娘を守るためなら
久しぶりの長い一話なので、どうか最後まで読んでください。
1
不安だ……
今、あたしの中に不安しか感じていない……
本当にあの人の計画はうまく行けるの?あたしたちは本当にここから出られるの?似たような質問は、目が覚めたからずっと頭の中で繰り返してる。
最初でまだ小さかった不安と他の負の感情は、時が経つほど大きく膨らんでいる。そして、今もその膨張は止まる気がまったくない……
だけど、それらの負の感情を顔に出しちゃダメだ。
もしあたしが不安を表に出したら、他のみんなも次々と不安になっていって、最後は逃げること自体を諦めちゃうかもしれない。
人に希望をもたらすのはすごく難しいが、絶望にさせるにはとても簡単。だって絶望は伝染りやすいだから。
一度も言い出していなかったけど、あの人はあたしたちを不安にならないように、一昨日からわざわざとこんな所で夜を過ごした。
それは本当にあたしたちを励ますための行動か?あるいはただ遊び相手が欲しいか?今ここに居ないから、答えが分からない。まぁ……多分、答えは後者だろう。
……あの人も大人しく本音を出す人ではないし。
「エラお姉ちゃん、ボクたち、これからどうするの?」
「心配しないで、あたしたちはきっと脱出できるんよ。」
「そうです、そのためにディケイさんは頑張っています。彼を信じて。」
「……夜食のおにいちゃん、ちょっとバカでおかしくて頼れないように見えるけど。」
「でも、おにいちゃんが持ってきた夜食をもう一度食べたいです!」
「うん、そうだな。次また夜食を食べる時、一緒に外で食べましょう!確か『負け犬の遊び場』っておにいちゃんが言ったっけ?」
子供たちの間にあの人のあだ名はもう夜食のおにいちゃんとして定着したみたい。もし聞かれたら、本気で「じゃー、望み通り、夜食抜きな!」と言い出しそうだ。
17歳、ほぼ大人だ。と自己紹介をしたが、正直に言うと完全に大人げない。でいうか子供っぽく見える。でも、それだからこそ、子供たちと仲良くできる。
「お姉ちゃん、ディケイさんのこと心配していますの?」
「ん?はぁ~?バカなことを言わないでエル、あいつのことを心配する理由がないよ。」
「そうですね、お姉ちゃんは心配する必要がないほどディケイさんを信じていますね。」
「ちょっと!?勝手に誤解しないでエル!」
「確かにディケイさんは肝心な時すごく頼りになれないかもしれません。ですが、彼は約束をきちんと守ることができる人です。だから、私たちが危険に遭う時、ディケイさんは必ず現れてきます!と、私はそう信じています。」
な、なにがあったんだろう?エルはあの人を信じてる、普通の信頼ではなくて、自分の命をあの人に託せるほど信じてる。
しかも、今のエルの表情は見覚えがあるんだ。お母様があの「ヒーロー」を語っている時とまったく同じ表情だ。
エルはお母様のように、完全にあの人のことを自分のヒーローとして思ってる。
「あっ、あのな、エル、あいつは――」
まるであたしにこれ以上言わせないように、突然、周りが揺れて始めた。しかも揺れが徐々に強くなってる。
地震!?それより、ここは崩れないよね!?
「こ、怖いよ!」
「もう揺れないで――ッ!!」
「エラお姉ちゃん、エルお姉ちゃん、ボクたち本当に大丈夫なの!?」
数分後、強烈な震動がやっと止まった。だけど、子供たちの心のほうが揺れ始めた。
なんとかしないと、あたしはここの一番年上なんだから、しっかりして子供たちを励まさないと。
そう考えてる頃、近くになにかチクタクチクタク音が聞こえる。
これは……!あの人が言ってた爆発の十秒前のカウントダウンだッ!
「子供たち、落ち込むのはあとにして、今すぐ鎖と檻から離れて!早くッ!!」
あたしの叫びを聞こえた同時に、子供たちは条件反射で素早く壁に向かって走りだした。どうやら全員カウントダウンのことを覚えてるらしい。
子供たちが安全な処に逃げたのを確認したあと、カウントダウンはいよいよ残り三秒。
さん、に、いち、とカウントダウンが終わったその瞬間、あたしたちを縛り続けた長い鎖に爆発が起きて、動きやすくなるほど短くなった。なにより、鎖からの縛りはやっとなくなった!
全員分の鎖が爆発により短くなったあと、次の爆発が始まった。
ドガンッ!と近くに大きくて怖い爆発音を聞こえて、なぜかあたしたちが居る地下一階が再び揺れ始めた。しかも、爆発音は檻からだけではなくて、真上からにも伝わってくる。
と、止まったか?暫く経ったら、近くから或いは上からにも、爆発音が聞こえなくなった。
そう信じて目を開けると、あたしたちの自由を奪った檻が壊されて大きい穴が開いた。
………………ッ!!ダメ、まだ素直に喜んではいけないんだ。あの人が仕掛けた脱出計画は始まったばかり、むしろここからが本番!
「あたしとエルお姉ちゃんが先に行くから、しっかりと付いてきて!いいか、地上に辿り着くまでが脱出です。だからまだ安心しちゃダメ!」
「そうです、一人残らず、地上へ行きましょう!」
2
「酷いありざまだ……一階がほとんど壊されちゃってる……」
地上一階に上がっていくと、爆発によりめちゃくちゃに破壊された多数の部屋。そして広くて長い廊下に散らしたのはガラスの欠片と元々はブロックだったの瓦礫。
よく見ると、廊下の地面と天井に亀裂が生じて、もう一回爆発が起きたらいつでも崩れそうだ。
人の気配は……ないみたいね。どうやら一回目の爆発が起きたあとすぐ避難しに行ったんでしょう。ある意味助かった、これは一度きりの脱走、失敗は絶対に許さないから。
「お姉ちゃん、あそこです。ディケイさんが言ってた、階段の近くに残した道標です。」
エルが指している場所は元々大きい水晶ランプをぶら下がっていた天井、其処には魔粒子で出来ていた紫色の矢印がある。そして矢印が指し示してる方向はあたしたちの前方。てとこは、この先に向かって真っ直ぐという意味かな?
右下、左下、右上、左上、最後は左下、合計五つの交差点を通ったあと、矢印はずっと前方に指してる。
それにしても、本当に不思議だね。見上げる方角が違うだけで、矢印が指し示す方向にまで変えるなんて、あの人はそこまで準備したの?
「ひぃ!エラお姉ちゃん、あそこに倒れてる人が!」
「倒れた人の近くに赤い液体が……まさか、死んでしまったの!?」
横に振り向いたら、地面に倒れて全身ガラスの破片に刺しまみれた人が見えた。そして、遠くない隣の部屋に飛び散った瓦礫に潰されて、もう人とは言えない血と肉が互いに混ぜたモノになった。
爆発に巻き込まれたのか……或いはここの人たちに見捨てられた奴隷なのか……
あたしたちにできることはもうない、此処で生き残ってるのはあたしたちしかないから。他の人はすでに逃げたか、もしくは死んじゃったか。
お前たちも別の意味で縛りから解放したので、とにかく……安心して眠りなさい。
キミたちの分まで、あたしたちは頑張って生きて此処から逃げてみせる。
「振り向くな!あたしたちには立ち止まる時間がないんだ!」
「安らかに眠りなさい……さぁ、みんなも一緒に。」
死者の方々に祈ったあと、エルと子供たちと一緒についてきた。さらに不安になってしまったせいで、みんな涙目にしてる。あたしも泣きたいけど、それじゃみんなを率いる人が無くなっちゃう。
……だから、今のあたしに弱音を吐く権利なんかがない!
そう自分を叱ってる時、出口かも知れないちゃんと戸締まりをした扉と、その隣にある大穴を見た。
矢印の指示はもうない、外まであと一歩だったのに、どうして……出口の選択肢が二つあるの!?
扉?それとも爆発でできた大穴?正解はどれなのッ!?
「お姉ちゃん、私の勘ですが、正しい答えは大穴のほうかも。だって…この計画を考えだしたのはあのディケイさんですもの、大人しく扉を出口として使うわけがないですよ。」
あたしが苦しむほど考えてる頃、エルは軽々しく彼女の考えを言い出した。
うん、言われてみると確かにそうだ。あの人は目を刺すと言ってあっさりと他の所に攻撃する人だから、常識に逆らうほうが、ある意味の正解かも……
とは言え、だからどうしてエルはアイツをそんなに信じてできるの!?まさか……アイツ、あたしが知らない間に、エルになにかをしたのか!?
あとで強引にすべてを吐き出すから覚悟しろ!!
「扉の方ではなく、みんな、大穴を通って外に出るよ。いいか、絶対に扉のほうを通っちゃダメだよ!」
「ほら、ゆっくりして、瓦礫に注意していますね。」
子供たちとエルが大穴を通って無事に外に出たのを確認したあと、あたしも急いで大穴を通って、やっと奴隷の売り場から逃げ出した!
誰もない、ちょっと暗い巷に繋いでいるけど、空気だ……久しぶりの新鮮な空気だ……地下にいる頃の淀んだ空気と違って、これは紛れもなく外の空気だッ!!
あたしたちは、今……外に出たんだよ!
「エラお姉ちゃん、ここは……外?」
「ボクたちは……外に出たの?」
「もう…苦しまなくてもいいですよね……?」
「うん!この巷を通ったら、夜食のお兄ちゃんはみんなが楽しんでいるご飯を奢るんよ。だから、もう少しだけ頑張ってッ!」
避難しに行ったとは言え、追手があるかどうかはまだ分からないし……ここは急いで巷から離れるほうがいいかも……ん?扉の上になにかがついてる、魔氷結晶!?小さいけど、確かに魔氷結晶だ。
中になにかを入れていたか分かんないが、なにかの警報でしょう?扉を開かないほうが正解だった。
おや?矢印を見つけた。ついて行けば、大通りに辿り着けるかな?
五分ほど歩いたら、矢印が消えた。そして、あたしたちの前にあるのはただの一本道。
「ちょっと!走るのが危ないんだ!足下気をつけて!」
早く街を見てみたい興奮が抑えられない子供たちは先に行った。
まったく……もし転がって怪我したらどうするんだよ……
「エル、あたしたちも行こう。子供たちじゃ絶対いきなり転がっちゃうから。」
「では、私たちも急ぎましょう、お姉ちゃん。」
3
大通りに出たら、なぜか子供たちはなにかを怯えてるような顔で左側を見ている。まるで山を登ってる時いきなりキマイラに遭ったような表情だ。
「おやおや~これはこれは、予想外の二回目の爆発を聞こえて、急いで状況を見に来たら、まさか奴隷たちが脱走したとは……」
子供たちに恐怖を感じさせたのは、自分勝手で喋り始め、身に着けるものがすべて金色に統一された、背丈はやや低めで髪は紅褐色の男。
「まさかキミたちも一緒に逃げるとは、本当に予想外のハプニングですな。あとで高貴な私が直々に迎える手間を省きました、だって今ここでキミたちはこの私の奴隷になるから。」
男の悪意を込めたゲスな笑顔と、笑顔によって細くなってまったく笑っていない両目を見て、子供たちはあたしとエルの後に退いた。
この男を覚えているのは子供たちだけではない、あたしとエルも嫌ほどこいつの面影を覚えているよ。
全身金色に染めた男は貴族、しかもなぜかあたしとエルに病的な執着を抱えてる。
「さぁ~、観念して私の下に来なさい。そうすれば今までのことは無かったことにする。加えて、後ろにいる子供たちも見逃してあげます。」
金色の貴族は手を伸ばしてゆっくりとあたしたちとの距離を縮めてる、よっぽど自分が勝てるだと自負しているらしい。
あたしとエルは最初から狙われてるからまだどうにかできるけど、子供たちを巻き込むことだけは絶対にダメ!
なので、ここで二手に分かれよう。
「エル、あたしが合図したら、風で埃を巻き上げて。子供たちに逃すための目眩ましだ。あたしもあいつに攻撃して注意を引くから。」
「私たちが囮になるですね、分かりました。ねぇ、よく聞いて、あなたたちは別の方に逃げなさい。そうすれば、きっと夜食のお兄ちゃんに会えます。だから、思っきり走りなさい!」
「けど、エラお姉ちゃんとエルお姉ちゃんが!」
「いいから、早く行きなさい!今よ、エルッ!!」
「はいッ!『風の精霊よ、敵の視力を奪いなさい!』、ダストウィンドッ!」
「『焔の精霊よ、敵を撃ち倒す弾丸を化せ!』、フレアバレット!」
エルが風で大量な砂ホコリを巻き上げた瞬間、あたしも焔の攻撃魔法を撃ちだしてあいつの気を引いた。同時に、子供たちも後へ全力で走りだした。
そう、後ろに振り向くな、前だけ見ていて!
「ほぉ~抗うつもりですか。そんなまったく威力がないみたいな攻撃で、この私を止められるとても思っていますか。」
「エル、援護は任せるよ。あたしが魔法という攻撃手段しかないと思ってるか!ならば、ちゃんと股間を守ってみせろよ!!」
「同じ騙し討はエリートの私に三度も効かないだ!」
あたしが言ったのを騙し討だと勝手に思い込んだ金色貴族は、両手で目を庇う。
うん、確かにあの人だったら絶対やると思うよ。
だけど、あたしはあの人ではない!
「――――ッ!!――――!!!!」
「あたしはインチキ技なんか使う気がないだよ!」
予告通り、あたしはちゃんとあいつの股間を蹴りで潰した。ほんとう、気持ち悪い感触……あとでちゃんと消毒しないと。
今のうちに、子供たちと別方向に逃げるわ。
「ははっ、ハハッハッハッハ!!俺を怒らせるなんていい度胸だ!貴様たちを捕まえたら、死なない程度で壊れるまで罰を与えよう。」
と、金色い貴族は服から魔結晶の塊を取り出して、地面に投げて砕けた。そしたら、眩しい光が砕けた魔結晶から出した。
閃光を放つ魔法?害はないから、放って置いても良いらしい。
「お姉ちゃんッ!危ないッ!!」
突然、エルが体当たりであたしを突き飛ばした。その代わりに先まであたしが居た所がデカイ手に強く叩かれた。
デカイ手の持ち主は、ライオンの頭とタイガーの身体と蠍の尻尾を持つ、要するに怪物だ。
「さぁ~て、始めましょう、楽しい鬼ごっこを。」
それはあたしが覚えてる、金色い貴族が言った最後の言葉。
あのあと、あたしとエルはどれくらい走っていたか分からない……
無理やりに合体させた獣に遭ったら、すぐ別の方向に逃げる。そう何度も繰り返した。しかもあたしとエルも、大事なアルメリアの花飾りを獣たちのせいでどこかに落としたし。
拾う余裕もなく、ただひたすら逃げただけ。
そして、あたしとエルは広場まで逃げました。いや、正確には誘導された。
広場には燃えてる屋台や、なにかの衝撃のせいでぐちゃぐちゃにされた色んな残骸がある。加えて、怪物も数匹いる、しかもあたしたちを包囲してる。陸からも、空からも。
「どうやら、逃げ道が無くなったようですね。では、大人しく諦めましょう。」
諦めるしか……ないのか……
子供たちは上手く逃げたが、あたしたちはここまでみたい。
ごめんね、エル……あなたを子供たちと一緒に逃したら、こんな目に遭うのはあたしだけで充分なのに……
悪あがきとして、せめてエルに……
「行け、二人を捕らえろ!!」
大丈夫だ、エル。例えあたしを犠牲しても、あなただけは!
「俺の大切な娘たちに、手を出すなぁぁああああああ――――ッ!!!!」
聞き覚えのある雄叫びと共に、空から降りてきたマッチョ男が、全力の一殴りで飛んでいる獣を撃墜した。
――親父ッ!!
――お父様ッ!!
4
遠くから爆発音を聞こえたあと、俺は走りだした。西エリアに向かって。
あんちゃんが言った、爆発が起きたら、すぐ西エリアに行け。そうしたらエラとエルに会えるだって。
だから、俺は走り続けた。多くの全身鎧を纏う邪魔者を殴り倒しつつ、無理やりに爆発に突っ込んでいても。
そしたら、元々はフリーマーケットで今はボロボロになった広場で、娘たちと再会した。
もちろん、邪魔の鳥みたいな生き物は全力で撃墜した。
「会えたかったぞ、エラッ!!エルッ!!」
「来んな、こっち来んなって!酒臭いだよ!」
「お姉ちゃん、今はそれどころじゃないです!獣たちが襲ってきます!!」
「せっかくの再会を邪魔しようたなんて、空気が読めないワンコは馬に蹴り殺されるか、或いは龍に殴り殺せるだな。」
殴る前の準備として指をポキポキッ鳴らした。俺は今、本気でこいつらをぶっ殺すつもりだから。
よくも俺の娘たちに、ひどいトラウマを付けたな!!
「――だから、ここで俺に殺されても文句がないよねぇ?オラァッ!!」
先手必殺ッ!地面を強く蹴って一瞬で目の前にいる獅子頭との距離を最短に縮んだあと、顎に向かって下から突き上げて頭ごと空に殴り飛ばした。
弱い血の驟雨が降ってる間に、横から鋭い角で突進しにきた牛のような獣は、スッと最低限の動きで避けた瞬間、膝蹴りで沈黙させた。ついでに胴体を持ち上げて、すぐ其処に飛んでる鳥(?)に向かって投げ出した。角が見事に鳥のような獣を貫いた。しかも意外に落とした。
最後、エラとエルに襲おうとした虎頭と狼頭の前に回してびっくりさせたあと、二つの頭を掴まってぶつけさせた。力が入れすぎて、ぶつけあった頭から血と肉の破片がこっちに飛びついてきた。嫌な臭いだな……
これで最初の一匹も含めて、合計六匹の変な獣は全部、力技で強引に眠らせた、永遠に。
血の臭いがだんだん空気と混ざって、刺激な臭いになってる。
「残されたお前の出来ごとはあんちゃんから全部聴いたから、ただでは済まさないぞぉ……」
「<水よ、凍てついて我が身を守る盾となれ!>アイスバリアッ!」
「ハッ!んな脆弱な盾で俺の怒りをたっぷり込めた拳を止めると思うなぁぁああ――!!」
脆い氷の盾をぶっ壊したあと、目に悪いほど金色い男の顔に一発殴って地面に倒させて、あいつの襟を掴んで持ち上げる。そう簡単には倒させないんだ。
悲鳴を上げて許すを求めても、俺は止めるつもりはないんだ。娘たちの痛みと苦しみを、お前にも味わわせてやる!!
「…………くく、くっくくくく。」
「てめぇ、なに笑ってるんだ!!」
「キマイラがそれしかないとでも思っているか、それでこそ貴様の負けだッ!」
「なんだと!?」
「ギャアアぁぁああああーーーッ!!!」
「エル、エルを放してこのきゃあぁああ――ッ!!」
エルとエラの悲鳴を聞こえてすぐ後ろに振り向いて見たら、蜘蛛のようだけど軟体生物みたいな触手を持つ異形がエルを捕まった。そしてエルを助けようとしたエラは追い払われた。
くっそ!俺が油断したせいでエルが!!
「これで形勢逆転ですね。さぁ、まずは……そうだな、このままキマイラたちの餌食になってやるのも面白いですね。くっくくく。」
「貴様ぁあ――ッ!!」
「おっと、人質のことはどうでもいいなら、殴りにきても構わないですよ。だが、その時、娘さんの命は無様に散りますよ。身体がバラバラにされて。」
「この外道がぁぁああ――ッ」
「キマイラたちを命令して、もう一人の娘さんに襲っていくのも案外別の意味で面白そうな提案ですね。ムキムキの男より、若い女子の方が好みでしょう。」
「お父様――!私のことはどうでもいいです、早くお姉ちゃんを助けて!」
「クソ親父――ッ!!あたしは大丈夫だ!もしエルを見捨てたら、例え死んでもあんたのことを絶対ッ許さないから!!」
「私を殺したいではありませんか?早くしろーよ、今の私は無防備なんですよ。さぁ――!!」
俺は……エラとエルの間に一人しか選べなかったら、俺は……
「どうか……娘たちを逃して欲しい……俺を、好きにしても構わない、だが娘たちだけは!」
「<焔よ、我が拳に纏い、敵を惨めな灰となれ。>エンチャントフレイム。ほら、ほらほらほらッほらぁっ!!どうした、反撃もできなくなりましたか!!」
痛みは感じられる……だけど、もしこれでエラとエルが生き延びることができるのなら、俺は……娘たちを守るために、喜んでこの生命を捨てます。
ずっと……過去にしか見つめていなかった……
アルメリアが黒い結晶となったあの日から、俺は……一度もエラとエルのことを目に映っていなかった。ずっとずっと過去の幻を見て、未来を捨てた。
こうなったのも、ある意味、俺の自業自得かも知れない……
ごめん、エラとエルよ……もしあの時、俺は君たちのことをもっと気にかけたら……
「……退屈ですね。もう返り討ちもできないのようですし、次のショーを始めましょうか。父親の目の前で二人の娘を殺すたなんて、さぞ盛り上がることができるでしょう。くっくく。」
獣を操っているのはこの男らしい……
だったら、地獄に行くとしても、せめてお前を連れて一緒に行くんだ!!
父親を、親バカを、ナメルナアアァァアアアアアアア――ッ!!
「では、終幕のはじま――『ヒィィィイイイぃイイイイ――ッ!!』なんですか、この気持ち悪い鳴き声は!?」
どうやら……空気を読まないやつを蹴り殺すために、馬が来たようだな。
しかも、あれはとてつもなく機嫌が悪い、白い暴れ馬のようだ。
「「「「■■■■■■■――ッ!!!」」」」
空から落ちてきた大量な氷柱に急所を貫かれた獣たちは、苦しい鳴き声を上げたあと消えた。
助かれたエラはすぐ解放されたエルの側に駆けて行った。全員がなにか遭ったかまだ分からないその時、白馬が地面に刺してる氷柱の一柱に着地した。
白馬というか、白馬のお面を被ってる人と言ったほうが的確だな。
「フスぅううー、ヒィィイイイイ――ッ!!」
「う、馬だと!?そんなバカなぐわぁ!」
馬人間は大きく鳴き声を出した。そして狂ったように一瞬で金色い男を蹴り飛ばした。
すごく怒っているのは分かってる、だって俺もだ。
「助かったぞ、あとは俺にまかギョワッ!!」
と、俺に向かって膝蹴りした。しかも手加減がない全力一撃で。
なっ、なんで味方だったはずの俺まで……
十月も一話だけですが、ボリュームはたっぷりです。
正直に言うと、二章の終わりまであと4話ですが、年末に終わらせるかどうか、不安しかない。
次回はやっと合流した白い馬の出番です、期待しないように待ってください。
いつ更新できるかはまだ分かんないからね……




