いざ、決勝戦へ
遅くてすみませんでした。
いよいよペガサスvsユウシャの決勝戦が始まります。
1
オレとユウシャの決勝戦が始まるのは午前十一時三十分。そして、大量に設置した爆弾を起爆する時間は十二時ジャスト。
大爆発が起こす音は、例えこの時オレは闘技場で大ブーイングされても、絶対に聞こえるほど大きな爆音が出るからな。そのバカでかくてうるさい爆音こそが、作戦が始まる合図だ。
闘技大会の決勝戦だって?ンなのどうでもいいじゃない?だって合図さえ聞こえたら、オレはすぐ闘技場から出て、西エリアへ転移するんだよ。確かにそうなったらオレが決勝戦を棄権するように見えるが、正直オレは二位になっても良い。
優勝になって貰える賞品はミスエラとミスエルだけでしょう?だけど、作戦が始まったあと、そんな未来はすでに無くなった。
言っただろう、オレは準優勝になるんだって。なぜならこの決勝戦、最初から優勝なんで出るわけねえだよ。グッヘヘヘへへッ!
おや?闘技場の入り口前に立っているのはライガードじゃないか?しかもアイツの頭の上に乗ってる黒いのって……どっかに行ってどうしても見つかれない黒猫じゃない!?
こっちに気づいて、ライガードはゆっくりと歩いてきた。そしたらネコは素早くオレの頭に乗り移ってきて、うにゃ~んと身体を伸ばしてリラックスしてる。まるでやっぱりこの頭が一番気持ちいい寝床だにゃと言ってるみたい。
そんなにオレの頭が好きなのか?
「お、おはよう……頭が痛い……昨日また飲みすぎたか?あんちゃんと戦ってることはまだ覚えているけど、そのあとはまったく記憶がない……なにか嫌なこと強制的に忘れたような気がする。」
「嫌なことつーか、お前はただ酒代を払えたくないだけだろ!?お前、昨夜よくも銀貨9枚の酒を飲んだな!しかもあっさりと酔っ払って、宿まで送るのが本当に大変だぞ!でいうか、さっさと昨夜の酒代を返せッ!」
記憶の深層に封印して、思い出したくないほど、オレがライガードの心に傷ついたの?
知らんぞ!アイツがオレに八つ当たりしたせいだよ、あれはどう見ても正当防衛だし、オレもライガードの全力一撃のせいで肋骨が四本もやられたし。
だから、アイツが昨日の記憶が失くした今のうちに、お金を貰おうか。まずは銀貨9枚からだ。
「ところで、大事な話があるんだライガード。お前はミスエラとミスエルが助けたいんだろ?ならば今からオレが言うことを覚えてやれ。」
「良いだろう。娘たちのためなら、例え今すぐあの地下に侵入しても構わん!」
「一回しか言わないから、ちゃんと聴いて覚えてろ。もしいきなり爆発音が聞こえたら、全力で西エリアに向かって突っ走れ!そこにミスエラとミスエルと会えるんだ。」
「なにを企んでいるか分からないが、ディケイのあんちゃん、俺はあんたを信じてるぜ。娘たちのことはよろ……ぐっ、頭が!」
「んじゃ、もうすぐ決勝戦が始まっちゃうから、オレはこれで。いいか、爆発音が聞こえたら絶対に急いで西エリアに行くんだぞ、ライガード!」
ライガードが昨日のことを思い出しちゃいそうから、慌てて話題を終了して闘技場に逃げ込んだ。
あんなバーサーカーモードのようになったライガードなんて、もう二度と戦いたくないからな!
でいうか早く馬に蹴られろ!じゃないとオレが馬になってライガードを蹴るぞ!
2
「さぁって、行こうか。あのユウシャを、叩き潰すか。」
冗談です、決勝戦はまだ始まっていない。現在オレは休憩室で全力で自己暗示を掛けている。
殺らなきゃこっちが殺られちゃんから、一秒でも手加減したらオレの負け。
それってつまり、オレが死んちゃう。
アイツは……ユウシャはもうオレを殺すつもりであそこに立っているんだ。あれはただの試合ではなくなった、今はルールがある殺し合いだ。
それに、ミツルがソウジに送った茶色い手縄がつけてるとしても、ユウシャは本物のソウジかどうかオレには判斷できない。
可能性として、偽物か、或いは誰かに操っているか、これしか思い浮かばない。
ダメだッ!これ以上考えてると、また昨日みたいに躊躇してトドメを刺すことができない。
はぁ……まだ時間があるから、とりあえず……暫く馬になろう。
虚空から白い馬のお面を取り出して、スッと迷いなくお面を被った。
妙に落ち着けた……あれ?オレ、馬になるのがもう慣れてない!?もしかしてあと少しで馬から蟹に進化できるの!?
でいうか蟹より、弓使いの半人半馬のほうが良いんだよ。だって、まだ半分は馬でしょう!
初日はあんなに人が多くて混んでいて騒がしい休憩室なのに、こうして最終日になったらオレひとりしか居ないか。
「あら、そちらに座ってるのは先日、西エリアで会った白いお馬さんではないですか?」
「フシー?ヒィいいいィィイフンスカッ!(ん?誰だお前は!)」
と言いたいが、オレに声をかけたのは見覚えがある白い少女だ。
いや、白い少女と言っても、いつも白いものを見てすぐくっつけて匂いを嗅ぐとか味見するとか、あのド変態のヴァシリーサのことではない。まったくの別人を言っていますぅ!
確か……闘技大会の二日目、リウスたちと西エリアのフリマーでエレメンタルプリズムを漁っている時、大量な騎士とユウシャに保護されてる真っ白の女。
フラグティオス第一王女の……ヴェノムだっけ?しかもご丁寧に護衛を四人もついてる。
でいうか、白いお馬さんって……同じ馬だけど、あの時あんたが会ったのは別人つーか、まったくの別馬だよ!?
「今日は愉快な仲間たちと一緒にいるじゃないですか。それはちょっと残念です、またあの白い彼と会いたいですわよ。」
「ヒィフシー?ヒィイフンフシーッ?(白い彼?銀色い彼と間違ったじゃないの?)」
「それにしても、三年ぶりとはいえ、白い好きのあなたの趣味も相変わらずですわね。」
あれ?ヴァシリーサって、フラグティオスのお姫様とは知り合いなのか?
その風に見えないですけど、あん時は一言も会話してなかったよ。
まぁ、あっちが勝手にペラペラと喋ってるから、暫く黙っておこう。
「白い彼はなかなかいいものですわよ、彼がどんな色に染められるのが、楽しみにして仕方がありませんわ。できれば、私が自ら染めてあげたいですわ。あぁ~ちょっと考えただけで、私、ゾクゾクしますわ。」
「ひぃいいいいいいいいいぃぃ――ッ!!フシーッ!フシィィいいーッ!!(はんぎゃあああぁああ――ッ!!変態だ!二人目の変態だあああぁああ!!)」
「あっ、そろそろ決勝戦が始まりますわ。私はこれで失礼しますわ。帰りたくないのを知っていますが、偶には帰ってきてわね、ヴィシリア。あと、いつか白い彼を紹介してくれね。」
い、行っちゃったか……バレなくてよかった……
つーか!ヴィシリアって誰だよ!まったく無関係で知らない人の名前じゃん!
はぁ……正直にいうと、なんの茶番?
とりあえず、時間だ。ユウシャを蹴り飛ばそう。
3
もう、司会者の紹介なんでどうでもよくなったので、飛ばす。
決勝が始まって三秒も経っていないのに、白き暴れ馬と化したオレは素早く氷柱(ナイフ付き)を撃ちだした同時に、リングの地面を蹴って突っ走る。
一直線に飛んだ氷柱は当たり前のようにユウシャに無言で躱したが、まぁ最初からそう狙ってるんだ。魔粒子の噴出をコントロールして、下から噴出して進む方向を変えて、二つの方向からユウシャを挟み撃ちにする。
だけど、今日のユウシャはすごく可怪しい。いや、昨日も可怪しいけどさぁ、今日はより可怪しく見えるんだ。妙に黒い柄がついてる銀色の鎧及びヘルメットを装着してる、しかもはじめからロングソードを二本使ってるから、言わば最初からクライマックスってやつかい!
睡眠不足か、或いは目の錯覚か、なんか不気味な形で黒いオーラがユウシャの後ろから放っている。
スッと横に行って、猪突猛進してるオレを躱して後ろから蹴ってきた。それを食らってちょっとバランスしたけど……うわぁ!氷柱がこっちに向かって飛んでくるぅぅぅうう!ユウシャのヤツもオレの隙を狙ってロングソードで斬ってくるし!
とりあえず、飛んできた氷柱を溶かして、飛び出てきたナイフを受け取ったあと、低い体勢で振り落としてきたロングソードを受け止める。
ちょっ、重い!昨日より力が増えてんじゃん!もう持たないから、力尽きで左側へ斬撃をずらした……ひぃぃ!!リングが割った!必殺技パート2かい!?
それにしても、面倒くさいな……元々鎧とヘルメットは滅多に遭ったことないし!やり方が分かんないよ!とりあえず、隙間を狙ってナイフで刺すか?
と、服の中からもう一本ナイフを取り出して、最初の一本を逆手持ちにしてから体勢を整う。
腰を下ろしてダッシュでユウシャに近づいて、左手で普通に持ってるナイフで刺したが、ユウシャのガントレットに刺す軌道をずらされた。
甘い!オレの攻撃はまだ終わってない!
刺すために伸ばした左手の動きを変えて、無理やりに横斬りにしていたけど攻撃するためじゃなくて、オレ自身を動かすためだ。横斬りの動きと左足を軸としたことによって、左側からユウシャの後に回して、右手で逆手持ちしてるナイフでヘルメットの隙間に狙って刺す。
だけどギンっと弾かれた、回りすぎてちょっと狙いに外したから。ちッ、肝心な時だけしくじったとは、情けないんだなオレ!
『決勝戦が始まって五分も経っていないのに、勇者選手とペガサス選手はもう激しい攻防戦が始まりました。だけれど、今は勇者選手のほうが優勢が持ってるように見えます!』
ご説明どうもう、馬になってるからまともに話せないからな。
さぁってと、どうしよう……時間稼ぎはしたいだが、めっちゃ昨日について復讐したいよな。
よっし、二十五分内で鎧とヘルメットの保護から傷つけよう。……あれ?オレに切り落とされた腕が治ってる、魔術や魔法で治したのか?
速度、反応力、力などは昨日と大違い、まるで別人になった、或いは短時間内で修練でもしたのか!?いや、それはないわ。
昨日は本気じゃない、としか思いつかないや。
手持ちの二本のナイフを氷柱のように凍らせて撃ちだしたあと、オレは「Z」の字の形で奔る。ユウシャは黙ってオレに近づくことを許してないように、右のガントレットから魔術陣を展開し、白いホーミング弾を撃ってきた。
速度が速いので、偶に避けられないホーミング弾が襲いに来たら、ナイフを投げ出して防いたけど、まさかの爆発だとは。
距離が足りたから、オレはナイフを持ち出して、再び刺しに行ったが、ユウシャが急にフンっと鼻で嘲笑った。まるで「また同じ攻撃をしたの?頭悪いぃなこのバカめ!」を言ってるみたい。
確かに同じ攻撃だ。けれど、半分しかないんだ!
後ろに回したあと、オレが再び隙間を狙ってナイフで刺してくると思って、剣を持って頭の上に構えてるけど。かかったなこのバカめッ!
ナイフで刺すじゃなくて、手持ちのナイフスッと空に投げた同時に、素早くしゃがんで右足でユウシャの両足に狙って薙ぎ払う。そしたらユウシャが予想通り転んできた。オレもすぐ構って飛び膝蹴りで追撃する、同時に重力に吸引されて落ちてくるナイフを凍らせてより重い氷柱に変えて、また両方からユウシャに襲いかかる。
ギクッ!嫌な予感がいきなり!
『おっと!バランスが崩したはずの勇者選手が、空中で身体を回転させ、それでペガサス選手に攻撃した。だけれど、ペガサス選手も自分の勘のおかけで、突然の飛び膝蹴りをやめて後退して攻撃を躱しました。』
あぶねー!フッと足下から魔粒子を噴出して後退したのは正解だった。じゃないとオレの足が切り落とされちゃったよ。
チッ!ガードが堅いな!ガードが堅い男なんで攻めたくないよ!
でいうか、始まって十五分も経っていないのに、少しだけどオレはもうハァハァしてる……試合が始まってからこっちはずっと動いているから、このままじゃ先に体力が切れてやられちゃう。
んじゃ、そろそろ防具を出してやろう。故に、左手に魔粒子を溜め込み始めた。
「………………させ……るか…………」
と、オレが止まって大技の準備をしてるように見えるから、それを阻止するため、ユウシャのやつは今日初めて攻めてきた。
や、やばい!特撮ヒーローの変身みたいに無敵時間がないから、こんな時アイツに攻撃されたら、絶対に負けちゃう!
ぷぅッ!なん~っつてね!
「フシーンヒっぃィィィイイイ――ッ!!(この時を待っていたさぁ――ッ!!)」
「………………そんな…………バカな!?」
『汚い!さすがにこれはすごく汚いだと思います!近づいてきた勇者選手に、まさか左手に隠しておいた砂で目に攻撃するとは、この人は外道だ!!』
砂ではなくて粉々になった氷だつーの!ダイヤモンドダストと言っても構わないわよ。
オレは、変身してるヒーローに最後までやらせて、大人しく待つような人に見えるのか?
んなわけねーだろう!無敵時間さえなかったら、あれはどう見ても絶好の攻撃チャンスじゃん!もしユウシャのやつはまじでオレを殺したかったら、絶対にオレと同じ考えをするんだ。
まぁ、一か八かだけどね。
こうして、ヘルメットの隙間に狙ってダイヤモンドダストで目潰ししたあと、一気に接近して左手で殴り飛ばした。
もちろん、ヘルメット狙えってね。我ながら汚いだと思うよ、本当にーあっ、手が痺れちゃった……硬いなぁ!
予想外の一撃を受けたユウシャは頭を振りながら立ち上がった。そしたら、ヘルメットが左右二つに割った。
あの……ユウシャさん、大丈夫っすか?目が……めっちゃ充血してるぞ。
まさか徹夜した?それとも何日も寝てなかったの?
「ぐぬぬぬぅぅぬぬうぅ………………ぐわがあああぁあぁあああああああ――!!」
うるさい――ッ!!いきなり雑音を出すな!こんな大叫びして喉が痛くないの!?
やべッ!こっち見に来ちゃった。ん?武器を下ろしたってどういうこと?まさかオラオラしに来たいの!?でいうか、目が先より赤くない、黒に近い赤色になっちゃったですけど!!
しかも一体なにがあったの!?鎧の形が変えちゃったよ!禍々しく黒い柄が増えたぞ!指辺りの部分も鋭くなった!
片言でもいいから、ちょっと返事してくれ――ギャアアーーッ!!こっち来んな――!!
サマースクール、忙しい……
物理的に死んじゃう、宿題のせいで。
7月の内にもう一話更新できるといいですよね……
決勝戦の後半戦は次回のお楽しみに。
そして、予定通り、決勝戦は中止されます。だけど、別の形で。
次回更新日は7月のとある木曜あるいは金曜日かも?




