壁は友達さ
「あー……だりぃ。」
あの後、1時間目は寝て過ごしたから眠たくは無いのだが……
「起きてすぐ体育ってのもなぁ。」
「佐条さん、一緒にキャッチボールしましょうよ。」
西野が俺の分のグローブを持ってきてキャッチボールに誘ってくる。
「あー……俺キャッチボールより壁当て派なんだよなぁ。」
「俺、佐条さんに断られたら誰とキャッチボールすれば良いんですか。」
「ようこそ、壁当ての世界へ。」
「嫌ですよ!?なんで2人仲良く壁当てしなきゃ行けないんですか!」
壁当ての魅力を教えてやろうと思ったが、断られてしまった。まぁ、これ以上こいつに構うのも面倒だし、するか……壁当て。
「ねぇねぇ!2人で何してるの?ボクも混ぜてよ!」
あー……うるさいのが来てしまった。今俺たちに声をかけてきたこの無駄に元気なこの女は瀬田 渚。とにかく体を動かすことが大好きで、いつもテンションが高い。
「見てわかんねぇのか、ただ今絶賛壁当て中だ。てめぇはお呼びじゃねぇ、向こう行ってろ。」
「壁当てよりも、こっちで一緒に試合しよーよ!絶対楽しいよ!」
「だってさ、行ってこいよ西野。」
「俺ですか!?」
「さっきキャッチボール相手いないって暇してたじゃねぇか。」
「いやいや、俺試合とか嫌ですよ!佐条さん行ってくださいよ。」
「いやいやいや、俺壁当てするのに忙しいから。」
「いやいやいやいや、それだったら俺も今から壁当てするんで忙しいですよ!」
「いやいやいやいやい「いい加減そのくだり何とかならないの!?」」
俺達が押し付け合いをしていると、桐崎がツッコミを入れる。
「とにかく!試合始まってるから、行くよ!」
「誰が行くかこのやろ「行くわよ。」って、てめぇ柳いつの間に来やがったんだよ。てか離せコラ。」
「それじゃあ、レッツゴー!!」
「ゴー!」
「ゴー。」
桐崎と柳に腕を抑えられ、瀬田に背中を押されて俺は試合に連れて行かれる……ちょっと待て、なんで西野の野郎は連れて行かれねぇんだよ。俺は後ろを振り返ると、
「 グッ!」
アイツ……後で殺す。
到着後、バットを持たされバッターボックスに立たされる。
「さぁ!勝負だよ、ナオやん!」
誰がナオやんだ、シバくぞコラ。
それより、よく見たら今9回裏、2アウト一塁で3対2って、最終局面じゃねーか。これ絶対押し付けられただろ。
「いくよー!そりゃ!!」
『スパーン!!』
「ストラーイク!」
「もういっちょ!とりゃあ!!」
『スパーン!!』
「ストラーイク!」
「おい佐条!!気合い見せろやぁ!!」
「せめてバット振れー!!」
「佐条さん頑張ってくださーい!」
ベンチから野次が飛んでくる。そもそもこんな大事な局面をさっきまで壁当てしてたやつに押し付ける方が悪い。あと呑気に応援してる西野、後でシバく。
まぁ、ここでアウトになったら後で周りに何されるか分からんな。じゃあ、とりあえず……
「決めるよ、ナオやん!!おりゃあ!!」
『ビュンッ!!』
「ふんっ!」
『カッキーン!!』
「なっ!?」
飛んでくるボールを捉えてフルスイングすると、ボールは遥か後方へ飛んでいった。
「やべぇ!サヨナラ逆転ホームランだぁ!!」
「すっごぉい!!」
「流石佐条さん!!」
ボールを打った後、ひとまず塁を踏んで行き、最後にホームベースを踏む。これで文句は言われんだろうな。
「すごい!すごい!すごーい!!すごいよナオやん!!」
ホームベースに戻ると、瀬田がすごい勢いでこちらに走ってくる。やっぱりうるせぇ。
「やっぱりボクの目に狂いは無かったよ!ナオやんには野球の才能があるよ!」
「たかがホームラン1本で大袈裟な。」
「そんなことないよ!佐条くんカッコよかったよ!ねっ、蘭ちゃん!」
「確かに、最後のホームランは凄かったわね。」
瀬田に続いて、桐崎と柳も来る。もうこの時点でめんどくせぇ……
「これなら野球部でレギュラー狙えるよ!!ボクと一緒に甲子園目指そうよ!!」
「それ良いね!佐条くんならやれるよ!私、絶対に応援するから!」
うぜぇ……姦しいどころじゃねぇぞコレ。早いとこ退散しねぇと、
『キーンコーンカーンコーン』
「うっし、チャイムなったからここで解散。じゃっ、そゆことで。」
「ボク、絶対諦めないからねー!!」
後ろでなにか言ってるが知ったことではない。とにかく、着替える為に教室へ向かう。おっと、その前に……
「佐条さん、さっきのホームラン凄かったですね。やっぱりあの時佐条さんに任せて正解でした……って、なんで無言で近づいて来るんですか?ちょっ、怖いですって、あっ……」
この後、めちゃくちゃボコった。




