余命宣告
貯まっていた有給休暇は21日間あった。
ボクが、如何に万が一の事を考え有給さえも無駄に使っていなかったかの証明だろう。
自画自賛しても仕方が無いので、もしもの事も考えて月曜日から5日間取って、延べ1週間休む事にした。
みんなには、同情も心配もされたくは無いので、旅行に行く事にしておいた。
何も無ければ本当に気儘の旅行にでも行けば良いし、最悪入院とかになっても駅前の物産展売り場やアンテナショップで適当な土産物でも買えば良い。
さて…月曜日になり朝一から本当に小旅行にでも行く位の身支度を済ませ、家を出た。
もし、入院にでもなれば、そのまま病院に残れるし、何も無ければ、旅行会社にでも寄って、この所の憂さ晴らしに何処かへ行こうと考えていた。
病院に着くと、採尿や採血、それに前の人間ドックでは行われなかったMRIにまで乗せられる始末だ。
午前中には検査は終わり、軽く昼食を済ませた後、検査結果は夕方になると言うので病院近くのファミリーレストランでドリンクバーだけを注文して、持って来ておいた小説を読みながら時間を潰す事にした。
何かを決めた訳でも、予兆があった訳でも無いのだが、社会悪に対して鉄槌を下す殺し屋稼業の男の悲哀と葛藤が描かれたものだった。
夕方になり、病院へと戻った。
山井医師はMRI画像や何かのデータが書き込まれた書類を見ながら神妙な面持ちになっていた。
ボクは、自分でも聞こえる位の音で唾気を呑み込んだ。
「神野さん!誠に申し上げ難いのですが、神野さんは肝臓癌のステージ4-Bと推測されます。既にリンパ節にまで浸潤しており、手の施し様がありません」
何を言われているのか?自分の中で消化するのに時間がかかった。
「えっ?はい?何ですか?癌で…ステージが4で…手の施し様が?」
「はい!正直に申し上げて、この後は放射線治療や抗がん剤治療を様子を見ながら並行して行い、それでも治る見込みは無いかと…」
「えっ?じゃあ…ボク…死ぬんですか?何時死ぬんですか?」
「このまま、延命を続けて、長くて1年、治療効果に依っては、もっと早まる可能性もあります」
子供が亡くなった時に小森課長が言った"残念だったね"と言う言葉と山井医師のトーンの無い言葉がリンクしてボクの頭の中をグルグルと音を立てて回っていた。




