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obsession  作者: 礼央
第一章 変わる世界
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授業をサボった事には教師から何も咎められなかった。

転校初日なだけあって、不安があったのだろうと。生徒達とは比べものにならないくらい、優しく接しられた。真が戸惑うくらい。

それ程、前の学校では教師との折り合いが悪かったのだ。


それから2日、3日が経ち、相変わらず生徒達との会話もなく、隣には懲りず幸希が居る。心遣いは有り難いが、独りになれきった真にとっては複雑な心境。それ故会話は無い。常に寝ている幸希に対し、幸希の向こうにある窓の、空を眺めるだけ。たまに囁かな嫌がらせをも受けるが、気にかけるに値しない程度なのだ。

授業に慣れが出てきた頃。ポツポツと幸希は休むようになった。

幸希の欠席と共に、蒼間等の迫害が現れるとも思ったが、奴等もそんなに幼稚ではない。敢えて真の存在を消しているのだ。

認めていないのだから。それはそれで、真なりの平和をもたらせていた。


この日も。まだ幸希は来ていない。

以前からも来た事はめったにないし、逆に今の学校での出席率に驚く程だ。

体調面での心配はしていないが、組織的な面で心配が募る。


―――自分自身の事も。


ジムにいって体力をつける訳でもなく、蒼間に貢献する訳でもなく、家を与えられ、学校に通わせて貰っている。

ただそれだけ。

空いている幸希の席と空の景色を眺めながら、一抹の苛立ちを感じていた。


ふと。クラスの喧騒から際立って目立つ声が聞こえ始めて来た。

いつもは気にもしない。だが、声が近い。自然と耳に入ってくる。


「凄い久しぶりだよね。」

「待ってたのに全然来ないんだもん。」



「ごめんごめん。結構頑張ってたから。」



それは、再会を喜ぶかのような会話。

そう言えば、幸希とは反対側の隣の席。人が使っている痕跡はあったものの、転校して以来、一度も見て居ない。元々このクラスはポツポツと必ず空席があった。だからこそ、気にも留めなかった。


「転校生が来たって本当?」


その言葉に、周囲のクラスの人間全てが静まり返ってしまった。

教室中の生徒の視線が真に注がれる。

少女は周りの空気を理解出来ずにきょとんとしている。

周りの視線が自分に浴びせられているのは不快だが、隣の席の子がどんな子なのか。気になった。

少女も皆の視線と、空席のはずだった隣の席の、人の気配に気付いた。


「「!!」」


二人の視線が合わさった時。

真も、少女も、表情が氷付き、そして、引きつった。自覚はないが、きっと自分の顔もこんな表情をしているのだろう。


だがそんな事はどうでもいい。


・・・自分の隣の席の少女は見た顔である。

そして彼女も真の事を知っている。


ジムへの見学の時。唯一印象が強かったから。


名前は知らない。あの時聞いた気もするが、覚えていない。

無言で目線は彼女を見上げ、彼女は理解できないと言った表情で席に座ったままの真を見下していた。


無言と沈黙。


教室にいるクラスのほとんどが先行き不安げに2人を見つめていた。


その時。




「ふあぁ~…」


間の抜けた大欠伸が教室の静寂を破った。

誰もが驚き、欠伸の発生源の人物を見ると、如何にも寝起きで倦怠感を漂わせた幸希が教室のドアに居た。

一斉に視線が幸希に集まり逆に幸希自身が驚きを見せる。

何事かと辺りを見渡すと一応の状況は把握出来た。

途端先程の少女がズカズカと威圧感込めて幸希に近づく。


「おう。久しぶ」

「何であの人が此処に居る訳?」


幸希の再会を懐かしむ会話を聞く耳を持たず遮り嫌悪の表情を込めて尋ねる。


「・・・何でって・・・俺等とタメだし、来て当然だろ。義務教育。」


「そういう意味じゃなくて!!!」


「俺に聞いても困るって。

決めたのは遥鳴だ。用があるならあいつに言ってくれ。」


その言葉に少女は口をつぐんでしまった。

これ以上問いかけて来ないと見た幸希は、ポンッと少女の肩を叩き、自分の席へと横切って行った。

幸希により、クラスが安堵の雰囲気に包まれていた。



「よう。」


「うん。」


席に着いて交わされる挨拶の言葉。[おはよう]と言わないのは2人がひねくれているからか、面倒臭いのか・・・。



「お前あいつと知り合い?」


「さあ。顔は知ってる。名前は知らない。」


先程の沈黙で初めて会ったのきの待遇が頭を遮り、不快感を募らせる。


「誰なの?」



松崎雪乃まつざきゆきの。まぁ・・・このクラスじゃ一番強いかな。努力家だしな。呉々も目ぇ付けられないようにな」


本気なのかふざけているのか、笑顔の幸希を尻目に、手遅れだ。と深くため息を吐き、眉間にしわを刻ませた。


「ねえ。前々から思ってたんだけど。何でこのクラス雪乃って人と言いあんたと言い休み多いの?問題にならない訳?」


昼休み。真と幸希はそれぞれ売店で購入したパンを持参して屋上にいる。

風はまだ強く冷たい。

だがこの空間こそが唯一落ち着けて、誰も来る可能性の無い場所。

風を遮断している壁に寄りかかり、尚且つ太陽の光を浴びる場所に座り込んで昼食を共にしている。誘いあっているわけではない。

真の行動に幸希が合わせているのか、たまたま2人の行動が一致しているのか。どちらにしろ、常に共に昼を過ごしている。


「ん~。何と言うべきか・・・

この学校も蒼間の一部で、理事長も一族の端くれ。んでさ、このクラスの半数は蒼間の人間なんだよ。蒼間は狭間に対抗する勢力をつけなきゃいけないんだ。

基本的に休む連中は己の鍛錬。または総本家って所に行って修行してるんだ。

だからその分休み扱いはされないんだ。」


稀にサボる人間も居るけどな。そう付け加えた幸希は自分の事を自嘲しているかのような口調だった。

蒼間についてはまだ、知らないことが多すぎる。いや、知っている事の方が無いに等しい位である。だが、今の所、解らないものがあれば幸希が教えてくれる。

それが心強くなりつつあった。不安要素とは、比べものにもならないが。




―――それでも、時は願いも虚しく唐突に訪れる。

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