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33話
数字を確認した夜から、僕らは静かな改革を始めた。
壮大な夢を語るのではなく、日常を少しずつ整えること。
──それが居場所を守る唯一の道だった。
まずは自習室。
机の配置を見直し、照明を調整した。
「ここなら集中できる」
学生の声が聞こえ、僕は胸が温かくなった。
次にスポーツカフェ。
スクリーンの映像を鮮明にし、音響を整えた。
「試合が前より迫力ある!」
笑い声が広がり、店に熱気が戻った。
おにぎりも改善した。
梅と鮭を基本にしつつ、イベントの日だけ限定メニューを出す。
「普段は安心、特別な日は楽しみ」
母親たちの声がアンケートに並んだ。
こでまりは机の上に座り、学生のノートを覗き込んで尻尾を揺らした。
その姿はまるで「日常を積み重ねろ」と告げているようだった。
真琴が静かに言った。
「誠、挑戦は彩り。日常は基盤。
その両方があるから、この居場所は続けられるんだね」
僕は頷いた。
「数字は厳しい。でも、こうして小さな改善を積み重ねれば、
居場所は守れる。挑戦はその上にある」
──店は再び、日常の積み重ねを力に変えていた。




