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「あ、あの、どうでした?」
カズヤさんを繁華街へと案内し終え本部へと帰って来たところで、私は彼にそう問いかけた。
「ん、あぁ、まあいい暇潰しにはなったか。やっぱ、この世界とオレの世界とでは違い過ぎて、何を買ったら良いのかとかさっぱり分からなかったがな」
ぶっきらぼうに返事をするカズヤさん。
一緒に昼食を取り、幾つかの店を見て回ったが、あまり会話はなかった。
どうしてかは分からないのだけれども、彼は私と話す時、どこか構えている様な節があるし、私の方も何故か、彼と上手く話す事が出来ない。
特に恐いとか、嫌だとか思っている訳ではないのに、言葉にしようとすると喉の奥に引っかかるというか…とにかく上手くいかないのだ。
「そ、うですか」
と、それだけ返すので精一杯。
そのまま私達は並んでロビーを歩いて行く。
すると、
「あ、おかえりなさい! お二人とも!」
元気な声が聞こえてくる。
本部ロビー名物、受付嬢のエルピナさんのお出迎えである。
「おう」
とだけカズヤさんは返し、
「ただいま戻りました」
と私は応じる。
「シータちゃん、戻ったら伝えるように言われたんだけれども、カズヤさんを七十二階のラボに案内して、とクシイさんが!」
「ん? 今日は一日休日だったはずなんだがな」
カズヤさんは首をかしげる。
確かに彼の言う通り、今日は一日自由だったはずだ。それがいきなり変更されるという事は……。
「どうしたんでしょう? 何かあったのでしょうか…」
問題か起きたのかと思い、気を引き締める。
「あー違う違う! そういうんじゃなくてですね! 個人的な事らしいです! 命令じゃなくて伝言です!」
ぶんぶんと激しくエルピナさんは両手を振りながら否定する。
「伝言ですか。分かりました、ありがとうございます。とりあえず、行ってみますね」
私はゆっくりと頭を下げる。
「いやいや! これも私の仕事の内ですから!」
慌てるエルピナさんを尻目にカズヤさんは冷静に、
「んじゃ行くか。案内頼む」
と言って、さくさくとエレベータへと向かって歩き出す。
そして、
「は、はいっ!」
と返事をして、私はその後を追った。
「ん、意外と早かったな」
部屋に入った私とカズヤさんをまず迎えたのはクシイのその言葉だった。
続けて、
「お兄ちゃん、シータさん! 遅いよ~!」
というリシェルの非難の声。
遅いのか早いのか一体どっちなのだろうと思っていると、
「遅いって、下で伝言を聞いてすぐに来たんだけどな」
そういって苦笑いを浮かべながらカズヤは歩いて行き、遠慮なしにリシェルの隣の椅子へと腰を下ろす。
部屋の中にはクシイ、リシェルとガルデルムの三人が、楕円形の机を囲む様にして座っていた。
私もカズヤさんの後を追って机の横まで行くと、クシイが隣に座るようにと椅子を引いて促す。
「それで、何の用だ? オレ達を集めて、やっと時空を越える方法を教えてくれる気になったか?」
私が座るや否やカズヤさんが話し出す。
すると、これにクシイが答えるよりも早く、
「何言ってるの、お兄ちゃん?」
リシェルがきょとんとした顔をカズヤさんに向ける。
「何って、だから一週間もここに缶詰にして、未だにFOLSの技術とやらを教えてくれる素振りすら見せずにいるから――」
カズヤさんが話し終える前に、ガルデルムが口を挟む。
「オレ達は既に一度、元の世界に戻っているのだがな」
その言葉にカズヤさんは神速の動きで顔をガルデルムの方へと振り向かせ、
「本当か!?」
怒気のこもった声をあげる。
それにリシェルが、
「本当だよ、お兄ちゃん」
と無邪気に答え、今度はクシイの方へとカズヤさんは神速で振り返る。
「どういう事だ? 二人には教えて何故オレには教えない!?」
先程よりも怒気の増した声で詰め寄る。
それに対して、クシイは特に慌てた素振りも見せずに、言い聞かせる様に口を開いた。
「落ち着け。今、その話のために呼んだのだ」
その言葉に、カズヤさんはちっと舌打ちをするが、素直に椅子から浮きかけていた腰を落ち着ける。




