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#6 ジャノーxoとナポレオン 4

警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。


縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……


BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー


「ははは、今日はあの爺さんの何の話をしたらいいかねえ」

 

本山さんは自分の祖父の日常の顔はよく知っているだろう。しかし働いているときの彼、バーテンダーとしての彼の数十年間はおそらく知らない。話を聞き、この店の元々の姿、スタイルに近づきたいのかもしれない。単純に彼が好きで自分の知らない一面を知る楽しみもあるのかもしれないが。


「なんでもいいんです、祖父は元々口数少ないタイプだったから自分からはあまり話してくれなくて」


「そっかー、……そうねえ、と言っても結構色々あの祖父さんのことは喋り尽くした気がするけどなあ」


 

頭をポリポリとかきながらグラスに注がれ手渡されたオールドのロックに口をつける。


「あ、あの話はしてなかったか」


 

井上さんはクイっと飲みグラスを置いた。


「あの話って?」

 

本山さんはカウンターの向こうから前のめりになって井上さんを見つめる。


「もう随分昔の話だから時効だろうと思って話すんだけど。昔、あの爺さんがまだ二十代後半とかの頃。今の千尋ちゃんみたくこの店のバーテンダーなりたての頃さ。一組の男女のカップルっぽい、というよりはまだ付き合ってすらなさそうな二人組が来てね」


「ほう」

 

横で聞いていた私が不意に相槌を売ってしまった。


「俺はちょっと離れた席で独り飲みながらみてたんだが、女がトイレで席を立った時に男が胸ポケットから包み紙を出して、中にあった粉末をパラパラと女のカクテルに入れ出してね」


「え?」

 

本山さんが驚いた表情を浮かべた。


「俺もびっくりして思わずカウンターの向こうの祖父さんの方見たら今の千尋ちゃんみたいな顔しててね。直感的にこれは睡眠薬とかそんなんかなって俺は思っちゃってね」


ロックグラスを振って中の氷をカラカラと回しながらなおも井上さんは続ける。


「祖父さんもきっと同じことを思ったんだろうな。で、女が戻ってきてグラスに手を伸ばす前に咄嗟に水をどうぞって言いながらわざと女のカクテルにコップぶつけて倒して中身をカウンター上にぶちまけて」


「なるほど」

 

私もそこまで聞いて納得した。


「そう、危ないからそうやって飲めなくさせてやれってね。で、お詫びにって代わりのカクテルを目の前で作ってやって難をのがれたんだよ。見過ごせなかったんだろうな」

    

「すごい、おじいちゃん……」

 

感心する本山さん。

次回へ続く

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