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マッサージ

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「……、」




ひいろは拗ねていた。




「……ねえ、なんでひいろちゃんご機嫌斜めなの?」


「あさぎちゃんに教頭先生取られ


「てないし……!土曜の夜はおばさん家泊まったし……!」


「これは……かなりキテるわね。」




今日は月曜日。先週の金曜日に続いてあさぎは教頭先生にお呼ばれしていた。




「しょうがないよねぇ、あさぎちゃんお顔は良いし。」


「そりゃコワモテのワタシよりあさぎの方が良いよな……。」


「こら!ひいろちゃんで遊ばないの。」


「いや、良いんだ白ちゃん。可愛げのないワタシはみんなのおもちゃにされてるのがお似合いだ……。」


「ユー、アー、トォォォオオイ!!」




きはだの視界が白ちゃんの掌で塞がれた。




「い"た"た"た"た"指が!?顔、潰れ……!!??」


「お前をデッドストックにしてやろうか?」


「……すみませんでした。」


「デッドストック……不良在庫、つまりゴミか。はは……。」


「あ、いや!?ひいろちゃんに言ったわけじゃないのよ!?」


「いいんだ白ちゃん。ワタシはおもちゃなんかじゃない、飽きたらすぐに捨てられちゃう……ゴーミだーー♪」


「うわぁ〜ん、ひいろちゃんが壊れちゃったよぉ〜!?」


「ひいろちゃんの自己肯定感がマリアナ海溝に……。」


「どうするの白ちゃん、このままだと教頭先生があさぎちゃんを養子にしちゃうよぉ?」


「ははっ。ワタシは、法定順位まで負けるのか……。」




ひいろは膝をつき絶望した。




「相続争いしないの。」


「これはもうひいろちゃんのために土下座で頼むしかないねぇ?」


「なんて頼むのよ……。」


「『不宵、白久澄河(しろひさすみか)、ケジメつけさせて頂きやす……!』って。」


「任侠映画かっ!」


「義理堅いでしょ〜?」


「指置いてって何になるのよ。」


「エンゲージリング付けられないねぇ?」


「白ちゃん、ワタシのためにそこまで……。」


「し、な、い、わ、よ!……っていうかしれっと2本持っていくなっ!?」


「そんな、ご無体な……。」


「ひいろちゃんはいちいち絶望しないのっ!ただマッサージ習ってるだけでしょう……。」


「可哀想なひいろちゃん……こうなったら、みどり先輩にまさぐられてもらうしか


「マッサージを如何わしく言い換えないの……!」


「関係ない先輩を巻き込むのはダメだろう。」


「ドンマイ、みどり先輩……。」


「…………仕方ない。白ちゃんでいいか。」


「なんで妥協されたみたいになってんのよ。」


「白ちゃんマッサージされたくないのぉ?」


「そりゃ、背中のエアーズロックが無くなるなら願ったり叶ったりだけど……。」




白ちゃんの凝り固まった背中はエアーズロックの様に重く、硬いぞ!




「ひいろちゃん…………、よしっ!」


「犬じゃないんだから。」


「よし。じゃあ白ちゃん向こうを向いて




「そのマッサージ、待った!!」




部室のドアが勢いよくぶち開けられると、そこにはあさぎが腕を組んで仁王立ちしていた。




「「「あさぎ(ちゃん)……!?」」」


「私もいるわよ♪」




教頭先生も来ていた。




「おばさん……!」




ひいろはあさぎを跳ね除けておばさんの胸に飛び込んだ。




「ごめんねひいちゃん、不安にさせちゃったわよね?」


「ううん……大丈夫。」




目に涙を浮かべて見上げるひいろの頭を、教頭先生は優しく撫でた。




「ひいちゃんは強い子なのね。」


「うん……。でもなんであさぎちゃんを?」




(((教頭先生の前ではそう呼んでるんだ……)))




「それはひいちゃん、あなたにもっと高みを目指して貰いたいからよ。」


「高み?」


「ひいろちゃんにもっとマッサージが上手くなってもらう為には、ライバルが必要でしょ?」


「なるほど、さすがおばさん♪」


「私、当て馬かあ……。」


「あさぎちゃんドンマイwww」


「帰っていいかしら……。」


「コホン。」




ようやく本題、と言わんばかりに教頭先生が咳払いをして注目を集めた。




「じゃあ……あさぎちゃん?やっておしまいなさい!」


「……どれ、修行の成果を見てみますかね?」




ちょっとダルそうに肩を回してあさぎは白ちゃんの後ろにスタンバイした。




「おお……!?あさぎちゃん、なんか強キャラっぽいよぉ……!?」


「へへ。じゃあ白ちゃん先生、準備はいいですか?」


「はいはい。」


「……溶けますよ?」




あさぎは、暗殺者が脇差しで背中を穿つかのように、白ちゃんの背中に親指を突き立て




「そんなおおげ




……押し込んだ。




「さぁぁぁあああ!!??//////」




以前あさぎの全力の拳のラッシュを弾き返した白ちゃんの背中に宿るエアーズロックは、意図も容易く瓦解した。




「おお〜。」


「ぉ"……//////」


「…………、終わりました。師匠♪」




白ちゃんが力無く床に崩れたのを見届け、あさぎはマッサージの完了を宣言した。




「流石ね、あさぎちゃん♪」


「……すごい。ワタシでもここまでは……。」


「じゃあ、高みで待ってるよ……ひいろ。」




そう言い残すと、あさぎはそのまま部室を後にした。




「うわぁ少年漫画の展開だぁ。」


「じゃあ私達も行きましょうか、ひいちゃん♪」


「へ?行くってどこに?」


「ひいちゃんも負けてられないわよね?」


「!……うん♪またマッサージ教えて、師匠!」


「はいはい♪」




干からびたミミズのように床に這いつくばる白ちゃんを他所に、ひいろと教頭先生は手を繋いで部室を後にし、




「わたしもか〜えろっ。」




今日はお開きとなった。




「ぉ"……///」








あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ!


きはだ:おてて繋いでどこ行ったのぉ?


ひいろ:おばさん家でお泊まりしてるぞ!


白ちゃん:ほんっっとに仲良いのね……


きはだ:あれぇ?白ちゃんまだお疲れぇ?


あさぎ:明日またマッサージしましょうか?


白ちゃん:いや、遠慮しとくわ


きはだ:また鳴けばいいじゃん


ひいろ:えっっ


白ちゃん:尊厳と引き換えなら尊厳をとるわ


あさぎ:残念……きはだやる?


きはだ:やるのもやられるのもゴメンだねぇ


ひいろ:高め合わないのか?


きはだ:きはだちゃんがこの世で最も忌み嫌う言葉は『努力』ですぜ?


白ちゃん:『高め合う』ってことは、ひいろちゃんもあんなことできるの……?


ひいろ:いや、お昼のワタシなら二撃ってところだな


きはだ:攻撃判定で草ァ!

あさぎ:へ〜、今なら一撃なんだ?


ひいろ:師匠に稽古してもらったからな!


あさぎ:流石お師匠様だね


きはだ:2人とも教頭先生のこと師匠呼びなのぉ?


あさぎ:流石に修行の時だけだよ


ひいろ:ワタシも普段はおばさん呼びだ


きはだ:教頭先生、何者なのぉ……

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