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32話
教授の提案は嬉しかった。
スポンサー、行政の助成金、地域連携──夢のような言葉が並んだ。
僕と真琴は胸を躍らせた。
「もし実現すれば、もっと大きな挑戦ができる」
「店が街の拠点になるかもしれない」
だが、その夜、僕らはノートを開いた。
数字が並ぶ収支表を見つめる。
──売上は月120万円前後。
──人件費72万円。
──食材費36万円。
──光熱費5万円。
差し引き、黒字はわずか7万円。
真琴が静かに言った。
「誠、これが現実だね。
無理して壮大な構想を練っても、所詮は戯言だよ」
僕は深く息を吐いた。
「挑戦は続けたい。でも、数字を無視すれば居場所は壊れる。
夢を語る前に、現状を守ることが先だ」
こでまりが机の上に飛び乗り、収支表の上で丸くなった。
その姿はまるで「現実を見ろ」と告げているようだった。
教授の言葉は夢として心に残した。
でも今は、自習室とスポーツカフェを守ることが一番だった。
──夢と現実の距離を確認し、原点を守る決意を固めた夜だった。




