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俺のマスターは吸血姫~無双の戦鬼は跪く!~  作者: 黎明煌
第十章 「無双の戦鬼と、二度目の夏」
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666 「女の子にされてしまう……!!」



 フニフニ、クリクリ……ピンッ。


「──よし、今宵の施術はこれくらいにしておこう」

「はぁ……♡ はぁ、ん……♡ あ、ありがとう、ございました……」


 日付も変わろうかという、吸血鬼と酔っ払い以外が寝静まる頃。場所はブルームフィールド邸、大浴場。

 目前にはツルツルとした風呂椅子に腰かけ、断続的に熱い吐息をつく姉上の姿。局部を隠すよう身体にタオルを巻き付けているが、彼女が大きく呼吸をする度に、タオルから零れ落ちてしまっている乳房はたゆんと柔らかそうに揺れている。

 やるせなさそうな吐息の理由はもちろん、先程まで対面に座る弟に、その乳房の敏感な部分を指でこねくりまわされていたからに相違ない。我が熱心さの甲斐もあり、先刻まで恥ずかしそうに隠れていた桜色の先端も、今やピンとよく屹立しておるわ。


「ふぅ……」


 そんな姉上の艶姿を前に、俺は一仕事した後の如く、額に浮かんだ汗を拭う。

 かねてより仰せつかっている、姉上の"こんぷれっくす"解消……陥没乳頭への按摩。それを今日も無事に終えることができた。

 まだ試行回数こそ少ないが、着実にその成果は見え始めている。我こそは無双の戦鬼……たとえ数ミリ程度の違いであろうが、姉上の豊満なる乳房の成長を見逃すような不出来な弟ではないのだ……。

 その充実感が、俺という男をまた一つ上の位階へと押し上げてくれる。姉上の健康に寄与できることは、その下僕としても弟としてもこの上ない喜びであるがゆえに。そう、最早俺は医療従事者を名乗ってもよい段階に来ているのかもしれないな……。


「はぁ……はふ……ふぅ……ぁ……」


 妥当な自己評価をしていれば、息が整い始めた姉上が、恥じらいつつタオルをいそいそと巻き直す。しかし彼女の胸部は、そのような薄布一枚で隠しきれるようなモノではない。その境目は先端が隠れるか隠れないかの瀬戸際にあり、ざっくりと深い……いや、最早長いと呼ぶべき谷間をこちらに見せつけている。その断崖へ向かって伝う汗と水滴が大変に色っぽい。

 うぅむ。やはり、我が姉上の乳は別格だ……柔らかいというのに張りがあり、ふわふわしているというのにズシッと重い。感度も良好である。この至高の乳房に触れることを許される俺は、きっと特別な存在なのだと感じる……それはもちろん、姉上とて同じ。なぜなら姉上も、俺にとって特別な存在だからだ……何を言っているのだ俺は。しかしこうした下らん思考を常にせねば、礼儀としてタオルを巻いておるとはいえ、我が股間の童子切安綱がつい鞘走りそうになるのだ。己の身体的特徴に真剣に悩む姉上を前に、下卑た欲を見せつけるのは悪鬼とて忍びない。


「──っ」


 だが、どうしたことか。

 姉上がなにやら目を見開き、その瞳の色を驚愕で彩っているではないか。その視線の先にはもちろん、鞘に収められた俺の童子切安綱。特別な存在なのかもしれん。


「うぅむ……」

「……どうかしたか、姉上」


 続いて、沈鬱げに顎に手を当てさえする姉上。さすがに気になって聞けば、彼女は「いえ……」と視線を落とし、重く息をついた。


「存外……私の罪は重いのかもしれない、と」

「罪?」


 我が姉上におかれては、償うべき罪などありはしない。ここへ至るまで彼女はもう充分なほどに、代償を支払っている。死より重い罰などあろうか。

 しかしそういった話というわけでもないらしく、姉上は「よいですか?」と指を立て、まことしやかに囁く。


「──超正常刺激、というものがあります」


 急にどうした。とりあえず「おう……」と相槌は打っておいた。


「これは即ち『現実離れした魅力に動物は引き寄せられる』という動物の反応に帰結するものです。ミヤコドリやヒョウモンチョウの実験などが有名ですね」

「鳥と蝶? 俺に何の関係がある」

「ミヤコドリはより大きな卵を熱心に育てようとし、ヒョウモンチョウはより柄の多い個体に引き寄せられるのです」

「……摂理なのではないか? 自然界など特に、強くなければ淘汰されゆくのが必定。より強い個体を生む可能性のある方へ惹かれるというのは」

「──それがたとえ、人間の用意した偽物であっても、ですか?」

「──っ」


 その迫力に息を飲む。それは……。


「ただ大きいというだけで、ミヤコドリは孵るはずのない卵を暖め続ける。己の生んだ卵を放っておいて。ヒョウモンチョウもまた、ただペンキで色を塗られただけの板に群がるのみ。よいですか、我が愚かなる弟? 誇張された魅力というのは、生きとし生けるものに対し決してプラスに働くのみではないのです」

「むむむ……」


 思わず唸る。スケールが大きいことは良いことだとこれまでは信じていたが、そこに一石を投じられた心地だ……。

 しかし、それが俺にどう関係するというのか。その答えは、痛ましさすら湛える姉上の瞳が教えてくれる。


「お前は、お姉ちゃんの豊かなお胸ばかりを揉むことにより……正常でない状態に陥っている可能性があります」

「…………」


 ……ほう。まぁ聞こう。


「己も感じているのではないですか? ゴールデンウィークの折、初めてお姉ちゃんのお胸を触ったお前は大変に猛々しく、そして雄々しく……その、それを、アレさせていました」


 確かに俺のそれをアレさせていたな。そのまま性行為部屋に連れ込むほどには。


「しかし今や、凪のように落ち着いている。私は危機感を覚えましたよ。お昼にもキラちゃんが"クーリッジ効果"と漏らしておりましたが……まさか、と」


 クーリッジ効果とは、簡単に言えば特定の異性の身体に飽き、新しい異性を与えられた瞬間、性的興奮を回復させることをいうらしい。


「ゆえに──私の罪は重いのかもしれぬと、そう思い至ったのです」


 まるで悲劇を語るかのように、姉上は顔を手で覆ってみせた。


「このままお姉ちゃんの乳房に慣らされてしまえば……お前は、周囲にいる誰の乳房にも満足できなくなる。挙げ句の果てにはお姉ちゃんのモノにさえ飽き、更なる豊かさを求めて遠くへいってしまうかもしれぬと!」


 何を言っとるんだこの姉は。姉上は時々、とんでもなく馬鹿になる……。


「全て、私の責任です……お前が今、不能になってしまったのも……」

「そうか……」


 誰が不能か。


「ああ、どうしましょう……刀花ちゃんに何と申し開きをすれば……」

「姉上」

「リゼットちゃんやティア殿も、このままでは一生処女のまま……」

「姉上」

「そもそも、お前とて悪いのですからね。お姉ちゃんの、お、おっぱいを好きなだけ揉みしだいておいて、なぜそのように冷静なままでいられるのか──」

「──そう見えるか?」

「え……? ぴっっっ!?」


 こちらの問いに、姉上は一瞬キョトンとし……即座に頬を紅潮させて奇声を上げた。

 タオル越しに屹立する、俺の童子切安綱を眼下にして。


「あまり好き勝手言ってくれるなよ姉上」

「でも、だって、ぴゃぁぁ……ど、どうして今……」

「お前の弟が必死になって取り繕うとしている努力を、そう無碍にするものではないぞ」

「っ、で、では……?」


 上目遣いで聞く姉上に、大きく頷いた。


「なにやらグダグダと理屈を捏ねてはいたが……要は、己の身体に俺が飽いていないか不安だったのだな?」

「っ!? そ、そんな、ことは……」


 言葉では否定するが、目がよく泳いでいるのがいい証拠だ。


「馬鹿なことを……とんでもない贅沢者だぞ、其奴は。姉上の身体に? 飽きるだと? よく考えずとも分かるだろう、我が愚かなる姉よ。そもそも、俺達が実質共に過ごした時間はまだ一年にも満たぬし、その身体に触れるようになったのもここ最近だ。飽きるにしても早すぎるだろう」

「……だって。クーリッジ効果が……超正常刺激が……」

「うるさい。一目瞭然だと思うが」

「っ……ぴ、ぴゃぁぁ……」


 俺はその場に立つ。腰に巻かれていたタオルがほどける。

 ──しかし、タオルは落ちない。なぜなら俺の膨張した物干し竿が、タオルを引っかけて落下を許さないからだ。

 それを目前にして、涙目になって縮こまる姉上。そんな彼女を見下ろしながら、俺は不敵に笑った。


「どうだ。これが、俺の姉上に捧げる愛だ。今誓うが、俺が姉上に飽きることなど、それこそ死ぬまで……いや、死して尚あるはずがない」

「ぴいぃぃ……あっ、みゃ、脈動して……」


 そのまま、一歩踏み出す。


「無論──姉上を飽きさせることもまた、ない」

「あ……お、おっき……♡ はっ……♡ はっ……♡」

「それをよく……刻んでくれようか? 今すぐに。その身体へ」

「あっ♡ ま、待って……待ってくださいまし……」


 膝立ちとなり、彼女の身体をすっぽりと胸の内に収める。男の両腕に抱き締められた姉上は、溺れそうな様子であっぷあっぷと呻いている。


「しかし、その、マンネリ化を予防すること自体は、良いことですので……」

「というと?」


 良い香りのする髪を鼻先で掻き分け囁けば、彼女は甘く啼きつつも提案する。


「ぴゃんっ♡ あの、思ったのですが……」

「ああ」

「……わ、私も」

「うむ」

「──お前の乳頭を、指で弄ぶべきでは?」


 またこの姉上は変なことを言い出す……。

 男の乳首など触って何が楽しいのか。


「誰が求めているのだ、そのような絵面を……」

「わ、私は好きですよ……? お、お前の、肉体……過剰なものではなく、鋼のように引き締まった殿方の、身体……」


 姉上の回した腕が、ゴツゴツした背中を優しく撫でる。好きと言ってくれるのは結構なことだが……。


「しかしだな……」

「よ、よいではありませんか……私ばかりでは、不公平でしょう……?」

「それをされたところで、俺の気分がだな……」

「駄目ですか……? じ、刃くん……」


 ──仕方あるまい。

 その新鮮な響きに胸をときめかせてしまっては、新たな刺激を受けざるを得まいよ。

 少し身体を離せば、姉上のおっかなびっくりした細指がこちらの大胸筋に触れる。その先端にも。


「か、硬い……あの、どうですか?」

「……特段、どうとも。多少、羽根で擦られたかのようなくすぐったさはある」

「ふぅむ……なるほど。やはり殿方のモノとなると、多少の"開発"する期間が必要となるわけですね」


 しかつめらしい顔でそう言って、俺の乳首を捏ねる姉上。俺は正直に言えば微妙な心地だが、姉上はドキドキしているようなので今はヨシとしよう……。


「む……」


 だがそんな俺の無感動な様子に、姉上は頬を膨らませている。王という生き物は総じて負けず嫌いな傾向があるからな……先刻には俺の指で乱れていた手前、自分の手で弟を乱れさせたいのだろう。

 とはいえ、それは土台無理な話だ。その"開発"とやらも行っていない俺が、乳首を弄って官能を得るなどと──、


「──所有者権限を行使。"戦鬼"のコンソールを起動」


 なんだなんだなんだなんだ。

 なんだこの空中に浮かび上がる文字盤は!?


「機械類は苦手なのですが……ああ、これですか? お前の性能の内部数値を変更する機能ですよ。知りませんでしたか? まぁ、お前のマニュアルは早々に私が切り捨てましたからね。刀花ちゃんですら知らないでしょう。とはいえ、"戦鬼"の内部リソースは有限なのでそう大きな変更は不可能なのですが……お前の努力の意味を無為にするようで好きでもありませんし。ですが今だけは……えぇと……あぁ、これですね。性的感度の数値をこう、グイッと」

「ん゛お゛っ゛」

「あらっ♪」


 聞いても嬉しくないような声が出てしまったが、姉上はそれを聞いて瞳を輝かせた。


「よい感触です。このまま続けてしまえば、殿方はいったいどうなってしまうのでしょう? クス、クスクス……♪ いいえいいえ、決して可愛い弟を苛めているのではありませんよ? そこは誤解なきように。これはあくまで知的好奇心を満たすためであり……しかし……つん♪」


 文字盤を消した姉上は、イタズラっぽい手つきで我が乳頭をつつく。


「お゛っ゛!?」

「つんつんっ♪ ペロ……ちゅっ♡」

「お゛ぉ゛っ!? お゛ぉ゛ぉ゛っ!?」

「あはぁ……ちょっとくらいは、お姉ちゃんに仕返しをさせてくださいね? 私の、可愛い刃くん♡」


 男の胸に口付けすらした姉上は、耳が溶けるかと思うほどの甘い声で、快感でガクガクと震える俺の名を呼び……。


「さて、さて♪ まずは両方を指で摘まんで、コリコリして差し上げますね……♡」

「──」


 お、女の子にされてしまう──!!

 謎の危機感に震える俺だが、そこで──ガララララと風呂に繋がる扉が、白金色の煌めきと共に開く!!


「こんばんはで~す! 夜中にお風呂に入ると、先生がマッサージをしてくれると聞いて!! いや~、アラサーにもなるとちょっと腰がですねぇ。私ぃ、実はオイルマッサージとか前から興味あってぇ~。バスタオル一枚でちょっと恥ずかしいんですが、ここは勇気を振り絞り異性との混浴へダイブ──え゛っっっ」


 酒が入っているのか、それとも俺がいるであろう風呂へ突入する際の自棄か。

 そんな早口で色々と宣ったティアは、目の前に広がる光景に絶句する……。

 ほぼ俺を押し倒す形で、その乳首を摘まもうとしている姉上の姿に──!!


「せ、先生が……開発、されてます……!!」

「ティ、ティア殿っ、これはちが──」

「そっか~……そうですかぁ……むしろお姉さまの方が……ほえぇ~……うわぁ~……」


 引いているかのような。逆に感心しているかのような。

 そんな曖昧な吐息をついたティアは、身体に巻いたバスタオルをキュッと締め、スチャッと敬礼した。


「──それでは、ごゆっくり。私は何も見なかったことにして、このまま光の速度で退散を……」


 このような体たらく、見られたからには逃がさん。


「──お前も道連れにしてくれる、ユースティア=ペルフェクティオ」

「小鹿みたいにプルプルな足じゃ、さすがに捕まりませんよ先生。それではそれでは、ごゆっくり──」

「この私が、二度も同じ手で逃がすとお思いですか?」

「ふおっ!? あれ!? なんか動けないというか!? 動いているのに吸い寄せられている感じが!?」

「光の速度で逃げるのであれば、光を逃さぬ力場で吸い込めばよいだけというものですわ」

「このお姉さま掌にちっさいブラックホール展開してますーーー!? ちょっ! え、なんですかお二方その手の動きは!? マッサージ、マッサージですよね!? お願いしますマッサージだと言ってくださ──アッーーーー!!」


 この夜。

 森深くの洋館から、汚い声が二人分ほど終始響いていたという……。

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