覚醒
とにかく、殺し屋だの闇サイトだの忘れよう。今は今後、どう病気と向き合って行くかだ。
僅かなのだろうけど、可能性を賭けてキチンと治療して、その間身の周りの整理をして、最終的にはホスピスにでも入って最期を迎えると言うのも悪く無い。
何にしろ癌と言う病は、決して自然に治癒する病気では無いのだから… 現実逃避は止めよう!
ふと、ボクの視界の端っこに小さな黒い物体が動いた。
「うわぁー!」
何でだよ!何で今、ゴキブリが出て来るんだよ!前にも言ったが、ボクはゴキブリが大嫌いだ。見るのはもちろんの事、想像するだけで身の毛がよ立つ。ゴキブリは触角を左右にユラユラ揺らしながらボクの事を睨んでいる。イヤ!そう感じているだけだけど…
ゴキブリ用の強力殺虫スプレーはある。だけど寄りによってスプレーのある場所に行くにはコイツを跨いで行かなきゃ行けない。なす術無くボクは右手を翳し"死ね!お願いだ!死んでくれ"と念じた…がもちろん、何も起こらない。相変わらずゴキブリはボクを睨んでいる。
吹っ切れた様にボクは冷静になった。
待てよ?あの時…詰まり初めてゴキブリを殺した夢を見た時…ボクは今みたいにゴキブリに対して恐れを持っていなかった?
寧ろ憎しみの様な感情で…こう…お前みたいな存在、そんな元気があるならボクに分けろ!みたいな…
そう!カラスの時もそうだった!イメージ的にだけど、成功しない時は命を叩き潰す様なイメージで念じていた。
逆に、成功した時は…何て言うんだろう?そう!命を吸い取る様なイメージだ。
意を決してボクは試しに念じてみた。
"お前の命…コッチに来い!"
するとゴキブリは殺虫剤を掛けられたみたいに苦しみながら這いずり回った。
"もっとだ!命…コッチに来い!"
ゴキブリは仰向けにひっくり返り6本の脚と2本の触角をピクピクさせながら、やがて絶命した。
ボクはゴキブリ用の長いトングでそいつを挟むとトイレの便器に放り込み、思いっきり「大」の方へレバーを捻った。
ドジャー!と言う音と共に勢いよく水はゴキブリの死骸を流した。
「やった!やったぞ!これで何も怖いものは無い!これで…この能力であのクソ親も殺ってやる!」
ボクは病気の事をスッカリ忘れて鼻息を荒くしていた。




