最後のアサシン
市民病院近くに小さな公園がある。公園のベンチに腰を降ろし、ボクは地面を見つめている。地面には、現在、無職のボクと違い、蟻が行列を作って、忙しなく働いている。少し気が引けるけど、これも哀れな何の罪も無い少年を救う為の実験だ。失敗したらゴメンだけど、ボクの仮説を証明する手助けをして貰うよ。
ボクは人差し指をゆっくりと地面に近付け、一匹の蟻を軽く押さえると、地面に擦り付ける様にクルクルと回した。指をゆっくりと上げると、蟻は六本の脚が絡まり、その場所を苦しそうにのた打ち回った。
「ヨシ!丁度いい感じだ」
今度はボクはその蟻に向けて念を送った。その念は、今まで色んな人や動物にして来たものとは違い、コッチの命を送る様なイメージだ。
やがて、遂、先っきまで、のた打ち回っていた蟻は、嘘の様に再び行列に加わった。
やっぱりそうだ。ボクの仮説は正しかった。ボクの身体はボク自身を媒体として、命を奪ったり与えたり出来るんだ。この力を使えば、憲文君を救う事が出来るだろう。その為にも、もう少し、やらなきゃいけない事がある。
そう!命の貯金だ。今現在のボクの寿命は十年、憲文君が十一歳で後70年生きるとしたら、後、700年分位の命を吸い取らなければならない計算になる。
現在の貯金=150(約10~15年分)
70年分の寿命=70×12=840
840-150=690(約70~75年分の命)
後はボクが天寿を全うする為の寿命
50×12=600
700+600=1300
かなり命を奪わないと行けないな。大体だけど25~30人位は殺さないといけない。でも、取り敢えずは800年分位を奪って、憲文君を救ってから、残りの500年分の自分の寿命を奪えば良い。
もう能力は使わないと決めたけど、人助けの為だ。これが本当に最後だ。
アサシンバンクの登録を解除したボクは、その後、新聞やネット記事などをチェックしつつ、重要な犯罪で逮捕され、死刑相当や被害者遺族の厳罰を望む様な被告、容疑者に絞って、ソイツらが、護送される瞬間などに狙いを定めて、次々と命を奪って行った。
そして、一ヶ月後…
ボクは大体の計算上、800年分の貯金が出来ただろうと憲文君の病室を訪れた。そして文子さんがいなくなった空きに、憲文君に向けて念を送った。
すると、急に胃の辺りに激痛が走った。
「な…何で?」ボクはその場に倒れ込み、そのまま意識を失った。




