失態
好子ちゃんはダメだったけど、ボクには乙女ちゃんがいた。乙女ちゃんは池田みたいな軽薄な男に靡いたりしない…と思ってたのに…
「…で?相談って何?」しばらくの雑談の後、男らしく聞いたつもりだった。
「あの…神野さん…池田君いるでしょ?」乙女ちゃんの口から出た意外な名前にボクは少し驚いた。
「池田?池田に何かされたの?」まさか、アイツ乙女ちゃんに対してストーカーとかしてるんじゃ…
「ハイ、多分なんですけど…私…彼に二股かけられてるみたいなんです」と言いつつ、彼女の声は悲しみを含んでいった。
「えっ?アイツと…天野さん、付き合ってたの?」
「ハイ!もう2年くらいになります。だけど最近、彼…何だか冷たくって…それでスマホ、そっとみたら、小森って名字だけでしたけど、メッセージのやり取りが明らかに女性なんです」
彼女の声はすでに泣き声になっていたが、そんな事よりもボク自身、彼女に裏切られた気分になった。
「そっ…そんな…池田みたいな軽薄な男と付き合ったりするからだよ!もっと男を見る目を養った方がイイね」裏切られた様な苛立ちから、慰める言葉を投げかけるべき所を、遂、悪態をついてしまった。
「そんな…もういいです!」そう言い放つと、彼女は店を飛び出してしまった。
やってしまった!ボクはなんてバカなんだ。
暗い夜道を一人"トボトボ"歩いていると足元をゴキブリが通った。ボクは、この前の事を思い出し右手を翳し"この野郎!死ね"と念じてみた。
しかし、ゴキブリはそのまま何処かの隙間へと消えて行った。
"やっぱり、あの時の事は夢だったのか?ボクに命を奪う能力があったら池田の野郎を殺してやるのに"等と呟きながら、ボクは家路を急いだ。




