闘技大会、二日目③ 再会
1
準決勝は勝ち抜き戦でやるらしいぞ。
バドルロワイヤルだったら喜んでやるけどよ……勝ち抜き形式は正直にいうと超やりたくないっす!
だってさぁ~、バドルロワイヤルは一回しか戦わないだろ?でも勝ち抜き戦は三回戦わないと行けないんだ、オレにはそんな持久戦ができる体力が持ってない。
あああぁぁ……止めたいな……今すぐ白旗を揚げてもまだ間に合っているかな?
「落ち込む必要ありません、ディケイなら絶対に優勝できますよ!」
「そうそう、ディケイさんはお兄様を勝った人ですから、もっと自信を持ってください!でいうか、お兄様の仇を取るために、どうか勝ち続けてください。ディケイさんを倒していいのはお兄様ですから。もしまた負けたら、お兄様の名誉のために……」
「リウスの名誉のために一体なにをするつもりなのヴェルちゃん!?」
「危ないことだけはしないでね、ヴェル。」
フィフスラウンドが終わって、次の日について説明が完成した直後、リウス兄妹と一緒に西エリアで買い物に行った。
なんの目標もない、ただぐだぐだ歩いて、好きな店で食べ物や飲み物を買う。
いいな……余裕な金を持ってるっていいな……羨ましいな……
貧乏なオレはただ見るしかできない……
やっぱ二位の賞金が欲しいだよ……誰であろうと、賞金がオレの物になることを邪魔するやつは、全員オレが蹴り飛ばしてやるよ!
「で、リウスの槍について、詳しく説明しろと言ったじゃないか?なぜ西エリアに来たの?」
「先思いつきました、複合魔装をよく知ってる人がいつも西エリアに居るって。僕が説明するより、彼女がする方がもっと分かりやすいだと思います。」
「へぇ~どんなやつっすか?しかも彼女って、女の子か?」
「それは……少し変な人かもしれない。むしろ、あるものをすごく熱中してるんです。」
「だからリフィックスは変人しかないの!?」
「僕たちは変人じゃありませんよ?」
いやいや、変人は変人にひかれあるという言葉があるでしょう。認めたくないが、オレも変人の一員だ。なので、オレと知り合ったリウス兄妹も変人の一員だ!まぁ、実際もそうですよね~
妹を溺愛してる兄と、兄に特別な感情を持ってる(かも?)妹って、すげー変だぜ。
色んな店で出来た商店街らしい街道を通ったあと、西エリアの真ん中にあるフリーマーケットの大軍、そう、大軍と言っても違和感がない。あっちこっち布一枚で店を開いてる人々があるんだ。
うっひょ~、素材だ~!見たことがない素材がたくさんある!しかも魔氷結晶も売ってるじゃないか!だけど、オレが持ってる残り二塊の魔氷結晶と比べて、色がちょっと薄くないか!?
淡い紫色じゃなくて、ちょっと光ってる氷色でどういうこと?
まさかクオリティーが悪い不良品か!?なのはありえないよね~あれこそ本物の魔氷結晶かな?
あれ?色違いの魔氷結晶も売ってる茜色のもあるし、ココア色のもあるし、エメラルドと水色も、系統だけでたくさんあります。よく見たら赤、青、緑、黄、四色系統の魔氷結晶……いや、氷じゃないから魔結晶かな?魔結晶が買える。
その中に、値段が特に高い魔結晶は銀色のやつと淡黒のやつだな。どっちも金貨50枚、即ち白金貨5枚の値段で売ってるって……高ッ!高すぎるッ!!
でも欲しい!!あの時クモを倒したあとで得た分解スキルで色んな魔結晶を分解したら、なにか出てくるんだろう?
「エレプリの原石じゃないですか?今日は珍しくここで売ってるですね。」
「おぉ~分かってるね兄ちゃん。最近手に入れた魔結晶だから、買うのは今のうちだぞ。」
「えれぷり?なにそれ、後ろにキュアがついてるはずじゃない?」
毎週日曜の朝に放送しそうな名前だね、エレ○ュアとか、東映さんまじやるかもしれないね。
でいうか、魔結晶は原石って、どういうことなの?魔装化してるただの美しい水晶じゃないの?
「エレプリはエレメンタルプリズムの略称ですよ、変な番組名ではありません。」
オレのネタが拾われた!?なんでリウスは番組だと知ってるの?
そういえば……闘技場の休憩室でテレビやモニターらしい黒い箱があるんだっけ?あれってまじでテレビなの!?
だから技術を間違った方向へ発展するな先駆者たち!!
「お?白髮の兄ちゃんはエレプリと魔結晶のことをはじめて知ってるのか?」
「魔氷結晶なら知ってるけど、エレメンタルプリズムに興味持ってるな。」
「じゃあもっと詳しく知りたいか?」
「うん!エレプリすげー面白いからな。」
ん?屋台のおっさんが手を開いて伸ばしてきた。なにか欲しいの?
そんなことはいいから、早くエレプリのことを教えろコラァ!
「ちょっとおっさん、犬と遊びたかったら、リフィックス外の荒野には犬の魔物がたくさんあるぜ。」
「ちげーよ!金だよ金!オイラは商人だぜ、ただで人に大事な情報を教えるアホじゃねえ!しかも、兄ちゃんはスパイかどうかも分かってないからなおさらだ!だからよー、エレプリのことを知りたいなら、情報料を払え!金貨一枚だッ!」
よーし、分かった、払おうじゃないか。エレプリの情報と、あんたの命と一緒に買い取ってやろう!
金貨一枚って買うわけねえだろう!銅貨一枚なら払うけど。
「行きましょう、ディケイ。そんなのわざわざ金を払う必要がありません。」
「いや、待ってくれ。これって……よく見たら、偽物じゃないか?ただ蛍光塗料を塗られたガラス製品じゃねえ?でいうか、よくも偽物を売ってるねおっさんよ。」
「ぎぐッ!?」
え?なぜおっさんが売ってる魔結晶が偽物だって分かってる?それや見えるだもん、魔粒子が上に付着してないよ。
今すぐ本物を取り出して、あいつの顔面に向けて投げたいな。魔氷結晶ミサイルの硬さを味わせてあげたい。
さぁ~ってと、どうしよかね~ひとまず脅してやろうぜ。いや、脅すだけじゃ済まないな、このおっさんから全部の金をカツアゲよぜ。ヘッヘッヘぇッ!
「おっさんよ、交渉を始めようじゃないか?偽物を売ってることをバレたくないなら、ちょっとこっちに来て仲良く話しましょうか。」
「ディケイさんがゲス顔になった!?」
「なにをするつもりですかディケイ!?」
危ないことはしないよ。ただあいつに教えたいだけさぁ、商人としてのマナーをなぁ。
2
「いいことをしたあとって、気持ちいいよな~おかけていい物も手に入れたし。」
今オレの手に持っているのは銀色のガラス結晶……もとい銀色の魔結晶。え?ガラスの塊じゃないの?いや~ぁ、よく見たら、一つだけ、淡い紫色の光が輝いてるんだ、それがこの銀色の塊。
ちょっとあのおっさんにをオレが握った弱みで説教たら、お詫びとしてあいつを知っているエレプリに関する情報をすべて教えてくれたさぁ。そして、おまけに一つだけ好きな物を店から取ってもいいって。だから、じっくりと目で見たあと、銀色のやつを選んだ。
だってこれは偽物の中に混ざった本物だもん、貰わないと損だし。
おっさんの話をまとめると、魔結晶を職人に磨いて加工したあと、はじめてエレメンタルプリズムとして使えるようになった。
しかも魔結晶の色によって属性も違うらしい。赤系統は火属性で、青系統は水属性で、緑系統は風属性で、黄系統は土属性みたい。おまけに白系統はオレが使えない光属性で、黒系統は闇属性と、見た目は完全なる無色透明、「目」で見ると淡い紫しかないのは無属性の魔結晶。
確かエレプリは最新バージョンの魔導器や魔導兵装が持ってるスロットに装填して、色んなことができるみたいね。
例えば、闘技場の休憩室にある黒い箱に、シャルトリューズのエレプリを装填してたら、電気がつけたみたいに動き始めるんだ。でいうか、シャルトリューズのエレプリは風魔術や風魔法の中では、電気で人をビリビリにさせることができる。
要するに、色の違いにより、エレプリができることも違うだぜ。
大自然の神秘が全部そのちっちゃいプリズムの中で具現化してる。
それに、はじめて加工した魔結晶、即ちエレプリを日常生活に投入するアイデアを出したのはどこの王様ではなく、王様より偉い先代魔王だ。その名も魔王ウィックというんらしい。
さらに魔王ウィックのアイデアを実現したのは、異端として祖国から追い出されて、代わりに魔王ウィックの配下となった天才錬金術師!名前は知らん、おっさんも知らないから。
以前あの白い空間で会った黒いやつもウィックという名前だっけ?先代魔王の名前と被ったけど……まさかぁ~偶々名前が同じだよきっと。
田中太郎もたくさんあるでしょう?あれと同じことだよ~ハッハッハ!
「ディケイ、そのガラス結晶をどうするつもりですか?」
「とりあえず、収めていこう。使い道はまだ分かんないしね。」
「ディケイさん……本当に悪者みたいですね。あるいはあのおじさんより悪徳商人らしい。」
「それに関してオレは反論するつもりがない。」
オレ職人じゃないから、簡単にこの光の魔結晶を加工できないんだ……でもお金を払いたくないし……どうすればいいんだろう?
あとで考えよ、時間たくさんあるしね。
「あ!やっと待ち合わせ場所に着きました。あの娘です!エレプリを装填できる武器を詳しく知ってる、僕のクラスメイトです!」
「どれどれ~よく見えないな……だれ?………………げッ!!」
なにかアクセサリを売ってる屋台の前に、一人の女の子がとあるアクセサリじっと見つめている。
金色のふわふわセミショートで、純粋な眼差しで白い指輪やネックレスを見て、その独特なデザインをしてたアクセサリに見惚れてる。フリルいっぱいで、「白」という色を強調してるワンピースを着ていて、通りかかた男たちの視線を一点に集中した女神のような可愛さと綺麗さを持ってる。
やばい……オレの直感がこの娘はやばいと大声で叫んでいる……でいうかどっかで見たことあるしその顔オオォォォッ!!
まだオレのことを気づいてない、今のうちにこっそり逃げよう……
「どうしましたディケイ?待ち合わせ場所は逆方向にあるアクセサリ屋ですよ。」
「もしかしてディケイさん……緊張していますか?子供っぽい一面もありますね。」
緊張してるじゃなくて怯えてるんだオレは……
天敵が目の前にいる時、恐怖という感情が出てきて、感情の大部分を占領するんだ……オレは今まさしくこの状況!恐怖のせいで頭が冷静できない……
ヒイイぃイぃいイイ――ッ!いつの間にこっちを見ているぞあの娘!!
やばい……あれは獣が獲物を発見した時の目だ!うさぎたちよりこわい!!
「また会えましたわ~ディケイくぅーん!!」
「いいぃぃいいいいやややややああああああ――ッ!!こっちに来んなあああぁぁああああ――ッ!!」
たっだ三秒、逃げようとして足を踏み出したオレが、一瞬で白いものが大好きな娘――ヴァシリーサに掴まれちゃった。
おのれ!オレより先に身体強化の魔術を使い出したな!!
どんだけ執念深いんだこいつはッ!?
でいうかディケイくんってどういうこと!?前はさん付けじゃないの!?
「たーっ、たずけて、リウスぅぅううう――ぅ!!」
「いいなぁ~前より柔らかくて、白々成分がまた上がったではないか~♪やっぱり本物の白い髪は最高ですね、どこかの偽物の銀髪と違ってね。」
「あっちゃ……またいつものように暴走しちゃいましたか、相変わらずですなヴィシ――」
「リウスくん、もしかしてあなたも私の名前を忘れてましたか?ヴァシリーサですよぉ?」
「えっと、すみませんでした、ヴァシリーサ。知り合いとよく似てた名前なので、ついうっかり彼女の名前が口から出した。」
そんなこといいから、早く助けてくれ!!
やめろおおぉぉ――ッ!匂いを嗅ぐな!それと味見すんな!痛ッ!こっそりオレの髪を引っ張るな、サンプルも取るな!もおおおぉぉ勘弁してくださいぃいええぃ――ッ!!
「ヴィシーじゃなくて、ヴァシリーサは暴走しすぎないですか?」
「ヴィシー、ではなくて、ヴァシリーサ先輩、まるで別人になったようです……」
「お前ら――ッ!!オレのことを忘れんな、助けてえええぇ――ッ」
3
「ヒィいイイー、フシーヒィイ!!」
「これ以上暴走させないため、オレはこのお面を被るように決めた!とディケイはこう言いました。」
「なぜお兄様はディケイさんの言ったことが分かることができますの!?」
「ええぇ――ッ!そんなー!酷いですよディケイさん!私から白々成分を奪わないで!」
あ、呼び方が最初に会った頃に戻った。
ヴァシリーサから自分の身を……主に髪を守るために、闘技場に居ないのにオレはあえて白馬のお面を被っていた。でも喋り出した言葉はお面の声変わりの機能によりすべて馬の鳴き声のように聞こえる。それは超困る……だってなにもヴァシリーサに伝えないから。
悩んでいる時ピンっと思い出したのは、リングでなぜかリウスは馬の鳴き声を理解することができることだ。つうわけで、翻訳の仕事は全部リウスに頼んだ。
それにしても、しつこいなこの娘!隙が出たら躊躇なくオレの馬面を取り外すつもりだ。今もお面に向かって伸ばしてきた手をはたき落としたばかり、防御するだけって大変だな……
「白髮は素晴らしいけど、この白馬のお面もなかなかいい白々成分を持ってるですな~」
「ヒィイイイイ――!フシーイイぃぃいいー!?」
「しまった、逆に興味を引き上げちゃった。と言いました。」
「感情がない棒読みですね……」
オレたちは今フリーマーケットの尽きに向かって進んでいる。
ヴァシリーサの情報によると、ある武器商人は時々フリーマーケットに現れ、珍しい武器を売るんって、中にはリウスの槍みたいにエレプリを装填できる武器も売ってるらしい。
でもね、不安しかないの……
道案内はただじゃないんだ……欲しい物を言い出す前に、なにかであいつの口を止めないと……
「ね~ねぇ~ディケイさん~」
「このお面を暫く貸してあげるから、ちょっと馬になってこい。オレの髪を遊ぶな!」
「あ、取り外すのが早すぎません?」
「面倒ですからね、馬の鳴き声しか出さないのは。お兄様の棒読みもつまらないですし。」
「ひどい!ヴェルちゃんひどすぎ!」
「本当のことだから、一切の感情もない棒読みって面白くないんだよ……そうだろ~ヴェル?」
「ディケイさんに賛成です。」
「白馬のお面だ~わい~」
「おい!匂いを嗅ぐな!これは借り物だから、変な匂いや液体が残っていたかもしれないだろ!?」
正直……変態ジジィとこのマスクや覆面は、人に借りだしたあと、ちゃんと消毒したのかな?
うぅ……やめておこう、気持ち悪くなるから、細かく考えないようにしよ……
消毒済みだと信じていこう……
「そういえばリウスとヴァシリーサって、クラスメイトだっけ?」
「えっと…はい、確かにクラスメイトですが。」
「正確には、私とリウスくんは同じ授業を受けているクラスメイトです。私たちの学園では、一定な人数で一つ特定の部屋一日を過ごすクラスシステムがないです。」
「例えば、僕とヴァシリーサは毎週火曜日と木曜日の午後二時から三時まで、年齢がバラバラで互いのことをこれっぽっちも知らない生徒たちと一緒に光魔術の授業を受けるんです。だから僕たちはクラスメイトと言っても良いし、アカの他人と言っても良いんだ。」
「ディケイさんは学生じゃないですか?お兄様と同じ17歳なのに?」
「オレ……貧乏だからな……」
「もしディケイは興味があるなら、参観しに来てもいいですよ?」
「お兄様の言う通りです!一度でも参観して来たら、ディケイさんは好きになっちゃいますよきっと。」
「是非ッ!参観しに来てください、ディケイさん!絶対面白いですし、私もいつでも白々成分を補充できる。まさに一石二鳥です♪」
どこか一石二鳥だ!?鳥が二匹に当たらないよ!でいうか、面白く感じるのはお前しかないじゃん!
でも、大学と似たような教育システムか……ということは、嫌いな授業は好きに飛ばしてもいいでしょう!?
まじ最高じゃん!?暇があればこいつらが通っている学園に参観しに行こうぜ!
「今は無理だが、闘技大会が終わったあと、時間さえあれば、来るかもしれんぞ。」
「やった~ディケイさんが来るんだ~白々成分きたぁあ――ッ!!」
「興奮すんな!来るかもしれないんだ!絶対に来るって一度も言ってないからな!」
「案内は僕に任せて。」
「楽しみにしていますよ、ディケイさん♪」
はぁ……やることは増えた気がする……でいうか、そもそも減ったことがあるの?
リフィックスに来て、最初はなにをするつもりだろ?色んなことがあって、思い出せなくなった……
宿で安らぎとぐだぐだ生活を求めているのかな?
「着きました……あれ?先客が居ますよ………………ッ!?」
「ん?どうしたヴァシリーサ、急にお面を被るって?」
「ヒィィい、フシーフシーヒィイ。」
「急に馬になってみたいだけ、どうか気にしないでください。と、ヴァシリーサが言いましたぞ?」
「ヴァシリーサ先輩の変な行動はすでに慣れてました……」
4
見えないね……
人のゴミ、もとい人の群れが邪魔すぎて、ヴァシリーサが言った武器屋の屋台がまったく見えん……
でいうか、こんな時に金属感バチバチな銀色の全身鎧を纏ってるやつマジあるのか!暑くないの、本当に前が見えるの?
ひとりならまだ良いんけど、どう見ても十人以上そこに立っているよね!むしろ道を塞がないでこの全身鎧を纏ってるブスたちがッ!!
腰の左側に剣を携えてるから、騎士かしら?
顔はとんでもない不細工だから、わざとヘルメットを被って顔を隠したな!そうすると、ヘルメットを取り外さないと、イケメンか不細工かすら分からなくなった。どっちも可能性が持っている、なにこのバカバカしいシュレーディンガーの顔……
暫くこの屋台に接近できないのようだし、もっと奥にある屋台に行こうか。
ちょっと……オレの後ろに隠れるほど怖いの?どさくさに紛れてオレの髪を遊ぶつもりじゃないよな?ハァハァしたいじゃないよな!?
「なにするつもりだ!此処は通行禁止だぞ!分かったらとっとと帰れッ!」
うわ~態度すっげー悪い……それでも騎士かよ……
いい大人はねぇ、強行突破なんかしないよ、言葉だけで充分に道を開くことができる。オレはまだ大人じゃないけどね。
「あの~すいません、僕たちはこの奥にある薬屋の屋台に用事がありますから、ちょっとぐらい、道をあけてくれませんか?」
「貴様ッ!聞こえないか?ここは通行禁止だと言ったんだろ!」
「いや、だからね、僕たちはただこの奥に行きたいだけです。本当に急いでいるから、頼む、道をあけてください!」
「同じことを、この私に二度と言わせるな!さっさとこっから失せろ!下民が!」
「………………!!!」
「ちょっ、落ち着きなさいディケイ、またあとでもいいから、ここは大人らしく我慢しよ。」
「放せッ!オレはまだ17歳で、大人じゃねえよ!だから、あいつらに子供の強さを教えてあげるよ!初代の馬神みたいに正面突破は上等だコラァ!!」
「なにバカなこと言ってるですかディケイさん!16歳はになった時、もう立派な大人ですよ!」
オレの知ったことか!大人だろか子供だろか、下っ端に舐められたら、これだけじゃすまねえだ。
「わかった……冷静になるから、とりあえず手を放してリウス。手がすげー痛い。」
「お兄様、ディケイさんも大人です。彼を信じましょう。」
「自由になったな。ハッ、変通もできなくて、だからお前らはいつまでも下っ端だよ!下っ端は下っ端らしく、黙って道をあげろコラー!猫を被るなんかもううんざりだ!」
いつもオレの頭の上に寝てる黒猫はいなくなったから、ちょっとなにか足りないだな……
寂しいよ、早く帰ってきてネコ!
「ほら……絶対にこうなるから、手放すことができないんですよ、ヴェル。」
「はい、ディケイさんの残念な性格がよく分かりました……」
「もう言葉を使うのが飽きたから、下っ端はさっさと退け!」
そういえば、お前らは騎士だよな……だったら、お金ぐらい、その鎧のどこかで隠してるよね?ちょっと拳で殴って足で蹴ってナイフで刺さったら、ヤミーやグリードみたいにお金が落ちてくるよな?
コアなメダルをよこせコラァ――ッ!!
「一瞬で氷柱を作り出した、こいつは敵だ!」
「魔人族め、いきなり襲ってくるな!」
「構え!姫を守れッ!!」
姫?襲撃?そんなもんじゃねえよ。
オレは道を塞げているお前らに気に入らないだけだ、もっと早く道をあけたらよかったのにな!
「ほら~どうした、下っ端騎士たちよ、喧嘩を売ってきて、拳を振ってくる勇気もないのか?やっぱり腰抜けだば。」
「やめなさい、アンタたち!みっともないわね!」
「す、すみませんでした……姫ッ!我々がこんなにも簡単にあいつの挑発に乗ったとは、情けない……」
下っ端騎士たちが急に武器を収めて、急に左右に分かれて、群れの中心にいる雰囲気が違う二人に道を譲ってあげた。
うわ……偉い者かな?先、姫とか言ったし、どっかの国の姫なのかな?
前に歩いているのは女の子。髪の長さは胸辺りに届いて、手で掴まないほどサラサラで、陽の光を浴びるとキラキラ輝いてる金色のロングストレート、その碧眼の中にオレの姿が映っているが、なんとなく彼女が見つめているのはオレじゃない気がする。でいうかオレにまったく興味が持ってない……
基調は白だけど、なぜか周りに黒いフリルで飾っている、ちょっと変わったパーティードレスを着ているとモノクロのヒールを履いてる。とにかく、後ろに隠れてる変態お嬢様より高級感が溢れている。
貴族より権力が高いやつって、王家の関係者しかないよね……
次に姫様っぽい女の後についてるのは、体型から見ると……男か。しかもイケメンって……女たらしみたいに残念なイケメンかな?
リウスの銀髪と違って、あいつは黒髪でナチュラルスレーブ。茶色だけど、あいつの目から光が完全にいなくなった……感情さえなくなって、まるで人の形にしている操り人形みたい。身長は多分174センチだと思う。
戦場にいるパラディンらしい格好をしているが、唯一違うのは銀色の軽装鎧からものすごく存在感を持って、妙に不気味で黒い柄がついてる。マントもなぜか姫っぽい娘の服と同じく白の中に黒が混ざっている。
最後に、頸につけてるのはネックレスだ。しかもそのネックレス、オレには見覚えがあるぞ……
あれは……あの星と月がくっついているネックレスは……ソウジがミツルにもらった誕生日プレゼントじゃないか!?
でいうか、その顔、灰になっても覚えてるぞ、ソウジイイぃイイ――ッ!!
「……なにをしてる?」
「いや……挨拶代わりに、一蹴りってね。まさかお前が防いでくるとは、びっくりしたよ、ソウジ。」
姫っぽい娘に向かってペガサスキックを使い出したが、瞬く前に出たソウジに、その黒い柄がついてる銀色のガントレットで防御された。
思った通り、自動的に前に出てきたな。
はじめて会った頃から変わってないねお前って、ヒーローと思って不良に絡まれたミツルを助けようと思って、逆にボコボコされた。でもあんたは諦めなくて、最後まで立ち上がってた。ひどい顔だけど。
やべっ、足が攣った……準備運動がしてないから……
「ほら~どうした、ソウジ?反撃してこいよ、いつ腰抜けになったの?」
「そう……じぃ……だれの名前ですか?それに、あなたのことを知っていません。」
「そうですよ、白い君。彼の名前はシディアン、我がフラグティオスの誇り高く勇者ですわよ。」
「勇者って、正直にいうとあんたに相応しくないんだよ!しかもシディアンって、なにその変な名前?だから、申し訳ないが、オレの友達を返してくれ、パンダの嬢ちゃん。」
「ぱん……パンダですって!このワタクシをあんな凶暴なモンスターと一緒にするとは、無礼ですわよあなたッ!ワタクシはフラグティオスの第一王女、ヴェノム=ライアーですわよ、しっかりその白い頭の中に思いつきなさい!」
うん、覚えたくないし、頭のメモリもこいつのフルネームのせいで無駄使いさせたくないから、パンダでいいや。ぴったりで覚えやすい。
それにしても、フラグティオスの第一王女って、また面倒くさそうなヤツに絡まれた……
「姫様、ここは我々に任せてください!あなたとシディアん様が出る必要がありません。」
「だからよぉ……下っ端は引っ込んでいろって、先からずっと言ったじゃん……邪魔すんな!」
腹立つな……オレ今、すげーイライラしてるよな……
なにこのドス黒い気持ち?セッちゃんが殺されたと思った時と同じだ……
心の底から湧き出したなにかだ……あの時は悲しみと自分の無力さに対する怒りだけど。
今はちょっと違う……黒の中に赤が混ざっている……ただの憤怒みたい。
「キミたちってさぁ~、もしボクを邪魔したいんなら、殺すよ?」
「な、なに!?黒に染まれた氷柱だと!?やっぱりこの人は危険です、早く姫様を守れ!」
「いや、その必要がありません。シディアンひとりだけで十分ですわよ。」
ああぁ……もう……面倒くさいから、ソウジを気絶させて、どっかへ連れて行こう。
それに、一緒にいるはずのミツルがソウジの側にいないとは、気になる……
あのパンダ嬢ちゃん、なにかを知ってるみたい……あいつも一緒に連れて行こうか……
「勇者シディアン、あなたに任せましたわよ。」
「……仰せのままに、ヴェノム姫様。」
「勇者呼ばわりされて、オレのことを舐めているのか!喧嘩だったら、オレは一度もお前に負けたことがないんだよ、ソウジ――ッ!!」
身体が一瞬ちょっと乗っ取られた感じだが、これはオレの問題だ、誰にも邪魔させない!
オレのターン――ッ!!じゃなくて、手始めにベストの中からナイフを二本取り出して、投げる構えをしていたが……
「遅い……遅いすぎです……口だけ強い、ハッタリが得意なタイプですか……」
「後から攻めてくるのがすでに読めた!」
「……それに、頭が単純……」
「背中からアタックしにくるのはフェイントか!」
ソウジはすぐ体勢を整って、しゃがんだあと足でオレを薙ぎ払った。突然すぎて、手で地面を支えて体勢を直すこともできず、地面に倒れた。
立ち上げるのはもう遅い、ソウジが近づく時を狙って、盾を展開しよ。
「これ……借りますよ。」
怯えてる騎士の近くに移動して、強引に剣を借りたあと、無言で剣を振り下ろしてきた。
待てました!今こそ、展開しよ、魔氷の盾!
「甘い、その首、もらった……」
「ちょっ!いきなり手を変えるなんで、犯則だよ!」
「撃ち落とせ、エレメランゼ!!」
反撃を諦めて、素直に次の攻撃を企んでいる時、リウスが急に乱入して、槍でソウジの剣をギンと弾き飛ばした。
余計なことするな、リウス!オレはまだ切り札があるんだよ!
でも……助けてくれてサンキューだな……
どうやらオレはいつもらしくない……わけわからん怒りに自分の冷静さが奪われて、らしくない熱血系になっちゃった……
「その尋常じゃない速さ、浴衣を着てるツカサではないのようですね。だとしたら、君はツカサと同じく速攻で有名になった勇者選手ですよね。場外の私闘は禁止されていますよ、運営に知られたら、出場資格が無くなります。それでも関係ないですか?」
「それは困りますわ……行きましょう、シディアンさん。白いあなた、今回は見逃してあげますわ。次にまた会ったら、容赦しませんわよ?」
お~ほほほほほほほ――ッ!!と甲高い声で笑いながら、パンダ姫がソウジと他のやつを率いて、勝者みたいに現場から去った。
負けた……悔しいけど負けた……
そうだな、次会ったら、オレも手加減しないんだ。
友だちだからこそ、全力でお前を正気に戻せてやる!
拳と、オレらしくて卑劣な手で!
同日の夜、オレは一日ぶりに食べ物を持ってミス姉妹と他の奴隷に会いに行った。
そしてどやされちゃった……
もう少しで決勝戦だと報告しに来たのに……なんで拗ねてるの!?
あんたたちはバカだーッ!!
と、黙って脱出計画の準備を進めているオレもバカだな……
お前ら!食べ過ぎだろ!あああぁぁ――ッ!!オレの分が残ってない!オレの金で買ったのに……
仕事しすぎて、死ぬ……死んちゃう……
これで、二日目もやっと終わりました。
次回からは三日目の勝ち抜き戦です。
三日目は合計4話があります。
最初の相手は、親バカです。
次は偽物で、そのあとは人形みたいな勇者。
最後は脱出計画の調整と、四日目への準備です。
楽しみにしてください。
追伸:月見イベント、楽しかった。
心臓をたくさんもぎとった。
エレシュちゃん早く実装したいけど、流石にバレンタインで実装するのは止めてくれませんか?




