↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/106

番外編 幼女無双

 まばゆい光と激しい炸裂音、そして、聞き覚えのある少女のかん高い悲鳴。

 無謀な突撃を敢行したクーリエ子爵と、今まさに襲いかかろうとしていた魔物達の間に割って入ったそ(・)れ(・)は、数体の魔物を弾き飛ばしてようやく着地―――? した。


「な、ななな、なんなのだ? なんなのだぁ、これは〜!?」

「か、閣下、落ち着いて下さい! ここは一旦お下がりを!」


 凄まじい魔力の塊がぶつかって、小さなクレーターのようになった地面。尻もちをついたまま、混乱の極みにあるクーリエ子爵を彼の部下達が必死になだめている。


「けほっ、けほっ、ここ…、どこ? お父様は?」


 可愛らしく咳き込む声に、戦場には場違いな小ぶりなドレス。立ちこめる砂煙から現れたのは、まだ小さい可憐な淑女だ。見間違える筈もないその髪色は、ユフィそっくりのプラチナブロンドで、困惑気味に周りを見つめる瞳は、私と同じエメラルドグリーン。


「リリア!?」


 クーリエ子爵邸に居るはずのあの子が、どうしてここに!? 混乱する私をよそに、突然空から降ってきた愛娘は、自分の目の前に迫る魔物の群を目にした瞬間、小さな悲鳴を上げ、その細い右腕を振り上げた。

 私にも見覚えの無い腕輪が光を放つ―――。


「いやああああぁぁ―――っ! 来ないでええぇぇ――――っ!!!」


 リリアの腕から長い光の光線が一直線に伸びて、目の前の魔物とその向こうの森とを貫(・)い(・)た(・)。そして、その光の光線をそのまま真横に振り切ると―――。

 ザン――ッ!!!

 

 次の瞬間、光線の延長線上いた全ての魔物が千切れ飛んだ! 身体を上下に切断され、下半身だけを地面に残し、上半身が勢いよく空を舞っている。その切断面は焼け焦げているのか、血や体液は流れていない。

 超超高密度の光の熱線!? まだ本格的に魔法を習ってないから、やみくもに光の魔力だけを前に放つ、とんでもない力技だ! って言うか、あの子の魔力量多過ぎない!?

 そ、それに、なんで魔力が暴走していないの!? 


 リリアの身体から漏れ出す光は、精霊からの魔力供給による聖女特有のものだ。魔力の器が不完全だと、身体には負荷がかかり続けて、魔力が溢れ出てしまい、その光はさらに強く眩しくなる。それこそ先日のリリアのように。

 今のあの子の薄い光は、その魔力が安定している証拠だ。


「あの子、魔法の使い方はめちゃくちゃなのに、魔力だけは安定している。なんで?」


 しかし、その魔法がめちゃくちゃだとしても、威力だけは絶大だ。ざっと見るだけでも約3分の1の魔物が討伐され、その魔法を警戒したのか、他の魔物達の動きも止まってしまった。


「「「うわああああああぁぁ――――っ!!!」」」

 

 それを見たラピス公騎士団とクーリエ子爵軍の兵士達から歓声が巻き起こる。突然の光と共に現れた少女による、英雄譚のような活躍だ。リリアを見知っているラピス公騎士団は元より、クーリエ子爵の兵士達からも大歓声が上がっている。

 そこに得たりとばかりにグスタフが声を張り上げた。


「魔物討伐の勇士達よ! このお方こそ公爵閣下のご息女、リリア・ラピス様である! かの大聖女クリスティーナ様の姪子にして、光の聖女ユーフェミア様の愛娘だ! そのリリア様が奇跡を起こされた! もはや我らの勝利は疑いなしだ!」

「「「うおおおおおおぉぉ――――っ!!!」」」


 割れんばかりの大歓声に、この上なく士気が高まっていく。なぜここに幼女が乱入して、なぜ魔物を蹂躙したのか満載のツッコミどころは、グスタフの機転でうまく誤魔化せたようだ。


「このまま総攻撃を開始する! 本陣と右翼は前進っ! 左翼は、リリア様を救出した後、攻撃に転じよ!!」

「「「うおおおおおおぉぉ――――っ!!!」」」


 勢いそのままに、本陣と右翼が総攻撃を仕掛ける。私の当初の戦術は、クーリエ子爵の愚行のおかげで、もはや実行が出来ない。この場の勢いを利用したグスタフの判断はさすがに的確だ。


「今のうちに、リリアを!」


 先ずはあの子の保護が最優先だ。私はリリアの元に馬を走らせるが、それよりも先に左翼からの救出部隊が到着する。

 

「リリア様! ここは危のうございます。こちらへ!」

「あ、ありがとう。あの、お父様は?」

「ご安心ください。今こちらに向かっている姿を確認しました。直ぐにお会いになれます」

「本当ですか!」


 遠目からも分かる、喜色満面の笑顔がやたら眩しい。今直ぐにでもあの子を抱きしめて、いっぱいいっぱい褒めてあげたい。

 しかし、馬から降りて駆け寄ろうとした所で私は足を止めた。近くに魔物の気配を感じたからだ。


 ―――上から!?―――


 空をあおいだ私の目に飛び込んで来たのは有翼の魔物だ。前世で言うところのガーゴイルのような風貌の魔物が2体。リリアとその周りの兵士達に襲い掛かろうとしている。


「リリアぁ! 他の者も伏せなさいっ!!」

「お父様!?」


 言うが早いか、素早く魔力を練り上げた私は魔物2体に向かって、風魔法の暴風を放った。たまらず体勢を崩す魔物に続けざまに横合いから切りつける!


「はああああぁぁ―――っ!」


 ズバッ、ズバッ! 上下からの斬撃が二閃! 愛用の剣が冴えわたり、2体の魔物が4つの肉塊と化して宙をを舞う。


「消し炭になれ!」


 ゴオゥッ!! 最後に超高熱の炎弾で魔物を焼き尽くし、私は地上に着地した。いけない、咄嗟のことだったので空まで飛んでしまった。いつの間にか髪を束ねていた紐もほどけてしまっている。


「リリア、大丈夫?」

「あ…」


 さすがに怖かったのか、リリアは声を震わせている。


「よく頑張ったね、後はお父様に任せて」

「あ、ああああ…」


 私にすがりつくような視線が徐々に熱を帯びていき、その口から出た言葉は―――。


「アルティメット・クリスティーナぁ!!!」


 ふへ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。