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obsession  作者: 礼央
第二章 狭間
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忘れていたと言うのもあるし、長期休んでいたとの理由もある。

7月の頭に期末の試験があるとの事に。

しかも、真にとって高校生活初めての試験である。

この学校は中間テストが無い。

その分期末テストで1学期分の膨大なテスト範囲から出題されるのだが。

授業を受けていたらある程度の出題範囲は絞れる筈なのだが、1月の休学と真の頭の出来ははっきり言って不安要素しかない。

テストの存在を知った時、真はまず雪乃に頼み込んだ。

この試験で赤点と取ると7月いっぱいの夏休みが返上されてしまうのだから。

まだテストの準備期間よりも1週間程早いが、真と、そして同じく長期欠席していた幸希は雪乃監視の下、休み時間を全て費やして勉強を行っていた。


「一応この学校は進学校なんだけど、2人を見てると先が思い遣られるわ」


雪乃は独り事にしては、大きな愚痴を零す。


「だからごめんって言ってるじゃん。

まだテスト期間前だけど、雪乃は勉強しなくて大丈夫?」


「私授業真面目に受けてるからテスト勉強した事ないのよね」


それでいて、毎回上位5位以内に収まっているらしいのが、頭の出来の違いを思い知らされる。

更には二人の為にわざわざ出題範囲を絞ってくれたのだから悪態などつける筈も無い。

嫌々ながらはあるが幸希も一応覚える気があるようで、真の横でノートを無言で見つめている。

昼休みの喧騒が気にならないといえば嘘になる。だが、そんな中でも勉強をしなければ。

集中出来ないのであれば問題を解かなければ。

気を取り直した所で、数学の問題集に取り掛かる。

雪乃はただ椅子に寄り掛かり、2人の監視とばかりに眺めている。

そんな若干近寄りがたい空気の中、咲妃が古典の教科書を持って来た。


「ねぇ幸希。勉強中悪いんだけど、次の古典私当たるんだよね。

予習し忘れてちゃったから訳してくれない?」


「嫌だよ面倒臭い」


顔を顰めて拒否を示す幸希だが、そんなやり取りに疑問を覚えてしまう。


「何で四谷なんかに訊くの?

雪乃に訊いた方が良くない?」


咲妃は真に視線をやる。


「何だ。真知らなかったの?

うちの四谷は代々蒼間とかの歴史的な古代文献を扱い守護してる一族なのよ。まぁ閲覧出来るのは本家の跡取りだけなんだけど。その跡取りである幸希は文献の閲覧を義務付けられてんの。

そんな幸希が古典出来ない訳ないじゃん」


当たり前のように話す咲妃だが、どうも腑に落ちない。

幸希は今まで蒼間について尋ねると必ず教えてくれた。その理由は符合がいった。

だが脳裏を過るのは数ヶ月前、まだ中学生だった頃、進学ギリギリの2人に用意された追試。その追試の為の放課後の補習。


「え・・・四谷・・・補習の時古典出来るとか言わなかったよね?

それ以前に出来てなかったよね?

何?もしかして補習しながら私の事馬鹿にしてた?」


侮辱されたようでじわじわと頭に血が上る。

あんなにも苦労したのだから。

当の幸希はげっ。と口には出さないが、そんな表情をしていた。


「あ~あれは・・・」


「いや・・・もういいよ過ぎた事だし・・・」


言葉を濁す幸希の言い訳を訊く前に、制す。

そう、過去を悔いても、幸希を責めても詮無い事。

どうも自分は幸希に八つ当たりをしてしまう様で、額に手を当て、気持ちを落ち着かせる。これ以上、幸希に当たりたくない。


「そうよ、過去を悔むより目先のテストの心配しなきゃ」


雪乃の鶴の一声によって、皆の意識がテストに向けられる。笑みが含まれており皆、意図を掴んでか誰も反論しない。

問題集に意識を向けた所で再び雪乃の声が向けられる。


「真。テスト期間どうせ予定も無いんでしょ?どうせ勉強出来ないんだから泊まりにきたら?勉強合宿してあげるわよ」


何気ない雪乃の一言。



「いや、いいよそんなの」

「あんた断れる立場なの?ほぼ強制よ」


遠慮したつもりだが、自分の立場を思い知る。もし断ってテストで赤点でも取ろうものなら恐ろしくてえ想像がつかない。

テストで良い成績を採るに越したことはないので、大人しく雪乃の提案に乗ることにした。


「それ、俺もしたい」


空気を読まずして幸希が口を挟む。

先のやり取りを既に忘れているのだろうか?

だが雪乃は考える素振りも見せず、拒否の言葉を口にする。


「嫌よ。あんた男でしょ。

何で一緒にお泊まりなんかしなきゃいけないのよ?」


「いいじゃねえかー」


「いーやー」



そんな2人のやり取りをBGMにしながら、問題集を黙々と進めて行った。

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