスタル地方の人間統治側東北、地方全体から見ると北側中央に座し、イーダーオーツの次に発展している都市である。名前の通り鉱山で使う爆薬の研究施設がある。研究都市でもあり、爆薬工場を多数有する工業都市でもある。

 街の中央には湧き水溢れる泉があり、その泉を中心に北側を政治地域、東側を工場、西を学校、南を商業地域と綺麗に整地されている。その美しい街のつくりから最近では密かな観光スポットとして注目を浴びている。


 


 僕達七本槍の道化衆はケニーヒス湖での釣りの後、鉱業都市エセットへ行く予定をキャンセルしてガーマインへと足を向けた。

 突如エセットの総代表ハルツがガーマインへと向かったと情報を受けて、僕達もガーマインへとやって来たのである。ちなみにグリラントは町が苦手と言う事でエチャメールへと帰っていった。


 ストナの足取りが軽い。スキップしながら楽しそうに歩いている。

「こんな素敵な所なら前回も寄れば良かった。ねえ、ねえ、あっちも見ても良い?」

 ここでの目的はガーマイン総代表ドリデン氏とエセットの総代表ハルツ氏に会うこと。でも、いきなり行っても会ってくれるわけもない。その為案内役のルトブルとエージナが会えるよう手筈を整えてくれていた。

 その間、僕とストナはテロットの案内でガーマインを見学する事になった。


 ガーマインの見学は最初北側の政治地域の名所を見て回っていたが、次第に商業地域へと一歩一歩向かう。そこへ行けば必ずストナの購買意欲がかき立てられる、少し勘弁してほしいとは思う。けれども僕の思いとは裏腹に足は商業地域へとどんどん近づいて行く。

 ただ、あくまでここはガーマイン。どんなに大きくてもお店に並べられる物は知れている。武器や薬草類の補充なら致し方ない。それ以外には大したものは無いだろうとは思っていた。

 その僕の考えがいかに愚かかと思い知らされるとは……。


 南側商業地区は中央通りを挟んで泉の水路が道の左右に流れいる。綺麗な水辺を歩いている様な心地になる。その水路の奥には商店が立ち並んでいて、入口には橋が架けられている。その橋には基本的にアーチが建てられ各商店の個性的な飾りが施してある。その中でも1番目を引く建物は中央に建てられている巨大な商店である。

「凄い、何のお店?」

 ストナが興味深く店のアーチまで駆け寄った。

「何のお店だった?」

 僕が隣に行くとストナが声を少し震わせながら言った。

「リーゼルハント商会。」

「え?何で?」

 聞き覚えのある名前に僕達は顔を見合わせた。

「ほー、こんな大きな建物がいつの間に建ったんだ。わしは見た事も無いわ。」

「テロットさん、リーゼルハント商会って知ってます?」

「な、なんだそのリーなんとかは?」

「やはり知らないですか。リーゼルハント商会は帝国一の商会です。ただ、一般的には有名な港町に建てられています。言い方は変ですがこんな山奥にあるとは思っても見なかったので……。」

 僕はその建物を眺めていた。

「ちょっ、ストナ。どこへ。」

「どこって中よ。せっかくリーゼルハント商会があるなら色々と買わないと。」

「ちょ、色々って。」

「色々は色々よ。香粧品も買いたいかな。あと、普段着もほしいし、帝国の甘味物もひと通りそろえておきたいな。」

「ま、待っ、テロットさんストナ止めて。」

 テロットは手を左右に振った。そうだよね。でも、あまり無駄遣いする余裕は無い。ここは止めないと。

 その時、天の助けか、ルトブルの声が聞こえた。

「ナギト様、ドリデン様とハルツ様がお会いになってくださると連絡がありました。参りましょう。」

 良かった。こうしてストナの豪遊は無事阻止されたのだった。



 僕達はガーマイン代表会館に呼び出された。会館に入るとそこにはドリデンとハルツらしき人物がエージナの対面に座って話合っていた。既に交渉の話し合いを始めている様だった。ハルツのテーブルの前には蒼眼石が置いてあり、とても気分良さそうに座っていた。どうやら交渉はうまくいっている様だった。

 ドリデンは僕達を見て立ち上がり、ゆっくりと近づいてきた。

「ナギト殿、話は伺いました。我々としても聖京都のオーウィズ殿下に組するのを反対する気はありません。元々、聖京都とは同盟国でもあります。イーダーオーツ軍を出すのもやむ得ないと考えます。ただ……。」

「ただ……?」

「私は……。お土産を受け取っておりませんが……。」

「お土産、あ、ストナ。」

 僕がストナを呼ぼうした時にドリデンは僕の手を取った。

「聖京都のお土産が欲しい訳ではありません。ひとつ頼みを聞いて欲しいのです。」

「頼み……?」


 ドリデン氏の要求はこうであった。

 ガーマイン北東にひとつの洞窟がある。その洞窟いや坑道は地下9階近くあると言われている。その坑道は魔王大戦の前から存在し、ドワーフ族の伝承にもない不思議な坑道という。坑道なのに誰が掘ったのかいつ頃のものなのかも分からない。その謎の坑道はいつしか「浮世の坑道」と呼ばれ始めた。その噂は尾ヒレが付き最下層は地獄につながると言う噂までいつしか流れ始めたそうだ。

 浮世の坑道が本格的に注目されたのは今から50年程前。ある冒険者がこの坑道を探索して地下9階でひとつの宝石を発見し戻ってきた。鉱石ではなく宝石である。それが「魔女の瞳」。

 紅色の半透明の卵状の球体。何層もの球体が埋め込まれる様に出来ているその宝石は人々を魅了した。

 しかし、その発見した冒険者はその数日後正体不明の病で亡くなったそうだ。

 その後ガーマインでは多くの冒険者部隊や各チームがこの浮世の坑道の地下を目指した。しかし不思議な事に地下7階より下へ行く階段は見つからなかったと言う。

 更に不幸は続き、10年前ガーマイン博物館に保管してあった「魔女の瞳」が盗まれた。

 未だに盗賊の正体は分からず、博物館の最奥部にある魔女の瞳を飾っている部屋は閉ざされたままとなっている。

 ドリデン氏がガーマインの総代表となって5年。ガーマインの発展に尽力を尽くしてきたと言うのだ。

 3年前には鉱山工を大陸全土から雇い、地下7階から下へ行く坑道を新たに掘り起こす計画まで立ち上げた。しかし、あまりの岩盤の硬さに爆薬を使っても掘り下げる事も出来ずに計画は1年前から頓挫しているそうだ。

 そして、ドリデンが目をつけたのが僕達七本槍の道化衆だったのだ。

 冒険者部隊の功績と言うものは消え事が無い。その部隊が存続している間は未来永劫冒険者連合に記載される。

 七本槍の道化衆の光の坑道での水脈発見の功績も消える事無く残っている。しかし、実際にはその功績者はコハルと言う僕の幼馴染である。彼女には水滴と言うスキルで周囲をサーチする力があった。戦闘的な能力は皆無と言ってもおかしくないが、水滴のスキルは桁を超えていたと思う。十数メートル四方が一般的であるのに彼女は数キロメートルをサーチした。その桁外れの力で普段は気にも付かない違和感を見つけ出し、光の坑道の水脈や迷いの森の封印を見破ったのだ。

 全てはコハルの能力である。そのコハルはもういない。


 ここまで話を聞いて僕はドリデン氏の提案を断るつもりだった。

 正直に今の僕達には水滴のスキルも探知系の能力も無い。彼らも七本槍の道化衆をもっと詳しく調べていれば、当時のメンバーとは全く様変りしているのに気づいただろう。

「すみませ…………。」

 ストナが僕の口を塞いだ。

「ドリデン様、その提案引き受けさせて頂きたいと思います。ひとつ確認させて下さい。私の任務は7階から下への通路を見つける事で問題ありませんか?魔女の瞳を取ってくる事ではないでよろしいでしょうか。」

 ドリデンは頷いた。

「もちろんだ。魔女の瞳が鉱石ならそれも頼みたいところだが、宝石である以上必ずあるとは限らない。そこからは我々が調査する。地下への通路を見つけ出してくれればそれで問題はない。」

「分かりました、必ず見つけ出しましょう。もうひとつお願いがございます。浮世の坑道の地図を譲って頂きたい。」

「手配させよう。」



 僕達は浮世の坑道の地図を受け取って代表会館を後にした。

「ストナ、無茶な約束をして、どうするんだよ。」

「どうもこうも無いわよ。地下への通路を見つけるだけでしょ。」

「見つけるって今の僕達に地形サーチ系スキルを持つメンバーはいないんだよ。」

「ナギト、あなたの幼馴染の持っていた水滴は今の私達には無いわよ。でも、今回の任務は地図の作製でもなければ、水脈の発見でも無い。地下通路を発見する事でしょ。簡単よ。」

「簡単って、どうすれば簡単になるんだよ。」

「いい、単純に考えてよ。地図のある洞窟から昔あった通路を探すたげよ。昔あったけど、今はない。いや、今は隠されている……。」

「まさか!」

「そうよ。あなたの目で見つけるのよ。隠されているのなら、マナで見破れるわよ。それに……。」

「それに?」

「いい?ここで下手を打つと危険よ。もし、魔女の瞳を探して来いなんて要求されたら、それこそ難関よ。」

「それは確かに。」

「大丈夫、ナギトなら見破れるわよ。きっと。」

 見破れるわよ……。そんな簡単では無いだろうと思いつつもそれ以外の選択肢は無く。翌日から浮世の坑道へ向かう事になった。

 



 クラスタルは東ラーフィン山脈と西ラーフィン山脈に囲まれた土地。多くの山はこの山脈に属しているが、中央部には独立峰と呼ばれる山も点在する。そのひとつがワット山である。山の中腹に浮世の坑道の入口は存在する。西側から登山道が綺麗に整備されているが途中下へ降りる道と上へ登る道の帰路に立つ。あからさまに下への道が綺麗に整地されているが、上へと行く登山道は獣道となっている。

 この下側へ降りる道こそ、浮世の坑道へ続く道である。

 


 僕達は浮世の坑道に向かった。この坑道は中央階段型のダンジョンとなっていた。基本的には中央部にある階段を何度も何度も降りて行く。疲れが太ももに軽く残り始める頃には地下7階まで到達した。

「さて、探すわよ。」

 そう言うとストナは地図を広げた。

 僕はその地図を覗き込んだ。坑道は各階が階段を中心として蜘蛛巣状に広がっていた。その蜘蛛の巣は下の階へ行くほど広くなっている様に見える。入口だけが完全な円形状にいる。階段のある中央場所も円形で始まる。地下に降りるほど広めの円形空間となり、穴が四方八方へと広がって行くような形をしている。地下へ降りる程坑道全体も広くなる。

 7階が最も広い坑道である。中心の部屋から別れ道をひとつひとつ潰していくしかない。気の遠くなる作業だ。

「はい、ナギトまずはこっちから、エージナ、サーチ早くして。今日には終わらせるわよ。」

 ひとり張り切るストナを尻目にテロットがぼやく。

「ここに来て元気になってどうしたんだ?」

 僕は首をかしげた。やる気が空回りしないといいけど……。と、言ったもののマナ寄せ開眼してマナを見るのは僕だから……。

 坑道の壁を一周確認する。左右上下にマナの不思議な動きが無いか。地下だから下の可能性が高いけど、光の坑道の様に一度横への通路から下への階段がある場合もあるので全体を調べて行く。

 地図上の半分が終わったところでお腹が空いてご飯タイムとなった。あらかじめ準備していた食事セットを亜空間から取り出してストナが準備を始めた。

 全員分の準備を終えると僕はストナからコッブとパンを受け取った。

「はい、ナギトどうぞ。」

「ありがとう。そう言えばルトブルさんはどうして来なかったんだろ。冒険が苦手?」

「違うわよ。私とエージナで休暇をあげたの。」

「やさしい。ストナも結構ひとの身体の事を考えてる?」

「違うわよ。邪魔だから断ったの。体の良い拒否よ。」

「え?なんで?」

「なんでってお宝をもらえないでしょ。」

「お、お宝?」

 すると、後ろからエージナの声もした。

「そうじゃ、ストナ嬢の言う通り。良いか、7階から下の階段を見つけるだけで良いって事じゃろう。それ以外何もするな。言い換えれば8階から下には何かあるってことじゃ。」

「基本的には見つけ出した宝は冒険者の物だからこっちが自由に出来るはずだろ、それなら別に誰に見られていても問題無いだろう。」

 エージナは笑いながらパンを平らげた。

「相変わらず半人前じゃな。」

「ナギトは半人前と言うよりお人好しよ。それもバカがつくほどね。」

「なんだよ。」

「いい?ナギト。仮に私達が「魔女の瞳」を見つけたとするでしょ。そしたら必ず向こうはそれを要求するのよ。ルトブルさんはその為の斥候よ。」

「そこまでは言い過ぎでしょ。」

「言い過ぎ?違うわよ。明日には必ず合流してくるから、出来れば今日中に見つけるわよ。」

 は、はい。

 それで張り切っていたのか。

 僕はマナ寄せ開眼を使って残りの坑道の調査を始めた。地図を見ると後半分、半日は掛かりそうだ。地図には蜘蛛の巣を切った様な隙間が各階に何箇所か存在する。7階にも何箇所かあり、そこは特に念入りに調べているが何もないのである。

 申し訳ないけど、今日中に発見出来ても、発見で終わるかな。そう思いながら坑道の隅から隅を確認していった。


 最後の行き止まりまでの通路を進んで行く。漏れがないが確認しながらゆっくりと進んだ。そして通路は行き止まりまで来たが、隠し扉の類は発見されなかった。

 僕は一度中央階段まで戻って来て休憩した。

「なんで?なんでないのよ!ナギト見落としてない。」

「見落としてないよ。もし見落としているとしたら、人も入れない様な小さな穴だよ。」

「それよ。きっとそれ。もう一度探すわよ。」

 そう言うとストナ立ち上がった。

「お嬢。急いでも仕方ないじゃろ。ここは休憩してナギトの体力を回復させてやりなさい。」

 さすがテロットさん、人の心がある。冒険者いや上位冒険者と呼ばれる人は時よりあり得ない事を要求する。普通の人が間に入ってくれると助かる。

「分かったわよ。今から食事の準備をする。」

「そうそう、そうしないと徹夜では働けないじゃろう。」

 ……。前言撤回。



 夜中の1時を過ぎた。洞窟の中だからあまり時間を感じないけど、さすがに疲れが身体中を回ってきた。

「ストナ、そもそも地下へ行く通路なんだから、小さ過ぎる事ってあるの?」

「バカね。人は頭が通れば身体は通るものなの。顔くらいの穴がどこかにあるはずよ。」

 僕はさすがに疲れて、その場に腰を下ろした。エージナが僕に地図を渡してきた。

「ペースが落ちてる。このままでは朝までにもう一周の確認はできないぞ。」

「当たり前です。殺す気ですか。」

 僕は疲れ果てて、もらった地図を一枚一枚眺めていた。眺めているとふと手が止まった。あれ?

 何かがある。

 何か地図に違和感を感じた。

 僕は入口から地下7階までの7枚の地図を順番に並べてめくりながら比較した。

 やっぱり。

「ナギトどうしたの?」

「この地図螺旋状の空間がある。」

「空間?」

 僕は最初の一枚を広げ、洞窟の右上にある空間を指差した。

「ここから。」

 一枚一枚と入口から地下へ順番にめくっていくと、その空間は右回転状に空間が動いている事を説明した。

「確かに。そうするとこの螺旋入口は?」

 僕達は上を向いた。

「地下9階と言う言葉に騙されていた。その冒険者は地下7階から8階へと下ったのではなく、入口から一気に地下8階へと下ったんだ。」

 僕達は一気に階段を駆け足で登っていった。あれほど疲れていた気分だったけど、一気に明けた様な気がした。全員が疲れ知らずで登りきったのだった。


 一番先に登ったエージナが地図を確認しながら最初螺旋場所へと近づいていく。

「地図で言うとここの向こうに螺旋への入口ならある。」

 その希望に僕も近づいてマナ寄せ開眼を使った。

 ……。

 ……。

 しかし、螺旋状の空間への入口はどこにも無かった。


 エージナとストナがもう一度地図を見直し始めた。

「どこよ。どこの階が入口なの?」

「普通に考えれば螺旋洞窟と通路が一番近い階じゃろうな。」

「どこ?5階?3階?」

 2人の議論を尻目にその場へ大の字で倒れた。疲れた。このまま目を瞑れば睡眠に入れそうな気分である。

 もうどこでも良いよ。少し休ませてくれ。

 そう言って天井を眺めていた。

 丸い球形の天井で出来ている洞窟の入口をただ眺めていた。

 ……。

 ん?

 

 そう言えば、誰がこの坑道を作ったのだろう。魔王大戦以前に作られた、いや掘られたこの坑道は何を掘り起こしていたのだろうか。

 何を採掘するために?

 何の為にこの坑道はあるのか?

 ……。

 そもそも坑道なのにこの球形の造りは何なんだ?


 考えを変える必要がある?

 球体状のドームに螺旋状の階段?

 坑道と言う呼び名が既に虚像?

 坑道でないのなら何なんだ?

 建物?

 

 僕は立ち上がりストナ達から地図を奪った。

「ちょっと何するなのよ!」

 ストナの声に耳も傾けずに地図をもう一度ゆっくりと並べる。

 やっぱり。

 中央の部屋が地下に行くにつれて少しずつ大きくなっている。そしてその横を通過する様に螺旋階段は存在していた。

「ここは建物なんだ。坑道じゃない。」

 僕はこう言って、球形状の建物で理屈を説明した。

 僕の説明が終わると全員が上を見る。

「あそこから入るの?」

「違うよ。ここの入口自体がダミーなんだよ。本当の浮世の坑道の入口はこの上にあるんだ。」

「確かにそれなら理屈には合うな。行くか。」

 そう言うとエージナは立ち上がった。僕達は洞窟を出て一度別れ道まで戻り、獣道の登山道を上へと登る事にした。


 

 僕達は藪をかき分けて進んで行く。

「そろそろじゃがな。お主の感が正しければこのあたりに何かあるはずじゃが……。」

 そう言ってエージナが道なき道を右往左往して進んで行く。

「あった。」

 エージナのその声に僕達はその場所へと近づく、そこには小さな洞穴が草木に隠されるように形成されていた。

「ここか?」

「えー熊か狐の巣じゃないの?」

 大きさ的には確かに獣の巣にも見える。

「わー!」

 ストナが大声を出すとストナの声が真っ暗な洞窟内で反響している。

「あまり深くないな。しかし、単なる洞窟ではなく人口的な作りじゃな。中に生き物はいなさそうだ。」

「エージナさん、今ので分かるんですか?」

「当たり前じゃろう。音の反響は立派なツールだ。心配ならお主の眼で確認してみなさい。」

 僕はストナの方見た。

「私だってわかるわよ。だから、やったんだから。」

 こっちは嘘だろう。一応マナ寄せ開眼で確認したが、中には何もいなかった。

 とにかく進むしかない為、エージナさんを先頭に僕達は屈みながらその洞窟へと入っていった。

 洞窟の中は確かに人口物の様である。四角い石で固められた長方形の空間がそこにはあった。

 ランタンを照らしてストナは先に進んでいく。

 その時、僕の目に違和感が走った。

「ストナ止まって、割れ目がある。」

 ストナは僕の方を向いて首を傾げている。

「割れ目って何?どこにあるの。」

 ストナの足元に割れ目の様な模様がある。この目では割れ目としか見えない。長方形の空間の奥四分の一の地面が割れており、穴が空いていた。

「ストナの足元だよ。よく見て。」

 ストナは更に一歩踏み出した。割れの上に立った。

「ここ?」 そう言ってその割れ目の上で飛び跳ねている。

 違うのか?僕の目の錯覚?

 僕は恐る恐るその割れ目に近づいた。近くで見れば見るほど割れ目は深く奥へ続いている様に見える。

「ナギト、お主は何が見える?」

「ここだよ。明らかに空間があるよ。」

 僕が屈んで割れ目の前に立った。恐る恐る割れ目に手を入れようとした。

「わ!」と声と同時にいきなり後ろから押された。押したのはストナだった。

 冗談のつもりだったのだろう。ストナには何もない地面だったかも知れない。だけど、僕には本当に空間もない地面だった。

 僕はそのまま割れ目の中へと落ちていった。


 割れ目の中は例の螺旋状空間だった。それは階段ではなく単なる螺旋状の穴だった。

 僕はそのまま斜めに滑る様に落ちていく。徐々にスピードが上がっていく。

 まずい。このまま下に激突すれば大怪我は避けられない。僕は両手を伸ばして壁を押さえてスピードを下げようとしたが、全体がツルツルに滑り全く意味をなさない。スピードはどんどん上がっていく。

 冷静に考え……。考えられない。

 うわー!!!


 突然円筒の筒から飛び出す様に僕は飛び上がった。そして地面に叩きつけられたと思うとその地面はクッションの様に柔らかく飛び跳ねた。

 暫く身体が上下してようやく止まった。


 呼吸を落ち着けて状況を整理しようと周りを確認する。

 そこには巨大な岩がそびえ立っていた。いや、岩の様な存在だった。

 その岩の様な存在は僕に話しかけてきた。

「よく来たな、マナの戦士よ。」

 僕には何が起こっているのか、全く分からなかった。

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