#7 アードベッグ・ガリレオ 2
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー
そんな中、
「あれー、ないな?どこやったんだっけ?」
カウンターの向こうでかがみながら必死で何かを探すバーテンダーの本山さんの声がした。このバーのカウンター内では通常の8倍位、ものがよく無くなる。
注文を取ったときに書いたはずのボールペン、数秒前までグラスを混ぜていたはずのマドラー。お店の電話の子機に至るまで常に何かが神隠しの如く忽然と姿を消し、彼女の置いた記憶のない場所から現れるのだった。
「また?今度は何がないの?本山さんのお乳上なら先に生まれたHカップのお姉さんに何カップか持ってかれてるからなくしたっていうか最初っからないってい……」
言い切る前にバキ、という大きな音が生まれカウンターとの境目となる腰の高さほどのスイングドア、ウエスタン扉と呼んだ方が想像できるだろうか。しゃがみながらあれに左手をかけていた彼女が壁からドアを引き剥がしたようで私に背を向けながら
「……先生、今……何かおっしゃいました……?」
と静かに声をかけてきた。
その恐ろしさのあまりに
「いえ、何でもないです。いやー、このバーほんとよくものがなくなるねえ、小人か妖精が隠してるとしたらサッカーチーム位いるねえあはははは。えー…あの…チェ、チェイサーもらえるかなー?」
すくっと立ち上がると彼女は無言で水をコップに注ぎターンと勢いよく私の目の前に置いて再び背を向けガサゴソと棚を探し始めた
「……発射されました、無事大空へと飛び立っていきました……」
「あっ」
そんなやりとりをしていたことですっかり打ち上げの瞬間を見逃してしまい、ロケットはどこまでも突き抜けていきそうな深い青空へと吸い込まれるように小さくなり消えていった。
次回へ続く




