#6 ジャノーxoとナポレオン 10( #6 LAST )
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
「一緒に…入っている一万円札は…おじいちゃんからの……最後のお小遣いです……何か……困った時に…使…」
本山さんはそこまでしか読み上げられずその場に泣き崩れてしまった。
「お孫さん想いのいいおじいちゃんだったんだね」
私はしみじみとしながらグラスのジャノーナポレオンを飲み干し、カランという氷の音立てながらカウンターの上に置いた。
「まあ、これがもしあの時のxoってんならそいつを後生大事にして千尋ちゃん宛の手紙まで隠して託すってこと考えたら答えは何となーく見えるんじゃあないかね」
言葉にできずにただ頷くだけの本山さん。
「いやあいい酒の肴だわ。ジャノーxoが欲しいがそれはなさそうだからナポレオンのほうを1杯もらおうか」
井上さんが右手の人差し指を立てる。
「私ももう1杯」
合わせるように私もおかわりを頼むことにした。
「……ありがとうございます……今日は……特別価格でご提供させていただきますね……」
泣きながら本山さんはゆっくりと立ち上がりジャノーナポレオンのコルク栓を抜いた。
「おお、泣かせるねえ。いつもの半額とかかい?」
井上さんが嬉しそうに声をあげる。
「いえ、一杯八千円でご提供させていただきます」
「はあああ?ちょ、ストップ、ストップ!キャンセルして、やっぱキャンセルで!」
手慣れた手つきで素早くロックを2杯分作り上げていく。
「天国の本山さんのお祖父さーーーーーーん!お孫さんはすっごくしっかりしてらっしゃるからなんにもご心配入りませんよおおおおおおおおおお!」
口に手を添えて天井に向けてその日一番大きな声で叫ばざるを得なくなるほど目の前のジャノーナポレオンは悲しいほど美味しそうにみえた。そしてふと私だけが気が付いてしまった。井上さんの提案した利き酒ゲーム。
仕掛ける側がいくらでも勝敗の操作ができてしまうことに。
しかし私はやたら値の張る一杯とともにこの事実を飲み込んだのだった。
次回へ続く




