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あれからと言うもの、ボクは心を何処かに置きっぱなしにして業務に勤しんだ。
ただ、ひたすらに与えられた業務をこなし、書類を作成し、判を押し、あれば訪問に帯同して横で作り笑いで愛嬌を振り撒いた。
昼食も所内の食堂を利用せず、少し離れた誰も来ないだろう定食屋や蕎麦屋等に行き、人との接触を避ける様になった。
時折、廻りからボクについての噂話をしている様な気になったが、それさえも無視して時間の流れに身を任せていった。
そんな時間をどれだけ過ごしただろう?
昼食に立ち食いの蕎麦屋で鴨南蛮そばを啜っていた時だった。テレビから何処かで聞いた様な名前を耳にして、テレビに視線をやった。
"逮捕されたのは、坂井憲男容疑者34歳で、自身の長男で8歳の憲文君の死に関与しているものと思われます!警察によると……"
あの子だ!顔も姿も見ていないけど、あの日課長と訪問に行った時の男に間違い無い!
ボクは慌てて支払いを済ますと、役所に向かって駆け出していた。
「課長!小森課長!テ…テレビ見ました?」
「あぁ、先っき食堂でね!残念だったね」
課長はハンカチで眼鏡を拭きながら無感情に思えるトーンで返した。
「課長!それだけですか?本当にそれで良いんで…」
「神野君!言っただろ?我々は別に何もしなかった訳じゃ無い!捜査するのは警察の役目だし、我々は訪問に行ってキチンと本人に会って話をした!その上で本人は問題無いと断言しておいて我が子を死に追いやったんだ!」
正直、ぐうの音も出なかった。課長の言う事は至極最もだ!でも、何だろう?このスッキリしないモヤモヤした気持ちは?ボクは本当に何にも出来ない男なのか?ボクは何の為にこの仕事をしてるんだ?何の為の存在なんだ?
答えは出ないまま、時計は午後五時を指した。




