初任務 ⑦
「では初さんの初任務が予定よりもかなり早く終わったことですし、初さんの歓迎会兼親睦会をしませんか?」
「え! 賛成です! 私、ポテトとか食べたいです!」
「そんな悪いですよ」
「実はトクマはかなり人の入れ替えが多いんです。だから一緒にいる時間はできるだけみんなで楽しもうと、この部隊の恒例行事になっているんです。まだ初さんは会っていませんが、実は後二人メンバーがいるんですよ?」
「じゃあその人たちを誘って、って感じですか?」
「……どうでしょうか」
シロは苦笑いを浮かべる。みなみは少し眉をひそめた。
「頑張って押せば、いのりちゃんは来ますよ!」
「みなみ、いのりさんは先輩ですよ」
「分かってますけど、いのりちゃんはいのりちゃん! って感じなんですよ! あんなかわいい子ちゃん付けしない方が失礼ですって!」
「それは同意しかねますが、誘えばいのりさんは来てくれるというのには同意します。あとは……」
「あの人は誘わなくてもいいんじゃないですかね!」
どうやら人懐っこそうなみなみはこう見えて、マドレといい案外人の好き嫌いが多いらしかった。
「そんなこと言わないであげてください。別に悪い人じゃないでしょう?」
「そうなんですけどー。というか私が何言っても、今あの人来れないんじゃないんですか?」
「あー、そういえばそうですね。今ロンドンでしたっけ。普段からあんまり見ないのですっかり忘れてました」
「ですです。だから今回はあの人は抜きで行きましょう」
みなみは心なしか嬉しそうだった。
「そうと決まったら私、いつもの店予約しちゃいますね!」
「はい。お願いします。あ、初さん、勝手に決めてすみません。この後の予定とかって大丈夫でしたか?」
そうしてとんとん拍子で店が決まったらしく、今日歓迎会が行われることが決定していた。
「予定はないですけど……、ここ大丈夫なんですか?」
シロはその質問に首を傾げたが、すぐに心当たりがあったのか「ああ」と顔を上げた。
「店番は大丈夫ですよ。連絡すれば一般の警察の人がここにきてくれます」
「それは大丈夫なんですか? なんかとても申し訳ない気が……」
「細かいことは気にしなくていいんすよ! 私たちはその分普段危ない任務に就いてるんすから、それぐらいの優遇はあって然るべきなんです!」
「昨日みなみが呼んでいた人たちとはちがうんですか?」
「そうですね。あいつらはあくまでもトクマの一員っす。でも長時間替わってもらうには少々面倒くさいことになるので、一般の警察の方にお任せしているって形っすね」
——先日まで新聞屋の一配達員だった僕にはあまりしっくりこない感覚だ。
「ちなみにその相手の方はトクマをご存じなんですか?」
「いや、存じておりませんね。立場的に私たちが上司になるので長期間の依頼や休みがある都度、私たちに替わってきていただく形になります」
——なら適当に誤魔化しながらやってるのだろう。こっちが振り回している感じがしてなんだか罪悪感がすごい。せめて今後会う機会があれば優しく接することにしよう。
「ほら、じゃあ行きますよ! シロさん、私お酒飲みたいです!」
「みなみ、まだ昼間ですよ」
「まあまあいいじゃないですか! 無礼講ってやつですよ!」
「無礼講が適応されるとしたら初さんですよ」
「えー! じゃあ夜まで待機してから夜に行きませんか? ほら、いのりちゃんもそっちの方が来やすいですし! それまでは自由に過ごす感じで!」
随分調子よくみなみが提案してきた。シロはそんなみなみを眉をひそめた既視感のある表情で見ている。
「もう予約したんじゃないのですか?」
「ふふふ。私出来る女でして、もう変更しておきました! ではシロさんの寮の前に十九時集合で! いのりちゃんには私の方から声をかけておくのでー!」
みなみは反論も説教も出ないうちにそそくさと駐在所を出ていってしまった。
「すみません。なんかごちゃついてしまって……」
「いえいえ、ここに来る前はほとんど人と会話すらしていなかったのでとても賑やかなのは少し嬉しいです」
「そういっていただけるとありがたいです」
苦笑いでシロが答える。初は社交辞令でないことが伝わっているか少し不安になるが言葉にはしなかった。
「そうだ。話は変わるんですけどマドレさんってAIであのモニターから話しかけられたりします?」
「もう会ったんですね。そうです。少しいたずら好きですけどいい子ですよ。仲よくしてあげてください」
「いたずら好き?」
「はい。まあ過ごしていればいずれ分かりますよ」
——とても不穏な言葉だった。少し話した時はそんな感じはなかったけれど僕の見当違いなのだろうか。
シロは遠い目をしながらそう言うと、そそくさと荷物をまとめ始めた。といっても荷物は多くないらしくてすぐに準備を終えていた。初も慌てて帰りの支度をして、ついて行くように家まで帰った。




