眠過ぎて眠い
「あー……ねっむ。」
水曜日の朝、日の光を全身に浴び、寝たい気持ちをぐっと堪え学校へ向かう。
「お兄ちゃんが昨日、夜更かしするからでしょ。」
そう言いながら俺の隣を歩くのは、妹の瑠那。しっかり者で我が妹ながら結構可愛い部類に入ると思う。
「昨日はカノツラの再放送があったからなー。気が付いたら朝の5時だったわ。」
カノカワとは、『隣のカノジョが可愛すぎてツラい』の略だ。主人公は俺の最推しのアリスたん。あ……アリスたんが可愛すぎてマジつらいわー。
「もー、またカノツラ観てたの?あれもう何十回も見てるじゃん。飽きないの?」
「ばーか、アリスたんが出てるんだ、飽きるわけないだろ。」
「アリスたんねぇ……」
「何だよ。」
「お兄ちゃんは多分、一生結婚しないんだろうなーって思っただけですー。」
「心配するな妹よ、いざとなったらアリスたんと添い遂げる。」
「お兄ちゃんやばーい。」
なんてことを言い合っていると、俺が通う高校に着いたのでここで瑠那とお別れする。
「お兄ちゃん。授業中に寝ちゃダメだよ。」
「大丈夫、怒られても気にしないから。」
「そう言う問題じゃないでしょー。」
瑠那は自分の学校へ向かって行ったのを確認すると、俺は自分の教室へ向かう。
「佐条くん、おはよう。」
教室のドアを開け、自分の席に座ると隣から挨拶される。こいつの名前は倉田 詩乃。俺がこのクラスで唯一話す女子だ。倉田は読んでいた小説を閉じてこちらに体を向ける。
「眠そうですけど、昨日は夜更かしをしたんですか?」
「昨日カノツラの再放送見てたら寝る時間無くなってたわ。」
「そういえば昨日再放送されてましたもんね。」
「やっぱり何回見ても飽きないな。アレを見る度にアリスたんの尊さが再確認できるわ。」
「ふふっ、本当に好きですよね、アリスたん。」
「俺の最推しだからな。あの可愛さの前では何人たりとも逆らうことは出来ないからな。」
「確かにアリスたんのあの可愛さは反則ですからね。見てるこっちまで照れちゃいますもん。」
うん……やっぱりいいなぁ、アリスたんの話で盛り上がるのは。倉田とは趣味が合うからか、女でも全然気にせずに話すことができるから気持ち的に楽だ。
「そういえば、この前「佐条くん、おはよー!」」
「あ?」
アリスたんについて語り合っていると、横から喧しい声で話しかけられる。こいつは桐崎 響子。明るく元気で誰にでも優しい、クラスのアイドル的存在だ。そんな彼女に挨拶をされた男は、たちまち舞い上がること間違いなしだろう。しかし、
「今倉田と話してんだ、お話したかったら別のやつ誘えや。」
「えぇー、いいじゃん!私も混ぜてよ!」
「てめぇと俺らじゃ話す内容が違うんだよ。早いとこイツメンのとこ行ってこいや。」
いくらアイドル並に可愛かろうと、俺はこいつと喋る気は無い。そもそもこーゆーいい子ちゃんって感じのやつは好きではない。
「蘭ちゃぁん!佐条くんが私を仲間外れにしてくるー!!」
「ちょっと、佐条。ちょっとでいいから響子も話に入れてあげてよ。」
そう俺に言ってくるこいつは柳 蘭。桐崎の幼なじみでいつも桐崎と一緒にいる。
「話してもどーせ会話になんねぇだろ。こいつアニメ見てないんだから。」
まぁ、見てても絶対会話に入れてやんねぇけど。
「ぶー、佐条くんのケチー。」
「ケチで結構。」
「皆、ホームルームを始めるから席につけ。」
くだらないことを話していると、担任の朝倉 凪先生が入ってくる。
「ほら、先生きたぞ。さっさと席につけや。」
「むー……いいもん!また休憩時間話かけるから。行こ、蘭ちゃん。」
「そうね。」
そう言って、桐崎と柳は自分の席に戻っていった。
「ふぁ〜」
急に静かになったからなのか、突然の睡魔に襲われる。徐々に瞼が重くなり、視界が狭まっていく。
「……寝るか。」
そう言って俺は寝ることにした。




