34話
「誠、次は少し博打を打とう」
真琴の声はいつもより強かった。
教授の助言を胸に刻み、現状を確認した僕らは、
あえて一度だけの特別イベントを企画した。
──地元プロクラブの協力。
怪我で試合に出られない選手を招き、解説をしてもらう。
試合はいつものテレビ放映ではなく、クラブの会場に設置された定点カメラからのオンラインライブ。
その映像を店のディスプレイに映し出す。
「座席だけじゃなく立ち見も可能にしよう」
真琴が提案した。
「その代わり、食事はなし。ペットボトルだけに絞る」
入場料は2000円。
クラブのユニフォームを着て観戦するか、ファンクラブ会員なら500円割引。
さらに、試合後には選手のサイン会を設けた。
「これは博打だね」
僕はノートに書き込んだ。
──入場料2000円。
──サイン会付き。
──ユニフォーム着用・ファンクラブ割引。
イベント当日、店は熱気に包まれた。
ユニフォーム姿の観客が立ち並び、ディスプレイに映る試合を食い入るように見つめる。
怪我した選手の解説は臨場感に満ち、観客の歓声が店を揺らした。
「普段とは全然違うね」
学生が笑った。
「立ち見でぎゅうぎゅうだけど、これも楽しい!」
こでまりはディスプレイの前に座り、尻尾を揺らした。
その姿はまるで「博打も挑戦の一部」と告げているようだった。
イベントが終わる頃、選手のサイン会には長い列ができた。
観客の笑顔と熱気は、普段の自習室やカフェとはまるで違う。
真琴が深く息を吐いた。
「誠、これは一度きりの挑戦。でも、店の可能性を示せたね」
僕は頷いた。
──博打的イベントは、居場所の新しい一面を照らし出した。




