おお神よ
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「う〜ん……どうしたものか。捨てるのもなぁ……。」
「持っておけばぁ?」
あさぎ、きはだ、白ちゃんは机の真ん中に鎮座する1つのお守りを囲み額を突き合わせていた。
「でも『安産祈願』なのよねぇ……。」
お守りには、デカデカと刺繍された金色の『安産祈願』の4文字が神々しさに近い存在感を放っていた。
「白ちゃん使う〜?」
「使うと思う?」
「「すみませんでした。」」
「謝るのやめて哀しくなるから……。」
「やっぱりあさぎちゃんが貰ったんだしあさぎちゃんが持ってればぁ?」
因みに、このありがた〜いお守りはあさぎのお隣に住むモーラから譲り受けたものである。
「しっかしあの愚妹も迷惑なもん渡してくるわねえ。私から文句言っておこうか?」
「そいつぁモーラさんの思う壺ですぜ白ちゃんよ。」
「そういえば、くれたとき『見せびらかしてもいいんだよwww』って言ってたなあ。」
「確信犯じゃない……。」
「とりあえず部室にでも飾っておきます?」
「やめとけやめとけ。」
「神様大困惑www」
「あれ?きはだって神様とか信じるんだ?」
「ちょっと意外かも。」
「はぁ?信じるわけないじゃん。」
「あ、そうなんだ……。」
「信じられるのは手前と銭だけよ。」
きはだは両手の親指と人差し指で丸を作り、やれやれとでも言うように首を左右に振った。
「荒んでるなあ。」
「どんな人生送ってきたらそうなるのよ……。」
「こぉ〜んな人生。」
「そっかあ。じゃあモンスターに食べられそうになった時、きはだは『おお、神よ……!』って叫んだり十字架握ったりしないわけ?」
「大丈夫あさぎちゃん?最近B級映画に頭侵食され過ぎじゃないかしら……。」
「しないねぇ。縮こまって命乞いするくらいなら、関節から苦い汁でも出した方が生存率上がるんじゃないかい?」
きはだの声色には、乾いた嘲笑が混ざっていた。
「テントウムシかっ!」
「テントウムシって漢字で書くとお天道様の虫だものねえ。」
「お〜、白ちゃん詳しいねぇ。」
「流石です、レディーバグ……!」
「テントウムシやないかいっ!?」
「ま〜、神様ってなると宗教が絡んでくるものね。信じるか信じないかは
「「あなた次第です……ッ!」」
あさぎときはだはピッタリと息を合わせて白ちゃんの方を力強く指差した。
「そこまでオーバーにやると都市伝説みたいな胡散臭さが出てくるわね……。」
「白ちゃん先生は信じてるんですか?」
「そうね。モーラのこと、死んだと思って神を恨んだ日もあったけど……。」
俯く白ちゃんは、どこか憂いを感じさせる表情をしていたが、それはどこか幸せそうでもあった。
「今はこうして迷惑な贈り物押し付けるくらい……元気なあの子とまた会えたんだもの。お礼くらいはしてもいいかも知れないわね♪」
「ケッ。」
きはだの悪態が白ちゃんの自己陶酔を吹き飛ばした。
「手前の都合が悪くなったら恨まれんのに、手心加えてもお礼の一言で済まされてご満悦たぁ、神様ってのも随分と都合の良い存在ですこと。」
「あ〜あ、せっかく白ちゃん先生が年甲斐もなく自己陶酔してたのに……。」
「いいのよ、人それぞれなんだから。……あと『年甲斐もなく』は余計よ。」
「おお、対応が大人だ……!?」
「神様の話題はデリケートだからねえ、話す時は5割増して大人にならないと。」
「ちゃんちゃんこ着るぅ?」
「え?ちゃんちゃんこ……?」
「定年おめでとうございます。」
あさぎときはだの視界が白ちゃんの手のひらで覆われ、こめかみに指が食い込んだ。
「「あばばばば……!?」」
「私ゃまだ20代じゃ……!」
2人が悶絶している間手持ち無沙汰だったので、白ちゃんはテーブルの上に置かれた『安産祈願』のお守りをいじり出した。
「……ったくあの子は。」
「それ、どうしましょうかね?」
「燃えるゴミで良いよぉ。」
「後ろめたさとか無いんか。」
「お生憎、きはだちゃんにそんな信仰心は無ぁぁあいッ!!」
きはだは両手で大きくばってんを作って見せた。
「おお、今日のきはだは悪魔っぽいね。」
「にゃはは、それで神とやらを駆逐できるのであれば喜んで悪魔に堕ちようぞ。」
「じゃあそんなきはだに……、ほいっ。」
あさぎはきはだの手に『安産祈願』のお守りを握らせた。
「ぎゃぁぁぁあ!?溶けるぅ……!?」
きはだは慌ててメンコのようにお守りを放り投げようとしたが、あさぎに手を握り込まれていて手放すことができずにいた。
「もしかしてきはだちゃんって、悪霊や妖怪の類……。」
「や、そんなわけないよねぇ普通に考えて。」
きはだはケロッとした様子で、洗っていない靴下でも触るようにお守りの紐の先っぽを摘んだ。
「……ま、いらないんだけど。」
「じゃあ捨ててもいいから。今日のところはお試しってことで取っといてよ。」
「もしかしてあさぎちゃん、体良くお守りを処分しようとしてないかい?」
「ギクゥ……ッ!!??」
「今どき『ギクゥ』なんて言わないわよ。」
「こりゃ図星ですなぁ。」
「あ、いやそんなことはなくて……、そ、そう!これは自由研究!信仰心マイナスにカンストしてるきはだにお守り持たせてみた〜!…………的な?」
「それ自由研究っていうか、ユー○ューバーじゃない……。」
「……だって、なんか後ろめたいじゃないですか、こーゆーの捨てるのって。」
「……だそうよ、きはだちゃん?」
2人がきはだの方を向くと、きはだが紐先を摘んだお守りをデコピンして遊んでいる所だった。
「う〜ん、理解不能……ていっ。」
「……。」
「うんうん、じゃあやっぱりきはだが持ってたほうがいいねこれは。」
「……クソの役にも立たないゴミをいつまでもとっておくほど、わたしいい子じゃないんだけど。」
「『いつまでも』ってことは、それなりに取っておいてくれるんだ?」
「……。」
牽制したつもりのあさぎから思わぬ応えが返ってきて、きはだは面食らった。
「…………白ちゃんこれいら
「ない。」
「「えぇぇ……。」」
「良いじゃない、とりあえず持っとけば。
「……あ、良いこと思いついたかも。」
「言うてみい。」
「きはだに子どもが生まれたら、それ一緒にお焚き上げしよう……!」
「あら、良いじゃないそれ。」
「うんうん、そうすればいつまでも取っておく必要はなくなるし。……じゃあ、そういう約束ってことで!」
「……その前にわたしが死んだら、あさぎちゃんも神様を恨むことになるよ?」
「私が信じてるのは神様じゃなくてきはだだよ?人間だったら約束くらい全然破るよね?」
「…………。」
きはだは言いたいことがうまく言えず再び黙ってしまったが、やがて腹の奥から言葉を搾り出すように口を開いた。
「『約束』、かぁ。………………こりゃ神様も取りこぼすわけだわ。」
あさぎと白ちゃんが黙って見守っていると、いつの間にかきはだの表情からはさっきまでの荒んだ悪の気が失せていた。
「1人との約束でも、わたしには手に余る。」
「なんのこと?」
「さあね。きはだちゃんはクールに帰るのだぜ……♪」
安産祈願のお守りはきはだの手に渡った。
あーかい部!(4)
きはだ:投稿……はしないっ!
あさぎ:お疲れ
きはだ:まったく迷惑なもの押し付けてくれちゃって……
ひいろ:捨て猫でも拾ったか?
きはだ:それよりよっぽどタチの悪いものさ
白ちゃん:随分な言いようね
ひいろ:気になるから読んでくる
ひいろ:なんか今回重くないか?
きはだ:守れない約束ほど重くのしかかるものはないのさ
あさぎ:守るよ、きはだは
ひいろ:子作りするあてでもあるのか?
きはだ:ないわっ!?
白ちゃん:あったらびっくりよ
きはだ:ひいろちゃんと違ってねぇ!
ひいろ:なんでワタシにあたるんだよ
あさぎ:ひいろは神様とか信じてる?
ひいろ:秘密だ
あさぎ:つれないなぁ
白ちゃん:まあ、信じるも信じないも
白ちゃん:あなた次第です!
あさぎ: あなた次第です!
きはだ:信じてないとは言わないんだ
白ちゃん:こら、あんまり詮索しないの!今の時代そーゆーのデリケートなんだから
あさぎ:国によっちゃ戦争の火種にもなりますからね
きはだ:モーラさん自分で聞いておいて嗜めるんだ
白ちゃん:え?
ひいろ:え?
あさぎ:おっとバレてたか。やるじゃん
あさぎ:いつから?
きはだ: 知ってるモーラさん?人間って約束くらい全然破るんだって〜
あさぎ:アッハッハ完全にあたしの墓穴ってわけだ
あさぎ:そんじゃ、元気な子を産むんだぞ?じゃねっ!
白ちゃん:今の時代その発言はアウトなのよ
白ちゃん:ってもういないか……




