姉妹ごっこ(新作エピソード)
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなく、池図女学院の2年生、みどり先輩こと鶸田みどりの実家、『キャットハウス鶸田』という猫カフェの前。
「よーし、準備はいいかい?」
道端に不審者が2人。
「ほんとにやるの……?」
1人はあさぎと、
「当然♪」
もう1人は白ちゃん……ではなくその妹改めあさぎのお隣さん、モーラである。
「はぁ……。『面白いとこ行くぞー!』なんて言うから期待してついて来てみれば……。」
「え?面白いとこじゃん。」
「猫カフェなんて1人で行けばいいじゃん……。」
「え〜〜〜〜、だって1人じゃボロ出るじゃ〜〜ん、」
「『ボロが出る』って……まさか白ちゃん先生のフリするつもりなの……!?」
「うん。」
「……やっぱ帰
「そういえばこの辺に美味しい甘味処があっ
「ぜんざいの為ならしょうがないか……。」
「そうそうしょーがないしょーがない♪」
モーラは満面の笑みであさぎの肩を強めに叩いた。
「……というわけで、だ。お店入ったらあたしはすみ姉として!あさぎはあたし改めすみ姉の妹として振る舞う……いいね?」
モーラは姉の白久澄河、改め白ちゃんを『すみ姉』の愛称で親しんでいる。
「モーラさんが白ちゃん先生のフリするのはともかく、なんで私が…………、あ"。」
「フッフッフ〜♪思い出したようだねえ?『みどり先輩』ちゃんの前ではあさぎを多重人格……しかも『白ちゃん先生』といるときは妹のフリしなきゃなことを……ッ!」
※ep.76『心変わり』参照
※ep.77『何者』参照
「もとはといえばみどり先輩がいるトークルームにしゃしゃり出て私のアカウントで姉妹喧嘩したからじゃん……。モーラさんのこと隠すの大変だったんだからね……!?」
「へへっ、さんきゅ♪」
モーラはあさぎの背中をパンパンと叩いた。
「……あー、そうだったー。モーラさんの存在バラせば解決だー。ちょうど本人いるし
「待て待て待て待てぇぇい!!??」
「……何?」
「練り切りもつけよう。」
「……おっきいやつ?」
「おっきいやつ……!」
「……。」
「……。」
あさぎとモーラはしばし無言で睨み合った。
「……へいへい。」
「交渉成立だね♪」
あさぎは悪そうな笑みを浮かべて舌なめずりをした。
「じゃ、そろそろ開店するし入」
不意にあさぎがモーラの手を引っ張って先頭に立った。
「早く行こ?……『すみ姉』♪」
「うわっ、切り替え怖……っ。」
2人はキャットハウス鶸田のドアを潜った。
「いらっしゃ……あさぎさんに、白久先生?」
受付で出迎えたみどり先輩がポカンと口を開けていた。
「おはよう鶸田さん♪」
「お、おはようございます……。あの、これはどういう……。」
「みどり先輩はもう事情を知っていますし……、ここなら『姉妹で』おでかけできるかなって。」
あさぎは2人に聞こえない音で舌打ちした。
「あ、ああ!そういうことでしたか!」
「ここって家族割、あるかしら?」
「すみません、店長の意向で家族割は無いものでして……。」
「店長?」
「私の母です。『猫カフェなのに人間同士でちちくりあってんじゃねえ』ということでカップル割ともども消滅しました……。」
「お、おう……。」
「あ!でも別に団体様も受け付けてますし、お友だち同士や家族での来店も大歓迎ですからね!?」
「へ、へえ……。」
「助かります。お代はこちらで……行こ?すみ姉。」
「え、もう少し鶸田さんとお話してからでも
「人間同士でちちくりあってると店長さんに消されちゃうみたいだし……!」
あさぎはモーラを見せの奥へと引っ張っていった。
「ご、ごゆっくり〜……。」
ふれあいルーム。
「……ここなら素で大丈夫だよ。」
「『ここ』って、まだ全然店内じゃん。」
あさぎは流れるような手つきで猫じゃらしをフヨフヨと揺らしてそこら辺のねこを戯れさせた。
「……みどり先輩、ねこに好かれ過ぎて営業中はふれあいルーム出禁だから。」
「そんな理由で出禁とかあんだ……自宅なのに。」
「ほらほらどうしたの?ご所望のねこが砂利のように転がってるよ遊ばないの?」
「言い方。」
「それとも……、本当に会いたいのはねこじゃなくてみどり先輩の方だったり?」
「もうそれ答えわかってて聞いてるよね。」
「まあね。」
「なんて悪い子なんだ……。」
「……で、お眼鏡にかなった?」
「いんやぁ〜、なかなかに面白そうな子だったね♪」
モーラはねこの前足を持って赤ん坊のようにヨチヨチと歩かせた。
「何その遊び方……。」
「しょーがないじゃん、遊び方なんて知らないんだし。……コイツも尻尾振ってるし喜んでんじゃない?」
「ねこはこれが楽しいのか……?」
「あ!そういえば。」
「どうかした?」
あさぎはその辺に転がっていたねこを1匹ずつモーラの左右の肩に腹ばいに引っ掛けた。
「他人にねこ掛ける方がどうかしてると思う。」
「でも尻尾振ってるよ?」
「……じゃあいっかあ。」
「で、何思い出したの?」
あさぎは足元に寄って来ていたねこを抱え上げた。
「いや〜、『出禁』で思い出したんだけどさ?昔すみ姉動物にめっちゃ嫌われてたけど今もなん?」
「そりゃあもう。風で落ち葉吹っ飛ばすヤツみたいにブワーって感じ。」
あさぎはモーラの頭にねこを引っ掛けた。
「……重いんだけど。」
「それくらい我慢してよ、ねこ尻尾振ってるよ?」
「じゃあいっかあ……って、次のねこを装填するんじゃない。」
「ダメ?」
「ダメ。」
「この子も尻尾振ってるよ?ほら。」
あさぎはライオンキ○グの冒頭のようにねこを抱え上げてモーラに見せつけた。
「なんでこの子らこんなに人に慣れてるん?カカポか。」
「焼いてみる?」
「食べ比べすな。」
「カカポ食べたことあるの……?」
「流石にない。」
「ま、流石にぜんざいと練り切りよりは美味しくないか……。」
あさぎはしぶしぶねこを下ろした。
「そうそう、そもそも猫が美味しいとも限らないんだし。」
「それもそっか。」
「……にしてもコイツら全然離れようとしないな。」
「オプションに松明あったっけ……。」
「ヒルかっ!?」
「でも猫は『吸う』って聞くし……。」
「吸ってんの人間側だから。」
「まさかの踊り食い……!?」
「いったん食べることから離れろ?」
あさぎとモーラはひとしきり猫と戯れると、キャットハウス鶸田を後にした。
「……っし。とりあえずバレてないかな。」
「さすが実の妹。」
「18年一つ屋根の下だったからね〜♪」
「慕ってるんだね。」
「……お?妬いた?ジェラった!?フッフ〜ン、良いんだよ良いんだよ?ちょ〜〜どここに絶好のお姉ちゃん候補がいることだし!モーラ姉ちゃんに妹欲をぶつけちゃっても♪」
「めんどくさ。」
「5文字で振られた……ッ!?」
「っていうか……もしかして、私におねーちゃん扱いされたくてわざわざみどり先輩の前に私引っ張って来たの?」
「ギクゥッ!?」
「…………。」
「あうっ!?幻滅しないで!?」
「…………、はぁ。」
あさぎは小さくため息をつくと、モーラの先頭に立って手を引っ張った。
「さっさと行くよ?」
「はいはい。……ちぇっ、作戦失敗か〜。」
「私をそう簡単に手玉に取れると思わないことだね、」
あさぎはモーラの手を離すと、ズンズンと前を歩いて行くと、
「モーラ姉…………、なんて♪」
モーラに背を向けたまま、誰にも聞こえないような、小さな声で呟いた。




