第四話 迷いの森と一分の残像①
008 ナギト ♂(17) 武器:長剣
魔法剣士(マナの剣士)資質 王下Eランク
マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し
開眼(マナ寄せ開眼)
011 ストナ♀(18)武器:大剣
聖騎士資質 王下Bランク
聖回復 聖流剣 遠投 他
012 カール♂(37) 武器:縄
漁師資質 Aランク
投縄、一本釣り
013 マーロン♂(34)武器:長剣
聖騎士資質 王下Sランク
聖撃昇、聖閃光、万位十字格子閃
015 オーウィズ王子♂(16)
探求者資質
探求
023 バキア♀(21)
植物士資質 王下Dランク
植物サーチ 調合 育成
026 ラーナキュアル♀(35)武器:三叉の槍
火炎防御士資質 王下Aランク
炎槍、火壁、投炎槍
夕刻、西の空に日が傾き始め、戦闘の終わった草原にも赤き光が差し込み始めた。野原の草や木々も一呼吸を置いている様だった。
ただ、情緒ある風景とは違い、至るところにモンスターの死体が転がっている状態ではある。地表も大小合わせて数百ものくぼ地が出来上がっている。
オツの港町攻防戦(勝手に命名、オーウィズが……。)
戦況だけ見るとこちらの圧勝ではある。しかしこちらも無傷ではなかった。死傷者もそれなりに出た。カラコロ厶の闇炎攻撃を直撃したジェラル師団長含む数名は今も行方不明となっている。また、オーウィズを護衛していた騎士団兵は焼け焦げ、遺体からでは誰が誰か判別の出来ない状態で収容された。こちらも多くの被害者を出し、オツの港町は当初の予定通り制圧する事が出来た。
本来ならこのままセタ村へ向かう予定だった。
しかし、今僕達は迷いの森へと向っていた。セタ村へと続く街道を北上して途中分岐点を東へと進むと街道は南東方向へ南下していく。その行き着く先が迷いの森である。
地図上ではオツの港町の東方に迷いの森はある。通常はセタ川が両者を隔て往来を遮っている為、街道北上してからの南下ルートが一般的である。舟を使う人もいるが、準備等を加味するとあまり推奨ルートとは言えない。
ただ、飛行能力があれば、直線的に迷いの森からオツの港町まで往来できてしまう。地図上で直線的に結んだ最短ルートである。バンパイアやワイバーン軍団ならそのルートでの移動は可能である。
オツの港町からマーロン達の拠点があるセタ村までの搬送ルートの確保。それが次の課題である。
ここまではオーウィズが当初組み立てた計画からさほど遅れはない。ルイーゼ王女の拉致やノルテまでの特殊任務と予定外の行動はあったものの、それ以外の準備に時間を割くことがなく進められている。
予定通りと言う事は、待ち時間を有すると言う事となる。この戦いの最大の必須課題はマナの剣の復活。現在エチャメールのナンカンさんが作っているところだが、あと2、3ヶ月は要する見込みだ。それまでの間、セタ村では守りを固めて耐えなければならない。その為の物資は輸送ルートがこのセタからオツまでの街道となるのだ。
懸念のひとつが迷いの森である。迷いの森に遺恨を残しては前に進めない。
先の砦での戦いでバンパイアのウィンザーが言い放った迷いの森を調べろと言う言葉。そして、新女王下聖騎隊のブルド達は戦いの後、聖京都へ戻らずに迷いの森へと向かったと言う目撃情報もあった。
迷いの森の調査を後回しに出来ないと言う事になり、僕達七本槍の道化衆が調査に向かう事となったのだ。
僕、ストナ、マーロン、カール、バキア、ラーナキュアル、そして反対されても無理やりついてきたオーウィズの7名である。
チームを組むなら7人以下が望ましい。炎帝御輪と炎兵鳴輪は合わせて7個しかない。この腕輪は元々魔王大戦時に8勇士が使っていた物で、火の攻撃を無効化し、その他のマナ攻撃も半減すると言う優れものである。
唯一欠点は、炎帝御輪に火のマナ獣のマナを入れ込まないといけない事と、使い手が火炎防御士や魔法戦士(マナの戦士)資質の者がいないと使えないのである。
(魔王大戦の時は合計8個あった炎帝御輪と炎兵鳴輪だが、8勇士のひとり、マナの英雄エイディが魔王と共に石となった為、現在7個となっている。)
夕焼けの空はだいぶ暗くなってきた。僕達は馬を調達し4騎で迷いの森へと進めた。マーロンとオーウィズ、カールの後ろに僕、ストナは単騎、ラーナキュアルとバキアである。
迷いの森近くまで来た時に1人の行商人とすれ違った。その行商人はロバに荷物を載せて、1人だけで歩いていた。
何気ない光景が過ぎ様とした時、マーロンの馬が止まった。
「そこの行商の方待たれよ。」
マーロンかその行商人を呼び止めた。
行商人と共に僕達の馬も止まった。何が起こったのか分からず、僕達もざわついていた。
「カールさん何があったのですか?」
「分からない。あいつは気まぐれだからな。ただ、リリラの存在を最初から悪と決めつけていたのはあいつだけだからな。やつの鋭い感が何かに反応したのだろう。」
マーロンとオーウィズが馬から降りて、マーロンだけが行商人に近づいて行く。
「何者だ。なぜこんな時間にいる?」
行商人にはひどく怯えながら、視線を下に向けて口ごもりながら答えた。
「わ、私は聖京都でカフェをしていたものです。」
「カフェ?なぜここにいる?名前は?」
「わ、私はアリテトと申します。ご存知とはおもいますが、聖京都では戦争の噂が絶えず、冒険者も来ない状態です。こんな状態では店は経営できません。それですから、ボルケーノへ行ってやり直す予定です。」
「そうか、大変な苦労かけたな。国を守る聖騎隊として、今あってはならない事態である。本当に申し訳ない。」
そう言うと、マーロンはその行商人に頭を下げた。
「そ、そんな謝らないで下さい。何が起こっているかは私には分かりません。けど、皆さんの活躍を期待しています。」
「激励感謝する、ところで……、アリテトとやら、どうしてここにいる?」
マーロンの口調が再び強めになった。
「ど、どうして?」
「ここは聖京都からボルケーノに向かうには向きが違う。どう考えても迷い森からの帰りだ。その説明がないぞ。」
そう言うとマーロンは剣に手をかけた。
「ま、待って下さい。これです。これ。」
そう言うと行商人は懐から何かの根を取り出した。
「これは迷い森の手前にある草原で採れる薬草の根です。これがボルケーノでは高く売れるので、手土産と最初の資金にと採りに来たのです。」
「そうか……。ナギト、ここへ来てくれ。」
そこまで話すとマーロンは僕達の方を向いて、僕に馬から降りて来る様指示した。僕が馬から降りてマーロンの横まで行くと、マーロンは行商人を指差した。
「このアリテトと言う行商人のマナを見てくれて、おかしな様子が無いか。」
「おかしな様子?」
「何か変わった事があるなら、知らせてくれ。」
僕は行商人の方を見た。まだ、バキアのサーチ系スキルがないのでマナ寄せ開眼は出来ないけど、どんな人か興味があった。アリテトは先程から下を見て話していたが、僕が近づくと向こうもこっちを見てきた。
アリテトと目が合った、その瞬間、頭の中に何かが回る様な感覚に陥った。脳裏に何人もの人の姿がかわるがわる現れる。誰一人会った事も見た事も無い人達だった。そのうち、脳裏の映像に見た事も無い武器や防具も現れた。
いや、時々、炎帝御輪やマナの剣の映像も差し込まれて来た。ただ、この映像は僕の記憶ではないと言う事ははっきりと分かった。幾千、幾万の映像の後に1人の人の映像が脳裏に留まった。
「レフト・カサブレラ」
その映像が留まった時脳裏に1人の名前が浮かんだ。その名前をそのまま口に出していた。
「レフト・カサブレラ?」
僕の後ろに来ていたストナが僕の発した言葉に反応する。マーロンは再び剣を構える姿勢に力が入った。
「あの、レフト・カサブレラなの?」
どのレフト・カサブレラなのか?レフト・カサブレラとは知る人ぞ知る人物だ。8勇士の1人、マナの英雄エイディの従者で知られる人物。エイディ自体がその存在を消された人物の為、その従者の知名は更に低い。僕もストナ達から教えてもらうまではその存在すら知らなかった。
自分の口から出た言葉自体を疑うのも変ではあるが、ありえない。この人物がレフト・カサブレラなら100歳以上の年齢となるが見た目も30代くらい。マナ寄せをしていなくても、この雰囲気はバンパイアでは無い。
突然、目の前の行商人が笑い出した。
「エイディの奴め。何かやりやがった。昔からあいつは人に内緒で事を進めやがる。」
行商人は汚いマントを取り、帽子を祓い除けた。先程まで猫背だったのであまり分からなかったけど、結構高身長、見た目も予想以上に若い顔立ちだ。その男は僕達をまじまじと見つめて来た。
その男は一礼をした。
「はじめまして、オーウィズ王子殿下及び皆様。自己紹介をするまでもないですが、8勇士の1人、レフト・カサブレラと申します。エイディの盟友と言う立ち位置の者です。まさか、一瞬で素性がバレるとは驚きを隠せません。やはり、あなたがたがエイディに会ったという噂話は本当のようですな。ひとつ確認したい。オーウィズ王子殿下、キンデルダルと戦うつもりですか?」
レフトは少し奥にいるオーウィズへ視線を送って話してきた。
「もちろんだ、リリラの好きにはさせない。」
「そうですか、あなたがたが今までしてきた、バーブル討伐、ミリアン討伐もすべてが計算された事。あなたがたは未だにリリラ様の手の中でうごめいているとしてもですか?」
嘘だ。すべてリリラの手の中と言う事はない。3女ミリアンと会った時に、次女バーブルを死に追いやった僕達を憎んでいた事は確かだ。すべてがリリラの範疇では無い。これはレフトの策略だ。
「どんな事があろうと、私はこの国を守る使命がある。そんな脅しには屈しない。」
オーウィズがそう言うと、レフトは再び小声で笑った。そして奥を指差した。
「面白い、エイディとローゼルの血筋の者か。本当にそっくりだな。分かった。今回はおまえ達に力を貸してやる。」
そう言うとレフトは懐から何かを取り出して、僕に向って放り投げた。僕はそれを受け取った。短剣だった。しかし、その短剣握った瞬間に何か懐かしい感触がした。この感触、マナの剣だ。これはマナの剣の短剣版?
「その剣を貸してやろう。」
「これはマナの短剣?」
「少し違うが似たような物だ。いい事を教えてやる。このテイルエンドには魔物の巣窟とつながる転移陣がある。3つの尾びれの先端、魔王城、迷いの森、ウブキ山脈。そのうちひとつの魔王城はエイディが既に封じている。しかし、残りふたつ今も生きている。転移陣は周期的に開け閉め繰り返して、魔物をこの世界に吐き出す。リリラ様はこの転移陣を強制的に最大級開け状態へとしようとしている。そしてこのテイルエンドを魔物の巣窟化にし、魔王様を復活させ、王国の再復興の望んでいる。」
そこまで話すとレフトは僕に渡した短剣を指差した。
「その短剣はマナを発散させる力を持つ。マナをもたないマナの一族以外使う事は出来ないが、その短剣で転移陣の中心を刺せば転移陣自体を消滅させる事も出来る。今日だけ貸してやる。迷いの森、奥深くにある転移陣を破壊してみろ。そうすれば私もお前達を認めてやろう。」
「認めるってどういう………………。」
レフトは口に人差し指を置いて何も語るなと言わんばかりの合図をした。そして、今度はオーウィズの方を一歩近づいた。
「オーウィズ王子殿下。いかがでしよう。今回、私は貴方に協力しましょう。その代わりお願い事がございます。」
「何が望みだ。」
再び、レフトはオーウィズに深々とお辞儀をする。
「貴方様が王になった暁には、光の坑道を1ヶ月貸して頂きたい。それだけです。あの転移陣を破壊出来るのはマナの剣かこの封印の短剣のみ。今ここでお約束頂ければ、その短剣をナギト殿へお預けいたします。」
「光の坑道で何が目的だ。」
「それは言えませんが、強いて言うのであれば、この世の理を知る為。とだけお答えしておきましょう。」
僕達の視線がオーウィズに注がれる。どちらに転んでも危険な香りがする。
このレフト、先程正体を現してからは隠していたマナを身体中に浮き上がらせている。バーブル達クラスの強敵である事は容易に感じ取れる。マーロンの勘はこの隠れたマナに反応したのだろう。彼の提案を断ればここで戦いになる可能性も高い。直感的だが、この男、バンパイアでは無い。しかし、決して人間でも無い。何か別の存在だ。古のバンパイアロードと同じ魔族と呼ばれる種族なのか?
今ここで戦う事は避けたい。それはマーロンやカールも承知している様で、レフトに対する敵対心を弱めていない。
「分かった。約束しよう。」
「オーウィズ王子殿下。いや、未来の聖京都王よ。大変感謝いたします。では、転移陣の場所をお伝えしましょう。この迷いの森の南東に小さな洞穴があります。その洞穴は入ると森の中央へと移動する仕組みになっております。その洞穴の封印を斬れば洞穴に入れます。そこに転移陣はございます。もちろん、リリラ様の部下が守っておられますからお気を付けて。それでは、皆様が再び迷いの森を出てくるのを待っております。」
突然北側から強い風が吹いた。風は土ぼこり巻き上げて吹き荒れた。風の強さで僕は腕で顔を覆った。
突風が去ると目の前にいた行商人も消えていた。あたりを見回してもロバも何もかもなくなっていた。さっきの会話自体幻だったかの様に……。
しかし、僕の手にはレフトの短剣がしっかりと握られていた。
僕達は迷いの森の手前の宿営地で夜を明かす事になった。
「どうするの?」
ストナがオーウィズにこれからの行動を聞いた。オーウィズは僕の方を見た。
「まずはブルド達を追う。」
「ブルド達?」
「そうだ、あいつらはたぶん、噂の死狂館跡に向かったと考えられる。あそこにも転移陣はあると考えている。」
死狂の館自体が転移陣の上に作られたと考えれば、今までの不思議な現象は説明がつく。突然、魔王城眼下の有栖川に現れたり、出口から出ると、聖京都の東城壁に飛ばされたりと何が起こっているのかも分からなかった。けれど、全ては転移陣のうえに作られた館ならこの不思議もなんとなく納得してしまう。
そして、死狂の館のあった場所には今も転移陣があると考えられる。
レフトはその事には一切触れなかったけど、レフトが全て真実を語っているとは言い難い。
罠かもしれない。
そのまま迷いの森を奥まで突き進めば、両転移陣から出てきたモンスターに挟み撃ちを食らう可能性も否定出来ない。
しかし、その事を気にしてここまで引けば、聖京都攻略中に迷いの森のモンスターと挟み撃ちになる。
もちろん、この迷いの森に転移陣自体が無い。真っ赤な嘘である可能性もある。しかし、その可能性は低い。死狂の館自体に遭遇していなければ、そう考えたかもしれないが、今となっては可能性のある芽は早めにつぶした方が得策だと思う。
オーウィズに注目が集まる。ここまできたらオーウィズのスキル探求に望みを託すしかない。
ブルド達を追い、死狂の館跡の転移陣を潰してから迷いの森奥へ行く。
これがオーウィズの出した結論だった。
「はい、どうぞ。」
ストナが僕に飲み物を渡してくれた。
夜の事であった。夕食を食べた後に、僕は1人で焚き火の前に座っていた。そこにストナが僕の横へと座ってきたのだ。
「眠れない?」
「まあね。」
「私も。」
僕達は空を見あげた。心の中とは違い満天の星空が輝いていた。
「ナギトは何回目だっけ、ここに来るのは。」
「3回目。最初は初めての冒険、死狂の館で仲間と分かれて。次はライガさんに付いて来てもらった時。3回目はストナと会った時だよ。」
僕はストナの方をそっと見た。月灯りと焚き火の炎で彼女の表情は読み取れた。
ここに良い思い出は無い。この森で七本槍の道化衆の結成メンバーは殺された。ストナの弟もこの森で殺された。
あまり来たくない場所である。
「ストナ、気分は大丈夫?」
「悪くはないかな。悪くは。そう言えば、この宿営地で初めての会ったんだっけ、私達。」
「正確にはここへ来る前の作戦会議だよ。」
「そうだっけ。なんかここでナギトに助けられた記憶しかないな。でも、やっぱりここは来て楽しい場所ではないかな。」
「ごめん。」
「何でナギトが謝るのよ。私が付いてきたのよ。ここは私が弟を葬った地。その感覚は今でも忘れない。忘れられない。忘れよう、忘れようとしてきた。でも、今日この地に立って思ったのよ。忘れなくていいかもしれない。だから、何があってもバンパイア達の好き勝手にさせない。そんな感じかな。それに、ここは私にとっては七本槍の道化衆スタートの地だからね。」
「そうだね。」
「あとね。ナギトに相談があるの。」
「相談?」
「私、この戦いが終わったあとね」
何を言い出すんだ?予想外の突然話に息を飲んだ。
「私、武器を変えようと思うの。」
ぶ、武器?予想を更に斜め上を行く発言だった。言葉が出なかった。
「あのね。マトゥキさんの言うように、スキル無しで聖流剣を使うには細身の長剣タイプの方がいいと思うの。それに、私も親善試合に出てみたくなった。」
「親善試合って、あのスルーニルでやった試合の事?」
「もちろん、そうよ。私はね、昔から親善試合が嫌いだった。だって自分の力を制御して戦って何のメリットがあるのか分からなかった。けど、ナギト達の試合やマトゥキさんの戦いを見て思ったの。制御の中で手にした物は決して無駄で無いって、うまく言えないけど。」
「いいんじゃない。練習は付き合うよ。」
「本当!それなら、頼んでいいよね。」
「頼む?」
「エージナさんに私の剣を作ってもらうのよ。この腕輪の様に風のマナを帯びてるのがいいかな。相性がいいのよね。ね。」
ようやく、この話の本当の趣旨がうかがえた。要するに、七本槍の道化衆の予算で金を出せと言う事だ。
確かにストナの大剣は身体に合っていない、類まれなセンスとスキルでカバーしているが、そのカバー力も上の実力者には通じない。武器を見直すのも悪くないと思う。ただ、その前にこの戦いで勝つ事が条件だけど……。
「分かったよ。」
「やった。このあと。マナの剣をもらいに行った時、注文して良いよね。」
「はい、はい。分かりました。」
僕がストナの方見ると、ストナは立ち上がって僕の飲み終えたスープのカップをとって、「ありがとう、おやすみ。」と耳元で語って去って行った。
ストナが戻って行くと同時に2人の男性の影がこっちに近づいてきた。
「よう、少し良いか?」
マーロンとカールだった。
「どうもあのお嬢さんは苦手でな。」
あまり笑顔を見せないマーロンの口元に少し緩んでいる。
「そうだ、ナギト聞いたぞ、あのセアリー王女に親善試合で勝ったそうだな。」
カールが僕に欲し肉を手渡してくれた。
「食え、本当に凄いな。私は完敗したからな。あのお王女様はかなりのやり手だ。手が出なかった。」
僕達は少し近況を共有した。
現在、マーロン達はセタ村に陣を構えて聖京都対峙しているが、今のところリリラ達が何かを仕掛けて来る気配はない。基本的にセタ村の防衛をライガが担い、マーロン達は周りの村の調略に向っていると言う。
オツがこっちについた事で南側にリリラの勢力を抑える事は出来た。聖京都からの北上は難しいので琵琶の湖の西部を通って北上を考えているらしい。
「マーロンさんはあのレフト・カサブレラをどう思いますか?」
「あ、あ、あいつか、俺はレフト・本人では無いと考えている。お前や殿下と同じだ。血の濃い家系だな。それ以外に考えられん。お前の脳裏をかけった映像を信用していないわけではないが、あいつがレフト・カサブレラであるとは納得できん。」
カールが話に入ってきた。
「そうか、おまえは相変わらず頭が硬いな。あいつを危険視したのはお前だろ。何か普通ではなかったんだろ。それなら、あいつがレフト・カサブレラの可能性はあるって事だ。魔族とか、長寿系の生物の可能性だってあるだろ。魔王だって何百年生きていたんだから。」
「僕も魔族の線は考えました。でも、魔族が魔王と敵対するのでしょうか?」
「ナギトには悪いが、エイディやレフトの素性は何も分かっていない。帝国北方に住んでいた一族。魔王大戦で魔王の襲撃を受けて国は崩壊、民族は散り散りになった。その散り散りの民族がエイディとレフトだ。彼らは魔王を倒す為連合軍に加わった。そして魔王にとどめを刺したのがエイディ、その従者として戦ったのがレフト。それ以上の情報は何もない。ミルロワールの王女って聞いた事があるか?」
「リリラがキンデルダル第四王子に嫁いてきた時の言われていた通り名って聞きましたけど……。」
「そう、そのミルロワールこそが帝国北方にあった国の名前だと言われている。帝国には今でも多くのミルロワール人が住んでいると言われている。おかしいと思わないか?」
「おかしい?」
「あのバーブルもエイディの母親だった。バーブル、リリラ、レフト、エイディ。こう並べるとエイディもレフトも魔族の可能性だってある。」
「僕も魔族?」
僕の一言にマーロンが反論する様に言った。
「カールの妄想だ。くだらん。何が魔族だ?辻褄が合わない。魔王大戦の時、ミルロワールすなわちマナの一族は帝国だけではない、このテールエンドにも移り住んでいるのだ。ナギトがその子孫の一人だろ。それなら、100歳200歳生きる者がもっと大勢いてもおかしく無い。そんな話聞いた事が無い。論点がズレている。もう遅い、寝るぞ。」
そう言ってマーロンは立ち上がった。
「すまんな、くだらない妄想に付き合わせて。明日も早い、ゆっくり休め。」
そう言ってマーロンとカールは去って行った。
「さて、僕も寝るかな。」
明日に向けて体調を万全に整える為休む事とした。レフト・カサブレラが何者かは分からない、けど、今は自分達の出来る事をしよう。そう自分に言い聞かせた。




