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番外編 聖女大集合①

 クーリエ子爵領での魔物討伐と、私の前世の記憶による諸々の事件から数週間が経った。


 精神的に不安定になったり、気を失ったりと色々な事がありはしたが、目を覚まして両親にさんざん甘やかしてもらった私は、今元気いっぱいの絶好調である。

 なんなら、前世のいじけ虫だった自分を引っ叩いたってよいくらいだ。


 私の周りもすっかりと日常を取り戻して、ラピス公爵家は平和の真っ只中にある。

 魔物討伐の顛末については、戦場で大暴れした幼女の事は、討伐軍全てに箝口令が敷かれたため、私が精霊の愛し子であり、第三の聖女となった件は超機密事項として扱われた。お父様とお母様曰く、聖女になっても良い事は一つも無いとのことだ。しかし私はその事を大いに不満にしている。

 せっかく大聖女になる偉大な一歩を踏み出したと言うのに、それを秘密にするなんてどういうこと!?


「女性はね、秘密が多い方が格好いいものよ」

「お、男の娘のお父様に言われても…」  


 ある意味、説得力は抜群だけどね。

 なにしろ現在進行形で全世界をだまし続けているのが目の前の父である。


「それについては今日のお客様にお話を伺う事ね。たぶん納得するわよ」

「お母様」


 最近よく使うようになった家族専用の談話室に入って来たのはお母様だ。今日の大切なお客様の接待のために朝から大忙しのお母様だったが、一区切りついたのだろう。付き添いのアンナもほっとした顔をしている。


「でも、相手が相手だよ、こ、怖くて聞けないよ…」

「セシリアもマリーカも気さくな人だから、噛みついたりしないわよ」

「そんな事が言えるのは、お父様とお母様だけですぅ!」


 そう、今日公爵家を訪れる大切なお客様は、セントラル皇国のセシリア皇太子妃と、我がディアナ王国のマリーカ王太子妃だ。かの皇都最終決戦の活躍で準聖女の称号を賜った、私の憧れの人達でもある。お父様とお母様にとってほ学園時代の旧友らしいけど、私にとっては推しとの初対面だ。


「あらそう、困ったわねぇ」

「え、ま、まさか、もう?」

「もう二人とも、お部屋の前で待ってるんだけど」

「みぎゃああああああぁぁぁ―――っ!!」

「お、お嬢様っ、落ち着いて下さい!」


 意味不明な叫び声を上げながら、分かりやすく狼狽える私を、専属侍女のロッテが必死になだめようとする。


「最近のリリアは、感情表現が独特になったよね」

「そうね、元気なのは良いことだわ」


 他人事のようにのたまうお父様とお母様。こちとら前世の記憶ごちゃまぜの状態から、ようやく落ち着いてきたばかりなのだから、しょうがないでしょ!


 しかし私の興奮冷めやらぬ間に、コンコンとノックの音が響き、どうぞとお母様が声をかける。

 ドアを開けて入室して来たのは、ラピス公爵家筆頭侍女のマチルダだ。


「失礼いたします。セシリア皇太子妃様並びに、マリーカ王太子妃様をお連れいたしました」


 そして現れた二人の貴人の姿に、お部屋の中は一気に華やいだ。


 セシリア皇太子妃は、お父様と同じ見事なブロンドのとんでもない美貌の持ち主で、均整の取れたプロポーションの癒し系美人だ。

 マリーカ王太子妃は明るい栗色の髪の美女で、こちらは艷やかな色香をまとった大人の女性と言う印象だ。私は思わずその豊満なバストと自分の未発達の胸を比べて愕然としてしまう。

(Dカップ? E? こ、この大きさはFもあり得る…、って親父か私は!)

しかしそのお陰か、私はなんとなく落ち着く事が出来た。


「お二人ともご無沙汰しています。本日は、ようこそお出で下さいました。ほら、リリアもご挨拶を」


 私が阿呆な事を考えている間にも、お父様からの挨拶が終わり、初対面の私に話が向けられる。お父様に促されて一歩前に出た私を見て、セシリア皇太子妃とマリーカ王太子妃の動きが止まった。私、何もおかしくないよね?


「お初にお目にかかります。ラピス公爵家長女、リリア・ラピスにございます。皇太子妃様、王太子妃様、遠路はるばるようこそお出で下さいました」

「きゃ…」

「?」


 私が長い挨拶をなんとか無事に終えたところ、セシリア皇太子妃の口から悲鳴のような声が漏れ、それを慌てて自分の手でふさいだ。マリーカ王太子妃も涙目で口をふさいでプルプル震えている。 ご病気?


 手で口をふさいだ皇太子妃は、顔をブリキ細工のように動かすと、ドアの前で控えているマチルダに視線で何かを訴えた。それに神妙に頷いたマチルダは、お母様の専属侍女のアンナと、私の専属侍女のロッテに素早く目配せをすると、3人揃って静々とお部屋を退出してしまった。 (あれ? セシリア様達の側仕えの方々も出て行っちゃった?) 私の頭を疑問符の花が咲き乱れた次の瞬間―――。


「「きゃあああああああああぁぁぁぁ――――――っ!!!」」


 ラピス公爵邸にかん高い二つの悲鳴が響き渡った。

鬱回の後はお笑いで終わりたい。

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