医師の訪問
決行は明日からだ。運営側に依ると、ターゲットの須藤 薫は日中、余り外出をしない様なので、近くにビジネスホテルを取って泊まり込んででも、任務を遂行する覚悟だ。
ボクは、パソコンに買い替えたばかりのスマートフォンを繋ぎ、須藤のデータを送った。氏名、住所、年齢、顔写真などがスマートフォンのデータベースに保存された。これで準備万端だ。
明日に控え、今日は早目に就寝しよう等と考えていた時、玄関のドアがノックされる音が聞こえた。
「誰だ?こんな時に」ボクはドアの覗き口から外の様子を覗った。
「山井先生?」ボクは直ぐにドアを開けた。
「先生、どうしたんですか?わざわざ自宅まで」困惑するボクの問いに、山井先生は「あの後、直ぐにお電話を差し上げたんですが、番号が使われていないとアナウンスがあったもので、どうされたのかと思いまして…」そうか、市役所を出て、直ぐに機種変をしたんだもんな。病院位は連絡をしとくべきだった。
「スミマセン、番号を変えたもので…それよりも、どうぞ上がって下さい」ボクは先生を家に招き入れた。山井先生は出したお茶を一口飲むと重い口を開いた。
「神野さん、正直な所を申します。もう一刻の猶予も許されません。今からでも病院に戻って頂いて、病巣の進行具合いを見て、出来る限り有効な治療方針を決めたいと思っています。どうか、直ぐにでもご準備を!」山井医師の熱意ある言葉に、ボクは久しぶりに他人からの優しさに触れた様な気がした。
「分かりました。直ぐに用意します」ボクは山井医師の言い付けを素直に受け入れた。
病院に着くと、山井医師はボクの腹の辺りを触診しながら、首を傾げた。「水野君、採血の準備とMRIの手配を頼むよ」山井先生は横に立っていた看護師に指令を出した。そして、再びボクは採血やらMRI検査を受ける事になった。
検査結果は後日出る事となり、それから治療方針を決めて行くと言う事で、その日は帰宅した。
ボクはこの時、まだ知らなかった。この検査結果がボクをより一層苦しめる事になる事を…




