第46話 酒盛りに参加です
みんなで夕ごはんを食べる。
アミュは、特別なお花ご飯に大喜びだった。
なぜか、三回もメイド魔法をかけさせられた。
お花ご飯は、どうやらメイド魔法をかければかけるほど甘くなるらしい。
私も、既に人前でメイド魔法をかけることに慣れてしまった。
そもそも、あのメイド魔法は、メイドさんがお客さんと一緒にかけるものなのだ。
それをアミュに話してあげると、アミュも張り切って魔法をかけてくれた。
といっても、「キュンでしゅっ!」しか言えないのだけど。
それが可愛いので、良しとする。
ちなみに、師匠のお友達ズは、お赤飯を見るのは初めてらしく、赤っぽいコメに、少し腰が引けていた。
小豆の赤だから、そんなに怯えなくてもいいのに。
でも、お祝いの定番料理だと説明すると、なんだかニヤニヤしながら食べてくれた。
うん、いや、なんか少し恥ずかしいね。
そして、夜はいつもどおりの酒盛り。
普段なら、私は部屋にかえされてしまうのだけど、今日は新年一日目だから特別、と仲間に入れてもらえた。
「さ、ラピスちゃん。飲んで飲んで」
「おいコラ。コイツはガキより弱いんだから、そんなに濃いの飲ませるな」
お酒を勧めてくれるラズロさんと、それを止める師匠。
ルドルフさんは、ニコニコ笑ってそれを見守っている。
結局、かなり薄めたものを飲むことになったのだけど……
「いやぁ。フォルの独占欲っていうか、自分が全部見守りたいっていうその姿がさ、今まで一緒にいて初めて見る姿だし、なんか新鮮だねぇ」
「そうなんですか?」
てっきり、前の世界にいる私を見ている時からこんな感じなんだと思ってた。
「まあ、映像魔法に映した君をあんまり俺たちに見せたがらなかったのは変わらないけどさ、ここまでベッタリになるとは思わなかったよ」
ベッタリ……
確かに、私は今日も今日とて師匠のお膝に座らされている。
グラスも、私が飲みすぎないように、一口飲むごとに師匠が私から奪い取る。
はっきり言おう。
今の師匠は私に甘々だ!
「お前……」
「いや、ラピスちゃん。フォルは元々甘々だったからね?」
「え?」
目をぱちくりすると、師匠が呆れたようにため息をついた。
「声に出てたぞ」
「ぎょひっ」
まさか、声に出てたなんて。
おかしいな、心の中だけで思ったはずなのに。
「ところでラピスちゃん。いつまでフォルのことを師匠って呼ぶの?」
ラズロさんに言われて、コテンと首を傾げる。
「みなさんくらいに魔法が使えるようになるまで、でしょうか」
「いや。お前それ、何十年後だよ……」
そんなことを言ったって、師匠から免許皆伝を貰わないと、私にとって師匠はいつまでも師匠だ。
教えてもらい続ける限り、私は弟子なんだから。
「流石にそれは……フォルが可哀想かな」
「コイツにそういう趣味があるならいいけどねぇ」
二人に言われて師匠の顔を見上げると、少し嫌そうに目を逸らされた。
「考えてみて?ラピスちゃん。二人が結婚して、そういう行為をしてる最中に、師匠って呼ぶの?」
普段ならその言葉に恥ずかしがるところなんだけど、今の私はお酒が入っていて、少し大胆だ。
なので、ちょっと想像してみた。
「アリだと思います」
「ええ……?」
「本気かよ……」
私以外の全員が、ドン引きしている。
なぜだ。
「ルドルフさんだって、奥さんはお弟子さんですよね?師匠って呼ばれないんですか?」
「うち?うちはまだ奥さんが若いからそういう深い行為はしないけど、二人きりのときは名前で呼んでくれるよ」
若いっていうか、幼妻ですよね?
いや、それはともかくとして、そうか、名前で呼ばれてるんだ。
いや、もしかしたら子供だからこそ名前で呼べるのかも。
「ルドルフさんの奥さんて、おいくつですか?」
「14歳。すごく可愛い子だけど、うちの奥さんに興味持つのはやめてね」
うわあ。
独占欲すごい。
同性でも駄目なんだ。
でもって、思ったより幼くなかった。
いや、前の世界で言うなら中学生だから、子供なことには変わりないけど。
師匠の話し方からして、もっと幼いのかと思ってた。
「あー、もうそんな歳か。最後に会ったのは結婚したときだからな。もっと幼女の印象あったわ」
「そうねぇ。アタシも、あの子はまだまだ幼い印象だったわ」
「うちの奥さんの話はいい。てか、記憶から消してくれ」
そこまでですか?
話題にされるのを嫌がるだけじゃなく、他の男の記憶から消したいほど?
「愛が深い」
「違う、間違えるな。コイツのは愛が重いんだ」
すかさず師匠が訂正する。
それを見て、ラズロさんは嫌そうな顔をした。
「ルドも、アンタには言われたくないと思うわよ?このストーカー」
「ほざけ」
そうだった。
師匠って、ちょっとストーカー気質だった。
前の世界にいた時にしょっちゅう覗かれていたという話を思い出す。
「だいたい、その指輪もだけど、アンタがラピスちゃんにあげたアクセサリーって、防御魔法の他に、位置追跡魔法が組まれてるじゃない」
位置追跡魔法?
GPS的な?
すごい師匠。
ホントにストーカーだ。
「おい、誤解すんなよ。位置追跡魔法は、お前が万が一さらわれた場合の為だ」
なんだ、そうなのか。
それなら、逆に安心かな?
それに、盗聴とか盗撮してるわけじゃないし、別にいいかな?
……盗聴、してないよね?
「……なんだ」
「盗聴とか、盗撮してたりとかは……」
「長く離れなきゃならん時しか、映像魔法は使わない」
映像魔法は使うんだ。
映像魔法って、映像だけじゃなくて、音声も聞こえるよね?
ジトっとした目で師匠を見ると、スッと目を逸らされた。
「お前がこっち来てからは使ってねえよ。長く離れるときだけだと言ったろう。だいたい、それもお前の安全を確保するためだ」
なんか良いこと言ってるみたいだけど、やっぱり師匠はストーカーだ。
「まあ、それはともかく。二人はいつ結婚するの?」
ルドルフさんに言われて、ふと考える。
そう言えば、師匠は年が明けたらすぐにでもって言ってたけど、いつ結婚するんだろう。
「メリッサに頼んだ衣装が出来上がり次第だな。アイツの話では、一週間もあれば出来上がるらしい」
あー……
結婚式では、メリッサさん監修の衣装を着るのか。
「ルージュも、それまでにコイツをピカピカに磨き上げると張り切ってる」
私の知らないところで、話は進んでいたらしい。
おかしいな。
結婚するって決まったのは、昨日の夜だったのに。
師匠、仕事が早くないですか?
それはそれとして。
「この世界では、結婚式って何をするんですか?」
神様がいないなら、神様に誓いを立てるとかないよね。
かといって、精霊に誓うわけでもないだろうし。
まさかの仏前式?
「あー、お前の世界の言葉で言うなら、人前式が一番近いか。招待客に結婚の宣言とお披露目をして終わりだ。ちなみに、俺たちの結婚式に呼ぶ人数はそんなに多くない。せいぜい、うちのやつらと俺の昔なじみくらいだ。魔法省の奴らなんて呼んだら面倒なことになるからな。俺たちはこの国に住んでるが、基本的に魔法使いは自由なもんだ。だから、国王も呼ばねぇ」
よかった。
魔法省の人とか国王とか来られたら困るどころの話じゃない。
「その代わり、結婚したという通知は送るけどな」
「戸籍みたいなものですか?」
「いや。俺の嫁に手を出すなっていう牽制だ」
あー、そういう。
「他に聞きたいことはねぇな?じゃ、お前はもう寝ろ。部屋まで送ってやるから」
「はあい」
ここで逆らっても、どうせ部屋まで連れて行かれるので、おとなしく従う。
師匠にお姫様抱っこされた状態で、ルドルフさんとラズロさんに挨拶すると、私は師匠に連れられて自分の部屋に戻った。
師匠が談話室に戻ったのが少し遅くなった理由は……まあ、想像にお任せしたい。




