第47話 結婚式の準備をしましょう
酒盛りをした次の日、ルドルフさんとラズロさんは帰っていった。
「ラピス様。家事は大丈夫ですので、今からお風呂に入りましょう」
ルージュさんにキッパリと言われる。
外はまだ明るい。
え、こんな昼間からお風呂に?
お風呂は好きだからいいんだけど。
「さ、参りましょう」
いいんだけど、なんでルージュさんもついてくるのかな?
師匠はこちらを見ない。
絶対、理由を知ってるはずなのに。
「主様。邪魔はしないでくださいね。終わるまでは訪ねて来ないでください」
「わかってる」
ルージュさんに押されるように自分の部屋のお風呂場へ行く私。
服を脱ぐ間も、ルージュさんはすぐそばにいる。
ちなみに、お風呂はいつの間にか沸かされていた。
「さ、湯船へ」
うん。
裸になっちゃったし、寒いからお風呂には浸かるけどね。
なんで、裸足になったルージュさんも一緒なのかな?
なんだか、スカートもたくし上げてるし。
「まずは、ゆっくり温まってくださいね」
「う、うん……」
ルージュさんが用意してくれた、なんだかいい香りの花が浮かぶ湯船で、のんびりとする。
その横で、ルージュさんは何やら色々な道具を出している。
「る、ルージュさん?何をするのかな?」
「体をほぐして、お肌をツヤツヤプルプルにするんですよ。ラピス様のお国ではありませんでしたか?」
うーん。
一応、ブライダルエステがそれに当たるのかな?
でも、お風呂に入るところからスタートではないんじゃないかな。
私は経験がないからわからないけど。
「では、失礼しますね」
言葉とともに、髪がお湯で濡らされた。
念入りに髪を洗ってもらった後、丹念にヘッドマッサージをしてもらう。
「はぁー、気持ちいい」
「それはようございました」
髪の毛がタオルで巻かれて、今度は首から肩にかけてマッサージ。
何かのオイルを使ってるみたいだけど、これがまた気持ちいい。
そのまま、腕をマッサージされ、湯船から出されると、いつの間にか暖炉の前に敷かれていた大判のタオルの上にうつ伏せに寝かせられる。
もちろん、私は素っ裸だ。
ちょっと恥ずかしい。
途中、ごりごり痛かったり、じゅわーっと気持ちよかったりしながら、私のマッサージは終わった。
確かに、お肌はもちツヤになってるし、なんなら気のせいか、胸が少し大きくなっている気もする。
「明日も同じ時間に行いますからね」
「え……今日だけじゃないの?」
「何をおっしゃいます。お式の日まで毎日ですよ」
体力、もつかな。
少し心配になる。
フカフカの生地でできたバスローブ的な物を着て、暖炉前のソファにぐったりと横になる。
眠い……
「お食事の時間にはお声掛けしますので、それまではベッドで横になられてはいかがでしょうか」
「うん……そうします」
ユラユラとベッドまで移動して、倒れるように私は眠りこけた。
なんだか、途中で師匠が髪を乾かしに来てくれた気もするけど、記憶は曖昧だ。
お昼ご飯は、私だけ野菜が多めだった。
代わりにお肉は少な目。
「メリッサ様がドレスの用意をなさってますので、この間来られた時からサイズが変わってはいけませんので」
ルージュさんの言葉に、私はおとなしく頷いた。
師匠が少し、可哀想なものを見る目をして、そっとお肉を1切れくれようとしたけど、パシッとルージュさんに手を叩かれていた。
うん、師匠。
気持ちだけで十分です。
ちょっとルージュさんが怖いし。
それから数日後、メリッサさんがやってきて、ドレスのサイズ確認をした。
お店でオーダーメイドで買うことを考えれば、メリッサさんの手持ちだからまだいい。
そんなことを考えていたこともありました。
「うん。やっぱりラピスちゃんにはこのデザインが合うわね。この間お邪魔した後から、ずっと縫っていたかいがあったわ」
まさかのメリッサさん手縫いでした。
よくよく聞いてみると、ドレスに刺されている刺繍も、メリッサさん作らしい。
どうやら、メリッサさんの持っている服は、すべてメリッサさんお手製らしい。
前にもらった服も含めて。
ちなみに、ドレスはマーメイドライン。
体の線がくっきりでるので、間違っても太るわけにはいかない。
ベールはマリアベール。
そもそも、この世界ではベールはしないのが普通らしい。
だけど、師匠がどうしてもと、ベールもお願いしてくれたらしい。
「愛されてるわねぇ」
「そうですね。わざわざ前の世界のものを用意してくれるなんて」
私がしみじみ言うと、メリッサさんはちょっと目を見開いた。
「あら、違うわよ。あの男はね、他の男に、きれいに化粧したあなたを見せたくないだけよ」
え、そういう?
うん、でもまあ師匠なら納得できる。
「当日のお化粧は、私におまかせ下さいませ」
ルージュさんが言うので、ありがたくお言葉に甘えることにする。
ちなみに、結婚式の会場は、この森の中にあるという別館。
私は、そんなものがあることも知らなかった。
今住んでいるお屋敷は、師匠が元々暮らしていた別の場所から転移で持ってきたものだという。
師匠は最初、その別館で暮らして、結界の準備をしていたらしいのだけど、別館には各部屋にお風呂場がないので、私をこの世界に迎えるにあたって、本来のお屋敷を転移させて、そこで暮らし始めたらしい。
別館とはいっても、それなりに大きく、お客様が何人か泊まる部屋と、食堂や談話室、大広間もちゃんとあるらしい。
その大広間が、結婚式の会場。
今住んでいるお屋敷の私の部屋は、師匠とメリッサさん、ルージュさんで調度品なんかを整えてくれたという。
ルドルフさんやラズロさんも参加したかったけど、師匠が許さなかったんだって。
独占欲強いよね、師匠。
別館の大広間は、今、ルージュさんやアミュが大急ぎで式の準備をしてくれていて、師匠が監修しているらしいのだけど、私は見せてもらえない。
前の世界にいた時、友達や同僚の結婚式に数回参加したことがあるけど、1組だけ人前式で、あとは教会式だったから、私の中での結婚式のイメージって、教会なんだよね。
あとは、披露宴会場。
人によっては、料亭を貸切って披露宴をやる人もいるし、ガーデンパーティーにする人もいるけど、ホテルとかの会場が多いイメージ。
料理は、ルージュさんが一人で作るみたいで、せめて私もおもてなしの意味も込めて手伝いたいと申し出たのだけど、ルージュさんに笑顔で断られた。
花嫁さんは、式まで体を磨いて、ドレス合わせをしてと忙しいから、それ以外のときはゆっくり過ごしてほしいって。
でも、私のエステはルージュさんがやってくれるし、ルージュさん一人だと大変だと思うんだけどなあ。
ちなみに、メリッサさんは仮縫い段階のドレスを当日までに仕上げるために、ずっとお屋敷に泊まり込んでいる。
何度か私に着せているうちに、新しいインスピレーションがわいてきたとかで、忙しそうだ。
アミュは、ベールガールとリングガールをしてくれるらしく、師匠に前の世界の結婚式の映像を見せてもらって勉強している。
アミュがベールガールとか、可愛すぎると思うんだけど!
あ、師匠の衣装は教えてもらった。
タキシードとかにするのかと思いきや、大魔法使いらしく、黒の、ちょっと豪華なローブにするんだって。
大魔法使いにはちゃんと正装というものがあって、国王に謁見するときとかに着るらしいんだけど、装身具とかも色々あるらしくって、私は今からワクワクしている。
そうこうして、何だかんだと暇なようで忙しい日々を送るうちに、とうとう結婚式当日を迎えた。




