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無詠唱の配達員  作者: ウパ戌
第1章

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初任務 ①

「さて、事務的な作業も済んだので仕事の話をしましょう」

「はい」

「初さんには今日からある任務についてもらいます」


 シロはタブレットを取り出して初から見て正面になる様に机の上を滑らせた。そこには『第二十三回 三十七支部輸送作戦』と大きく書かれていた。すぐにシロの指によってスライドされて次のページに移った。そこには複数の火事にも見える写真とその注釈、新聞のような文章と、丸のマークが一つとバツマークが複数書いてある地図が載っていた。


 「昨日、少し司令から説明がありましたが、私たちは定期的に支部に物資や極秘の手紙などを輸送しています。しかし最近になってそれが邪魔され始め、さらには一度物資が奪われることもありました。幸い、極秘の手紙はその時の輸送では運んでいなかったものの、それも時間の問題であると我々は考えています。中身は一応暗号化しておりますが、何回も奪われたら解読されるやもしれません。そこであなたです」


 さらにその地図がアップされる。


「今回は名古屋にある三十七支部を物資を送ります。そしてこれが目標地点と想定した輸送ルートになります。バツがついているルートは襲撃が予想される地点でその地点を極力通らないような設計をしていきます。初さんには荷物を車から取り出すときに魔法で隠しながら運んでほしいと考えています。ここまでで質問ありますか?」

「んーっと。そうですね。その話的にトラックかバンかで運ぶんですよね?」

「いや、普通のパトカーで運びます。出来る限り襲撃のリスクを避けたいですから」

「なるほど。運ぶ物資って今どこにあるんですか?」

「実はもうここにあるんです。実は裏手に少し空間がありまして、そこに重ねて置いてあります」

「あとは、最初に今日からって言ってましたけど、何日かに分けて運ぶんですか?」

「そうですね。今回運ぶ物資は……」


 そう言いながらシロはさらにタブレットをスライドする。すぐに物資のリスト表示される。そのリストは食料品と弾薬などの消耗品が主で、初はそれを見た時に確かに秘密組織に所属したのだと改めて実感した。


「これになりますね。この量だと三日に分けて運ぶのが丁度いいでしょう」

「パトカーだと入る容量は少ないですからね」

「はい。その通りです」


——なるほど。これが三日間の仕事か。この物資の入っている箱の形状にもよるが、いけるか?


「すみません。もう少し良いですか?」

「はい。構いませんよ」

「これが三日間の仕事なんですよね」

「そうなりますね。正確には、今日ルートを考察し、荷物をどの順番で運ぶか決めてから明日から三日間かけて行う運びになると思います」

「それ一日で終えたらその分、研究の時間になったりとかします?」

「え?」


 初のその提案にシロはあっけにとられたようにタブレットに落としていた視線を上げる。


「あ、いや、昨日の説明的に決められた時間内の労働というより、任務にあたるとかのノルマがあって、それをこなせばいいのかなって思いまして」


 言い訳するように慌ててそう付け足す。


「それは合っていると思いますが……。しかし、慌てて運んだせいで襲撃にあうとか、一般の人にバレるとかなんてことがあってはいけません。なので私たちは普段から備え、出来る限りのイレギュラーをなくし、事に臨もうとしています。なのでそんな性急なことは考えない方が任務の成功率はあがります。それがひいては私たちの安全に繋がるのですから」

「はい。それは重々承知しています。けれど、安全性を担保しながら効率を上げられれば問題はないんですよね?」

「それは……まあ、そうですね。それが出来るならそれに越したことはないでしょう」


 シロは真面目な目つきというよりもどちらかというと睨みつけるような視線を初に送る。初はそれに少し怯みながらも努めて普通に提案を進める。


「分かりました。一度もう置いてあるという物資を見てもよろしいですか?」

「はい。構いませんよ。そうですね。なら今から行きましょうか」

「あ! 私もついて行くっす!」


 机の上のタブレットを片手に持ってシロは奥の更衣室に繋がっていた廊下を真っ直ぐ進んだ。その先にはなんてことない扉があったが、そこには誰しもが入れないようにするための指紋認証だろうか、モニターと一緒に指を置く場所があり、ロックがかかっているようだった。すぐにシロはそこに指を置いて、ロックが解除されたであろうガチャッという音と共に扉を開けた。

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