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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第五話 イーダーオーツと特別議会①

《七本槍メンバー》

008 ナギト ♂(17) 武器:長剣

  魔法剣士(マナの剣士)資質  王下Eランク

  マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し

   開眼(マナ寄せ開眼)

011  ストナ♀(18)武器:大剣

  聖騎士資質 王下Bランク

  聖回復 聖流剣 遠投 他

019 エージナ♂(80)武器:炎のロッド(仮)

  鍛冶細工資質

  熱風、火炎球、分解、適合(サーチ系)

  奥義火炎鳥

020 テロット♂(80)武器:大地のハンマー

  鉱山守資質

  大地の鉄槌、稜角の翼、鉄板

 クラスタルの中心都市、地都イーダーオーツ。

 この地方は東側をドワーフ達の自治区、そして西側を人間達が治めている。地都イーダーオーツとは人間達が治める西側最大の都市である。政治は議会制となっている。



 僕達が頼みにしているイーダーオーツ軍はこの議会下にある。すなわち議会の合議を得られなければ、援軍を持って北側から聖京都へ牽制を掛ける事が出来ない。

 この援軍の有無で形勢が一気に変わる事は無い。この軍はあくまで予備的な役割が大きい。

 オーウィズもクラスタル側の機嫌次第では援軍を諦める事も必要だと言って僕達を送り出してくれた。

 


 テイルエンドの勢力図は簡単に言うと南側にオーウィズ率いる反乱軍(正確にはリリラ討伐隊)が勢力を取り戻し、更に勢いを伸ばしている。

 中央はリリラ率いるバンパイア軍団。

 北側は中立を保っている。中立と言ってもバンパイアに組みしたいと言う者は少ない。しかし、ひとつの村だけで反乱軍に組みしたと分かれば、村全体が襲撃される可能性は否定できない。その事を恐れてか中立の立場を崩していない。

 この中立派を完全引き込む上でも北側への援軍到来は効果的役割を果たす。

 この援軍の必要性のもうひとつがウブキ山脈にあると言う転移陣にある。こちらも破壊しないと魔物が村々を襲う可能性がある。ただ、どのタイミングで魔物が溢れる出て来るのか?誰にも分からない。

 理想は転移陣を破壊してから聖京都へ向かう事。しかし戦況次第では陣の破壊は諦めてリリラを叩く必要も出てくる。転移陣がどこにあるのかを分からない中でウブキ山脈を隅々まで調べる時間は無い。

 もし、転移陣破壊を後にした場合、仮にモンスターが押し寄せて来てもを引き留める力が必要となる。そういう意味でもイーダーオーツの援軍は必須事項となってしまう。


 現在クラスタルは通常議会期間外。その為特別議会を開催してもらった上で出席議員の過半数の票が必要となる。更に特別議会を開催させるには議長及び4都市代表議員の過半数が必要となる。過半数、過半数の文字が脳裏をぐるぐる回り何が過半数なのか良く分からなくなる。

 とにかく、許可をもらわないといけない人が多いと言う事である。

 気が遠くなる。

 


 僕の心のため息が漏れた。

「ナギト。何浮かない顔をしてるの?久しぶりのイーダーオーツは楽しくない?」

「ストナはいつも元気だよな。今から何人の人に会わないといけないと思うと気が重くなる。」

「どう言う事?」

「特別議会を開く為に議長及び4都市代表議員の過半数。イーダーオーツ軍の許可をもらう為に出席議員の過半数。いった何人なんだよ。」

 隣でストナが少し呆れた顔で僕を見ている。

「ナギト、何その法律の勉強?いいナギト。別に私達が全員に会う必要はないの。議会を開いてもらえるように議長に言うだけよ。こう言う議会は基本的には議長の権限が強いの。議長の許可が議会の許可と考えれば良いの。要は議長さえ説得出来れば全て良好よ。」

「そうなの?良かった。何人説得しないといけなのかと思うってずっと気が重かったんだ。」

 ストナの隣で笑い声が聞こえる。

「ワハハハ。ナギトは本当に面白いの。オーウィズ殿があれほど言って言っただろう。聞いていてなかったか?」

 ストナの影からエージナが顔を出す。

「お前さんも人の事は言えんだろう。常識知らずは似たようなものだ。」

 今度は僕の隣でテロットが顔を出した。



 僕は今、ストナ、エージナ、テロットと共にイーダーオーツに来ている。

 このメンバーでなぜ来ているのかと言うと話は迷い森からオツの港町に帰って来た所まで遡る。

 オツの港町に戻るとそこにエージナとテロットがいた。エージナとテロットはドワーフ族であり、クラスタルの東方ドワーフ族の自治区にあるエチャーメルと言う街の住人である。エチャメールは4英雄の大地の英雄ウルロールの従者カルメの出身地である。

 二人とも様々な事情があり、一時共に冒険をした仲間である。その冒険で鍛冶師ナンカンにマナの剣を打ってもらえる事になり、現在その完成を待っている。

 彼らは今回そのナンカンからの言付けを持ってやって来た。エチャメールから一度炎英離都へ行き、その後でオツの港町で僕達は出会ったのだ。ナンカンからの言付けは当初の予定より1ヶ月程は早く出来ると言う事だった。元々クラスタルへ行く予定だった為、暫く僕達に同行してくれる事になった。

 今回イーダーオーツ議長に会うにあたって、エチャメールからの使者と言う内容なら通常よりも早く議長に会うことが出来るらしい。その際にオーウィズの手紙を携えて議長と会い援軍を頼む。その後でマナの剣の完成を受け取って、最後に北ルートから聖京都へと向かう手はずとなった。


 オーウィズはマーロン達とセタ村でリリラと対峙して機をうかがう。マトゥキ達聖都騎士団はオツの港町と街道の確保にあたっている。僕とストナの使命は先程から何度も言っている通りイーダオーツ軍の援護を得る事である。

 リリラとの戦いが激しくなれば、オーウィズ達から緊急要請の使者が来るはず。そうなれば、援軍は諦めて聖京都へと向かわないといけなくなる。せめて、マナの剣完成までは緊急の使者が来ない事を望む。

 

 イーダオーツに到着して暫くすると僕達は議会会館の一室に呼ばれた。代表議長と面会が始まったのだ。

 僕達は円卓のテーブルに座った。目の前にイーダーオーツ総代議長であるザクセン。その隣にイーダーオーツ総代表ポツダー。もう片方に秘書エアフルトが座っていた。

 エージナがオーウィズの手紙をザクセンに手渡した。

 暫く手紙を3人で回し読みしていた。そして、内輪で何かを話し合ってから、再び僕達の方へ視線を戻してきた。

「ナギト殿、ストナ殿。話は理解しました。議会を開く事も何の問題もない。ただ、ひとつ頼まれてほしい。」

「なんでしょか。」

「君達は知っているかどうか分からないが、この地方で特別議会を開くには総議長と4都市の総代表の5名のうち過半数の承諾を得る必要がある。私とこのイーダーオーツ総代表のポツダーでまず2名。あとはゴスラルの総代表から許可をもらえば何の問題もなく特別議会を開く事は容易だ。私達は君達の活躍も良く知っている。少し前のハイデールでの戦いも聞いている。本来なら我々がやるべき事をしてもらい、クラスタルを代表して礼を言わせてほしい。」

 そう言うと目の前の3名は頭を下げた。

「ちょっと、待って下さい。私達は自分達の信念に基づいて戦っただけですので、頭を下げられる覚えはありません。頭を上げてください。」

 僕がそう言うとザクセンは頭を上げて隣の秘書エアフルトとめくばせをした様に見えた。すると、今度はエアフルトが話出した。

「これから話す内容は口外禁止でお願いします。皆さんにエセット総代表ハルツ様とガーマイン代表ドリデン様に会ってもらい特別議会再開の許可をもらってきてほしいのです。」

「許可って先程、ゴスラルの総代表の許可さえあれば特別議会は開けると言ってませんでしたか?」

 僕は不思議に思って質問した。それに対して秘書のエアフルトが答えてきた。

「ナギト様。確かにそうです。皆様のご活躍とゴスラルでの貢献はこのイーダーオーツでも大変感謝しております。ですので、私達はナギト様のご要求に対して最大の誠意をもって対応したいと思っております。」

 そこまで話すとエアフルトは総代表ポツダーの方を見た。ポツダーは頷いてから僕と視線を合わせた。

「ナギト殿、今から話す事も口外禁止で宜しいかな。」

 その問いに僕達は頷いた。

「我々クラスタルでは大きくふたつの流れに分かれている。今の現状を維持する派とこの地域の資源をもっと売り込み販路を広げる派だ。我々イーダーオーツとゴスラルは現状維持派。そして、エセット、ガーマインは拡販派だ。派閥間の関係は現在非常に険悪になってしまっている。もし我々が勝手に聖京都への援軍を決めたとなると、拡販派は反対をする可能性がある。更に現状維持派にも根強い戦争反対派が多い、ナギト殿の申し出も決議で負ける可能性がある。」

「そんな……。」

 僕は少し視線を落とした。それを感じた様でザクセンが少し大きめに話し出した。

「だからこそ、君達にエセットとガーマインをの総代表を説得してもらいたい。片方で構わない。説得出来れば門は開く。そう思ってほしい。」

 そう思ってほしいと言われても……。当初から嫌な予感のしていたクラスタル巡りに結局借り出された感じだった。

 そうだよな。そんな甘く無いとは思っていた。申請してだ待っているだけなんてあり得ない。

「ひとり道案内を兼ねて私の部下を付けるから、頑張ってくれたまえ。」

 くれたまえって……。でもやるしかないか。



 鉱業都市エセットはイーダーオーツの南東にあるエチャメールとも比較的近く、同じ鍛冶町でもあり昔から親交がある。エージナは現在の総代表であるハルツ氏とも面識があると言う事なので、まずはこちらから向かう事になった。

 僕達は宿で一泊して翌朝。

「おはようございます。」

 朝食を取っているとストナの隣にひとりの女性が立っていた。

「あなたがルトブルさん?」

「はい、本日からよろしくお願いします。私はルトブルと申します。イーダーオーツガードと呼ばれる議員の警護をしている者です。魔法使い資質の風属性です。よろしくお願いします。」

 礼儀正しい女性だった。歳は聞いてないけど、ストナより少し上と思われる。

 笑顔でその女性は僕達に言った。

「それではケニーヒス湖へ行きましょう。」

「け、ケニー?どこそれ?」

「なんじゃ、ケニーヒス湖で魚釣りでもするのか?」

「良くご存知で、道具一式は準備の手筈は整えております。それでは皆さん。行きましょう。」

「ちょ、ちょっと待って、何で釣り?」

 ルトブルは行こうとして足を止めて、少し考え込む姿勢をしてから、再び僕達の方へ向き直った。

「すみません、肝心な事を言い忘れておりました。皆さんにはケニーヒス湖で巨石の大魚を釣ってもらいます。巨石の大魚は不思議な魚で右目が蒼眼石と呼ばれる不思議な鉱石でできています。とても高価な鉱石です。近年鉱業都市エセットでは人気が高く、通常よりも高価で取引がされております。」

 …………?

 だから?と言う疑問が脳裏を走った。高価な事は分かったけど、それを釣る理由は?

「総代表のハルツ様は最近蒼眼石のコレクションに大変没頭しておられます。手土産には非常に良いと思われます。」

 そう言う事か。手土産を持って行って合意をもらえと言う事らしい。

「現在、ケニーヒス湖での巨石の大魚釣りは禁止されております。密漁は死刑てす。しかし……。」

 そう言うとルトブルは何かの紙を取り出した。

「これはザクセン様から頂いております釣りの許可証です。あとは皆さんの運次第です。旅程を調整してもケニーヒスで釣りが出来る日程は4日位が限界です。そこをお忘れなきように。」

 そこまで話すとルトブルはもう一度出口に向かって歩き出した。僕達は彼女が出ていくのを見届けてから残っている食事を平らげた。



 宿を出るとテロットが僕達に提案してきた。

「お前さん達、巨石の大魚を知っているのか?」

 僕とストナは首を横に振る。

「そうだろうな。大魚と言っても全長30センチ程だ。」

 そう言いながら両手で肩幅位開いて大きさを僕達に示した。

「一言で言うとそう簡単には釣れない。釣るには運が必要だ。儂の知り合いに釣りの名人がおる。一度エチャメールまで戻って彼を連れていくから、先に行っていてくれ。」

 そう言ってテロットはエチャメールへと旅立った。

「エージナさん、釣りの名人がいるんですか?」

「まあな。釣りの名人と言うより、釣り竿作りの天才だ。その魚に合った釣り竿を作り続けておる。特に巨石の大魚などの幻系の魚用の釣り竿づくりが好きでな、言えば飛びついて来るだろう。」

 僕達が話しているとルトブルが近づいてきた。

「皆さん出発しますよ。」

 


 クラスタル地方の人が治める地域は北西にイーダーオーツ、南西にゴスラル、北東にガーマイン、南東にエセットがある。

 ガーマインとエセットの中間地点にあるのがケニーヒス湖である。大きさはテイルエンドにあるビワの湖の半分程の広さであり、クラスタル最大の湖である。基本には漁猟は許可制になっており、許可なき者は死罪とまで言われている。ルトブルやエージナの話では漁猟の禁止は貴重な魚などの資源を守る目的以上に湖の奥底に海底洞窟があり、その存在を隠していると言う噂もあると言う。

 但し、ルトブルやエージナの知り合いに海底洞窟を見た事のある人はいない。

 ルトブルはともかく、エージナはドワーフ族の80歳。しかも、8勇士のひとりカルメの弟子であった人物。そんな人達が知らないと言う事は単なる噂ほ方が正しいかも知れない。



 僕達は1日掛けてようやくケニーヒス湖へ到着した。

 イーダーオーツから南東への街道進み、ガーマイン超えてから街道を南下するとこのケニーヒス湖に到着する。

「さて、時間は4日間、それ以上の時間は取れないので何か別の宝石を買ってハルツ様に会うしかありません。」

「ハルツさんは気難しい人なんですか?」

「気難しいと言うか、ザクセン様やポツダー様と昔から気が合わないので、とにかく反対票を投じるといった性格です。自分達の提案しか受け付けない。」

 いるな、そう言う人物って。どこにでも。ストナが何かを取り出した。

「これは聖京都でしか取れない鉱石なんだけど、これならわざわざ魚を取らなくても贈り物としては問題ないと思うけど?むしろ、聖京都からの使者が贈り物の為に魚を捕るっておかしくないの?」

 ストナの反論にルトブルは申し訳無さそうに頭を下げる。

「ストナ様の言い分はもっともだと思います。けど、以前にボルケーノから来られた方々が同じ様にハルツ様やトリデン様と会われた際に持参した鉱石を投げ飛ばした過去がありまして……。ザクセン様はこの方法が一番良い考えられました。」

 怖!

 会いたく無いよ。そんな人。

 取り敢えず機嫌を損ねない為にも頑張って巨石の大魚を釣ろうと思った。

 


 釣りを始めて2日目に突入した。

 全く釣れる気配すらない。

 せめてもの救いは聖京都から戦場悪化の使者が来てない事だ。ここでのんびり釣をしていて良いのかとも思えるが、どのみちマナの剣が手に入らなければ急いでも仕方がない。

 けど、何かもどかしい時間が過ぎる。

 

 何事もなく半日が過ぎた。

 テロットの姿が遠くに見え始めた。横にテロットと同じ様な体格のドワーフが並んで歩いてきてる。どうやらその人が釣りの達人の様だ。釣り竿を構えて1日半、そろそろ……、と言うか既に飽きている。ストナは朝から釣をせずにどこかに行ってしまった。

 僕とエージナだけがひたすら餌を付けた糸を湖に投げ込む作業を繰り返していた。

「ナギト、待たせたな。こいつがグリラントだ。会った事はあると思うが。」

「ナギト殿、お久しぶりだな。」

 そう言えば、エチャメールで食事をした時に顔は合わせていたけど、名前と顔が一致していなかった。

「お久しぶりです。グリラントさんは釣りが得意と伺ってます。とうしても巨石の大魚を釣り上げないといけないので協力してもらえませんか。」

「もちろん。これが秘密兵器だ。」

 グリラントはそう言うと背中に背負っていた釣り竿を取り出した。

「これはかの有名な従者カルメが作った釣り竿だ。ガハハハ。」

 …………。カルメの釣り竿……?って高価なのか?

「実はな。魔王大戦後にカルメはマナの剣を模してマナを通さないアイテムを研究していた。このふたりはあまり興味を示さなかったがな。そのひとつがこの釣り竿だ。」

 ……そうですか……。としか言いようがない。

「なんだ、そのしらけた顔は、この釣り竿のすごさに気づいていない様だな。通常生き物にはマナが宿る。マナの強さがその生き物強さと行っても過言ではない。釣り竿から漏れるわしらのマナは釣り竿を通して水の中に伝わる。敏感な魚程、そのマナを感じで警戒する。しかし、これは違う。マナを漏らさない。すなわち魚に警戒されない釣り竿だ。」

 そう考えると凄い釣り竿かも知れない。確かにマナがなければ警戒されず、そこで油断した魚を釣り上げる。魚釣り基本を貫いた名器かも知れない。僕はグリラントに望みをかけた。


 

 釣りはいよいよ3日目に入ろうとしていた。色々と焦りを覚える。

「ストナは昨日どこへ行っていたんだよ。」

「どこってエセットよ。ルトブルと一緒に街の見学よ。」

「見学って、どうせ美味しものを食べて来ただけだろ。」

「失礼ね。一応、街の状況とか見てきたわよ。」

「一応……。一応どうだったんだよ。」

「そうね。総代表のハルツ氏が蒼眼石を集めているのは本当見たいね。街でも有名だった。ただ……。」

「ただ?」

「最近なのよ。蒼眼石に興味を持ち始めたのは。級に高値で買い漁り始めた見たい。」

「そうなんだ。他には?」

「そこまでかな。昨日は。」

「昨日は?」

「今日はもう少し情報を集めてみるわ。」

「今日も行くの?」

「当たり前でしょ。あんな釣りに無駄な時間を費やしてもしょうがないでしょ。」

 無駄なって。僕の2日間を全否定された気分だった。




 3日目の午後になった。

 何しているだろう僕は目の前にそびえ立つ東ラーフィン山脈の向こうでは戦いが行われているかもしれないのに、未だに釣り?

 しかし、実際にはそれしか出来ない自分がいる。

 手前の方でボートに乗って気合の入っているグリラントとテロットを距離を取って遠目に見ているエージナと僕がいた。

「ナギト、そろそろ、場所を変えるか?」

 そう言ってエージナはボートをゆっくり漕ぎ始めた。僕達のボートはグリラントに迷惑をかけない様に更に距離を置く様に進めた。

 2日半、この湖にひたすら針を垂らしている。しかし、一向に釣れない。

 ……。

 待てよ。本当にいるのか?巨石の大魚どころか、魚すら取れない。僕は湖へ顔を向けた。白く濁った水は少し先にがもう見る事もできない。しかし、表面には小さな小魚が時より泳いでいる姿を見せる。

 全く生き物がいない訳ではなさそうだ。しかし、他の魚が釣れてもいいはずでは?

「エージナさん、本当にここに巨石の大魚っているんですか?」

「ナギト、どうした。今更、何を言っとるんだ。」

「おかしくないですか?釣りを始め2日半、巨石の大魚どころか、他の魚を一切釣れない。巨石の大魚なんていないのでは?」

「ならなんでわしらをここで居らせるんだ?」

「他の目的がある。例えば、足止め?」

 その一言にエージナが笑い出した。湖に声が響く。

「悪い、悪い。面白い発想だ。だか、マナの剣が出来るのにもあと1ヶ月。イーダーオーツで特別議会を開くのもあと数週間かかる。どのみちここでなくても足止めだ。釣りか酒かの違いだけだろうな。」

 僕達が話しているとグリラントとテロットのボートが近づいて来た。

「ナギト殿、これを使ってみないか?」

 グリラントは僕に例のカルメが作ったと言う釣り竿を手渡してきた。

「何も意識しないで釣りをしてくれ。」

 何も意識しないって言っても、どうするんだ?取り敢えず、そのまま餌を付けて湖の底へと垂らした。

 暫くすると浮きに反応が来た。

「まだだ、エージナが僕の背中に手を置く、合図をしたら一気に竿を上げるんだ。」

 踊る様に動いていた浮きが一瞬沈んだ。

「今だ!」

 僕はそれを合図に竿を思いっきり立てた。いきなり竿がしなり身体ごと湖の中へと引き込まれそうになる。エージナが僕を支えてくれる。ボートの上でバランスを取りながら魚と格闘した。

 数分の格闘の末、今回初の収穫である。「魔アユ」を釣ることが出来た。30センチ超えの大物だった。

 その後も大物の魔アユを釣り上げ、本日の釣りは終了した。


 結局、巨石の大魚は釣れなかった。

 収穫は魔アユ8匹。


 その夜、楽しい食事と話し合いの末、巨石の大魚釣りは諦めエセットへと向かう事になった。

 蒼眼石の件は昔グリラントが釣りで保有していた蒼眼石とストナが持ってきた聖京都の鉱石を交換する話し合いがなされた。

 僕達はエセット総代表ハルツに会う最低条件を整えた。


 その夜、改めてこの釣りに何か意味があったのかを自分自身に問いたが、答えは全く出なかった。

 しかし、何はともあれ一歩進んだ事には変わりない。援軍要請への最初の一歩が整ったのだ。

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