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背負い投げ

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「きはだ〜、今日ひいろ来れな




あさぎが部室のドアを開けると、




「うんうんやっぱり押し倒そう。」

「押し……ええ!?///」




そこは恋愛相談所だった。




「…………失礼しました。」




あさぎは開けていたドアをそっと閉じた。




「……スゥ、ハァ……。よし!」




きはだに恋愛相談なんて、きっと何かの見間違いだろう。呼吸を整えてもう一度……。


と思ったら中からドアが開けられた。




「何度見たって変わんないよぉ?」


「あ……きはだ。」




あさぎ入室。




「あっ、サングラスの……!」


「サングラス?」


「この前、みんなで猫カフェ行ったでしょ〜?」


「あ〜。4人ともサングラスだったか……。」




きはだに恋愛相談をしていたのは、前に白ちゃんを交えて4人で行った猫カフェにいた子……改め、保健室でひいろに手当して貰っていた子(先輩)だった。




「はっ!?すみません……。」


「ああいや、大丈夫です。寧ろ不審者がゾロゾロと押し寄せてしまってすみせん///」


「反省しろぉ?」


「きはだも含まれてるんだよ……!」


「フフ♪面白い方々ですね。」


「いえ、それ程でも……。確か名前は、


「鶸田(ひわだ)みどりです。こうして、ちゃんとお話しするのは初めてですね。」


「青野あさぎです。……ちょっと失礼。」


「?」




首を傾げてキョトンとする先輩を置いて、あさぎはきはだを廊下に連れ出した。




「で、これどういうこと?」


「どういうことって、鶸田先輩の恋愛相談に乗ってるだけだよぉ?」


「さっき『押し倒せ』とか言ってたよね……!?」


「うむ。さすればこの恋、成就するであろう……。」




きはだは誇らしげに目を瞑ってゆっくりと頷いた。




「もっと過程とかさぁ……。そもそもちゃんと相談に乗ってあげないと!」


「じゃああさぎちゃんならどんなアドバイスするのぉ?」


「私なら……まずは手を握ったり、


「「ふむふむ。」」


「お昼ご飯を一緒に食べたり、


「「なるほど。」」


「2人きりの時間を作るとか?」


「いいねいいねぇ。」

「参考になります……!」


「ん?」




あさぎがきはだの後ろを見ると、きはだの背後で鶸田先輩がしゃがんでメモをとっていた。




「え"……!?」


「すみません、仲の良いお二人の会話が参考になるかもと思ったら、いてもたってもいられず……///」


「あ、はいそうですか……。」

「照れますねぃ。」




鶸田先輩はけっこう行動派。




「手を握るところまでは済ませているので、次はお昼ごはんですね!」


「え?済ませたんですか?」


「ほほぅ、これはこれは興味深いですねぇ?お差し支えなければ話して貰ってもぉ?」


「えと……///て、手を握った、といっても……///その……、手のひらをこう、指で……マッサージ、しました……//////」




「「そっかぁ〜。」」




きはだとあさぎは思わず顔面の筋肉が緩んだ。




「となると次はお昼ですが……やはり、お弁当とか


「「重い重い重い重い!?」」


「え?」


「それはもう少し段階を踏んでからにしましょう……!」

「うんうん!」


「そう、ですか?『愛妻弁当』とか、作ってもらえたら嬉しくないですか……?」


「「まだ妻じゃないからっ!?」」


「はっ!?……すみません、つい///」




((『つい』……!?))




「とりあえず2人でアシストしますんで、まずはお『お昼を2人で食べる』から始めましょう……!」


「ひいろちゃん、お婆ちゃんのお弁当大好きだもんねぇ。」


「う"っ……確かに、お袋の味に勝とうとするのは無謀ですね……。」




((勝つつもりなんだ……。))




「まあお昼は後日ってことで、

「今日は2人きりになってみよう。」


「はいっ!……ええ!?///まだ心の準備が


「今ごろ、ひいろちゃんは屋上のお掃除をしているはず……!」


「なんか最近定期的にやってるよね。」


「流石赤井さん!当番でもないのに、なんて殊勝な……!///」


「う〜む、これがほんとの『色メガネ』。」


「サングラスかけてたのは私達の方だったんだけどね……って失礼だな!?」


「大丈夫だよぉ、聞こえてないから。」




きはだが指差した先で、鶸田先輩は指を絡めて両手を握り、なんだかキラキラしたピンク色の空気を周囲に纏っていた。




「完全に自分の世界に入ってるなぁ……。」


「鶸田せんぱぁい?ひいろちゃんに会いにいくよぉ〜。」


「……はっ!?はいっ!」




(鶸田先輩、きはだに手綱を握られつつあるな……。)




3人で屋上へ通じる扉の前へ。




「じゃあ達者でやるんだよ?」


「今生の別れじゃないんだから……。」


「はいっ!」


「突っ込み無用かあ。」


「ありがとうございました、黄山さん!青野さん!」


「チッチッチ。」


「きはだ?」


「そこは『きはだちゃん』だろう?いつまでも他人行儀じゃひいろちゃんとの距離も縮まりやせんぜ?」


「きはだは先輩相手に距離詰めすぎなんだよ。もう背負い投げの間合いなんだよ。」


「そう……!『一本取るには踏み込む』、あさぎちゃんも良いこと言うねぇ。」


「なんか上手いこと受け流された……。」


「柔道だけにねぇ……ッ!!」


「『恋は背負い投げ』ですか……フフ♪やっぱり面白いですね。『きはださん』、『あさぎさん』♪」




(ちょっと変な気もするけど、まあいっか。)




「「行ってらっしゃい、『みどり先輩』!」」


「はいっ!」




みどり先輩は2人の声援を背に、ひいろから一本取るべく、光刺す屋上へと踏み込んだ。




このあと、ひいろを背負い投げして顔を真っ赤にし2人の元に逃げ帰って来たみどり先輩を引きずって4人で屋上の掃除をしたのはまた別のお話……。






あーかい部!(4)




あさぎ:投稿完了


ひいろ:掃除手伝ってくれてありがとうな


きはだ:ひいろちゃん、その言葉は取っておくんだ。1番欲しがっている人のために……!


ひいろ:?


あさぎ:ダメだこりゃ

きはだ:ダメだこりゃ


ひいろ:なんなんだよ……




ひいろ:それでワタシは背負い投げされたのか


あさぎ:災難だったね


きはだ:あさぎちゃんが背負い投げの間合いとか言うからぁ……


あさぎ:そこから実際に投げるなんて誰も思わないじゃん


ひいろ:とりあえず嫌われてなかったみたいで良かったよ


白ちゃん:誰も部室にいないと思ったらそんなことになってたのね


ひいろ:あと、あんまり捏造してみどり先輩に迷惑かけるなよ?


きはだ:こいつ、ナチュラルに距離詰めてやがる……!?


あさぎ:おめでとうございます、『みどり先輩』……!


白ちゃん:2人ともすごい入れ込み様ね


きはだ:生で見てないからそんなこと言えるんだい


あさぎ:とりあえず生で


白ちゃん:ビールじゃないんだから


ひいろ:お酒呼ばわりは失礼だろう


あさぎ:だ〜めだこりゃ


きはだ:酒!飲まずにはいられないッ!


白ちゃん:おい未成年

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