第88話 北へ
カーリナの背中は、あっという間にギルドの扉の向こうへ消えた。
呼び止める間もなかったが、
今から追いかけたところで何が起きているのか分からない。
まずは、さっき聞いたラティスという場所について知る方が先だ。
「アンダースさん、ラティスっていうのは?」
アンダースがこちらへ顔を向けた。
「ガド地区の北西にある。
今回の魔物討伐で、騎士団が前線拠点にしていた街だ」
「魔物に陥落させられたって……じゃあ、騎士団はどうなったんですか?」
「昨日深夜から戦局が傾き、今日の三の鐘の頃には騎士団も撤退したらしい。
街は放棄したそうだ」
自分たちがヴァサで寝ている間にそんなことになっていたのか。
それにしても放棄とは、
街一つを捨てて逃げなければならないほどの戦況なのか。
いったいどうなってるんだ?
話を聞いたボニーたちも、言葉を失ったように黙っている。
「被害は?」
「詳しいことまではこっちにも入ってきてない。
なんせ、騎士団が撤退するくらいだからな。現地も混乱してる。
死者も相当数出ているらしいぞ」
それ以上は分からないのか、アンダースはそこで口を閉じた。
ラティスは北部にあり、そこで騎士団が戦っていた。
そして、その騎士団の団長はカーリナの父、ユーハンだ。
ようやくつながった。
カーリナが何も言わず、騎士団詰所へ走っていった理由が。
カーリナが戻ってくるまで、ここで待つしかないか。
改めてギルド内を見回すと、壁の一角に何枚もの紙が貼り出されていた。
その前には何人かの冒険者が集まり、指で文字を追いながら話をしている。
「アンダースさん、あれは?」
「ああ、北部へ送った第一陣の一覧だ。昨日の昼には出てる」
昨日の昼。
自分たちがまだヴァサ北にいた頃には、
すでに冒険者まで北へ向かわせていたのか。
壁の前まで移動したものの、
並んでいる文字を眺めたところで自分には読めない。
「おっ、なんだヒデキ、字が読めないのか?」
「ええ、お恥ずかしいですが、そうなんです」
「強いヤツなのに字が読めないなんて、情けないヤツだな」
「ボニーさん、代わりに読んでもらえますか?」
「ウチが読めるわけないだろ、ウチは強いだけが取り柄だからな」
「……はあ」
「わたくしが読みます――パーティー名が並んでいますわ」
リーザが上から順に文字を追っていく。
やがて、その指が途中で止まった。
「……大過の天秤も参加していますわね」
「大過の天秤?」
ボニーが反応した。
「ボニーさん、知っているんですか?」
「当ったり前だ、ここらじゃ有名な連中だぞ。知らないのかヒデキ?」
知ってるも何も、ノルデの迷宮で一緒に戦ったくらいだ。
あの六人も、すでに北へ向かっているということか。
「ほかには?」
リーザの指が再び下へ動いていく。
「ノーホールズバード……こちらもありますわ」
「フランクさんたちまで……」
ノルデの迷宮で案内してくれたパーティーだ。
大柄なテリーに、地図を片手に先導していたフランクの姿を思い出す。
「ヒデキ、知り合いか?」
「ええ。少しお世話になった程度ですけど」
知っている冒険者たちが続けて北へ向かったと分かると、
第一陣という言葉が急に現実味を帯びてきた。
北部で起きていることは、もう騎士団だけの問題ではないらしい。
隣で一覧を見上げていたレオノールが、リーザへ顔を向けた。
「アンニさんたちは?」
「アンニさん……?」
「アイニェータさんと一緒にいる人」
リーザがもう一度、一覧を上から確認していく。
「個人名ではなくパーティー名だけですので、それでは分かりませんわね」
自分もアンニたちのパーティー名なんて聞いた覚えがない。
「アンニたちなら昨日行ったぞ」
背後からアンダースの声が飛んできた。
振り返ると、アンダースはこちらを見ながら続けた。
「第一陣だ。四人揃って北へ向かった」
「アンニさんたちも……」
レオノールが小さく呟いた。
ロジャーたち、フランクたち、そしてアンニとアイニェータたち。
知っている冒険者が、次々と北へ向かっている。
先ほど聞いた騎士団の被害といい、
どうやら想像していたよりもずっと大きな事態になっているようだ。
そのとき、ギルドの扉が勢いよく開いた。
振り向くと、カーリナが足早にこちらへ近づいてくる。
走って戻ってきたのか、肩を上下させながら自分たちの前まで来ると、
そのまま口を開いた。
「師匠、詰所に状況を聞いてきました」
「カーリナ、何か分かったか?」
「はい。騎士団は北部の魔物討伐でラティスを前線拠点にしていて、
団長がそこで指揮を執っていたそうです。
ただ、撤退してからの詳しい状況は、詰所にもまだ入っていません」
やはり、ユーハンはラティスにいた。
騎士団が街を放棄して撤退したことまでは分かっていても、
その後どこへ向かったのかまでは、
ノルデの騎士団にも情報が届いていないらしい。
「それで、ラティスから避難した人たちは?」
「北部の難民キャンプへ向かっているそうです」
難民キャンプか。
騎士団も街から撤退している以上、同じ方向へ向かっているとは思うが、
今の情報だけでは何とも言えないな。
カーリナは一度息を整えてから、話を続けた。
「それと、騎士団はすでに北部へかなりの戦力を出していて、
これ以上まとまった増援を送るのは難しいそうです。
だから、冒険者ギルドにも正式に支援要請が出ています」
先ほど見た第一陣の一覧は、そのためだったのか。
ロジャーたちだけでなく、
フランクたちやアンニたちまで昨日のうちに向かった理由もこれで分かった。
「じゃあ、騎士団のゲートを使って、北部へ行くことができるってことか?」
「無理です。
今は部隊の移動や避難する人たち、それに物資を送るために使っています」
そこまで言ってから、カーリナが少しだけ間を置いた。
「それに……
ボクが御父様を探すためだけに、使わせてもらうわけにはいきません」
それまで団長と呼んでいたカーリナの口から、御父様という言葉が出た。
「ユホさんなら何か知ってない? 相談するとか、ほかに手はない?」
「ユホ兄さんは中部のランペにいるはずです。
それに、団長と同じところにいるとは思いません」
そうか、ユホは中部駐屯地の従騎士だったな。
父親が騎士団長だからといって、息子まで一緒に行動しているわけではない。
「北へ行きたいなら、ちょうどいい話があるぞ。第二陣に入れ、ヒデキ」
それまで話を聞いていたアンダースが口を挟んだ。
「第二陣……?」
「ついさっきコルボラのギルドから人員補充の依頼を受理したところだ。
第二陣として人を送る。ヒデキもそれに入ればいい」
アンダースの言葉を聞き、カーリナへ視線を戻すと、
何も言わずにこちらを見ている。
ここで待っていても、ユーハンがどこにいるのかは分からない。
自分たちには、北へ行く方法があって、戦うこともできる。
それなら、難しく考える必要もないか。
「カーリナ」
「はい、師匠……」
「北へ行こう!」
カーリナの目が大きく開いた。
その隣で、レオノールも目を丸くしたあと、口元をほころばせている。
「……いいんですか!?」
「ああ。第二陣に入ろう。向こうへ行って、団長のことを探そう」
カーリナはしばらく自分を見つめたあと、大きく頷いた。
「はい、師匠!」
「しょうがねえな。ウチらも付き合ってやるよ」
横から声がして、ボニーへ顔を向けた。
「ボニーさんたちも?」
「なんだよ、その反応。ウチらのこと嫌いなのか?」
「いや、そういうわけじゃなくて、北部が危険なので――」
「危険なのは百も承知だ。
そんな危険な所へ出向く三人を、ウチらに見送れってのか?」
ボニーは当然のような顔でリーザへ視線を向けた。
「リーザもいいだろ?」
「ええ、もちろんですわ。わたくしも同行します」
二人に迷いはないようだ。
つい最近まで、名前も知らなかった二人が、
昨日は一緒にSランク魔物と何度も戦い、
今は危険な北部まで付き合うと言っている。
「ありがとうございます。ボニーさん、リーザさん」
「礼なんていらねえよ。行くならさっさと行こうぜ」
ボニーの言葉に、リーザも静かに頷いた。
「決まりだな。なら、こっちで第二陣の受付をしてくれ」
アンダースに促され、五人で受付へ向かう。
北へ行くことばかり考えていたが、参加すると決めただけで、
第二陣として連れていってもらえるわけではないらしい。
「ところで、アンダースさん。コルボラって、どこにあるんでしょうか?
ラティスから近いんでしょうか?」
「ラティスの北東にある。そこも北部の冒険者街だ」
ラティスそのものではないが、北部へ向かうことには変わりない。
「向こうでは、何をするんですか?」
「それは分からん。こっちで決めるのは、誰をコルボラへ送るかまでだ。
指示はアルベルタから出るだろう。コルボラのギルドマスターだ。
騎士団も現地に出てるから、そっちから指示が出ることもある」
何をするかは、行ってみないと分からないということか。
団長のことも、向こうへ行けば何か分かるだろうか。
受付まで来ると、カウンターにいた狸耳のマチルダがこちらへ顔を向けた。
アンダースは自分たち五人を見回してから、彼女へ声をかける。
「この五人も第二陣に入れる。手続きを頼む」
「かしこまりました」
マチルダに任せるのかと思ったが、アンダースはこちらへ向き直った。
「北部支援の受付はパーティー単位だ。
お前たち、向こうでも五人で動くんだろ?」
「そのつもりです」
「だったら、二人も同じパーティーに入れておけ。
その方が向こうでも話が早い。それに、こっちの処理も楽になるから助かる」
ボニーとリーザへ顔を向ける。
「ボニーさん、リーザさん。それでもいいですか?」
「今さら何言ってんだよ。いいに決まってんだろ」
「ええ、わたくしも構いませんわ」
二人の返事を受け、五人パーティーとして手続きを進める。
これで五人が正式に同じパーティーになった。
昨日まで三人だったことを考えると、ずいぶん急に賑やかになったものだ。
「よし、これで第二陣に登録できる」
アンダースが受付を確認してから続けた。
「送り出しはもうすぐだ。五の鐘から始める。
登録したパーティーから順番にゲートへ回すからな。
準備があるなら済ませて戻ってこい」
「五の鐘から?」
「ああ。遅すぎれば第二陣に入れなくなるぞ」
北へ行くと決めたばかりなのに、今度は時間までなくなった。
五の鐘まで時間がないが、五人全員で店を回る必要もない。
買い物は自分とリーザ、レオノールの三人で済ませることにした。
カーリナとボニーには、そのままギルドで待っていてもらう。
「じゃあ、行ってきます」
「おう。遅れるなよ」
「分かってますよ」
リーザとレオノールを連れ、足早にギルドを出た。
「ヒデキさん、魔薬も買っておいた方がよろしいと思いますわ」
「魔薬?」
「魔力を回復する薬です。
北部で長時間戦うことになれば、魔力を使い切ったときの備えになりますわ」
長時間戦う可能性があるなら、使える手段は増やしておいた方がいい。
「分かりました。それも買いましょう」
魔薬を含む薬や食料など、必要なものを手早く買い揃え、
レオノールのマジックバッグへ入れていく。
「レオノールちゃん、まだ入る?」
「うん。大丈夫だよ、お兄ちゃん」
収納量を気にせず買えるのは、こういうとき本当に助かる。
最後の買い物を済ませ、三人でギルドへ戻る。
通りを歩いていると、レオノールがふいに顔を上げ、走り出した。
「お兄ちゃん、五の鐘鳴ったよ」
「えっ、もう」
遅れるなよ、と言ったボニーの顔が頭に浮かんだが、
これは戻った瞬間に何か言われそうだ。
リーザもレオノールを追うように走り出した。
「急ぎましょう、ヒデキさん」
三人でギルドへ駆け戻ると、すでに第二陣の送り出しが始まっていた。
これは、まずい。
ギルド職員が登録したパーティーを順番に呼び、
呼ばれた冒険者たちが次々と受付脇の奥にあるゲートへ向かっている。
カーリナとボニーを探すと、二人は受付の近くで待っていた。
「おい、遅えぞヒデキ!」
「はあ、はあ……す、すみません。急いだんですけど――」
「師匠、手続きは済んでいます。あとは呼ばれるのを待つだけです」
「ああ、わかった」
息を整えながら、リーザ、レオノールと一緒にカーリナたちへ合流する。
しばらく待っている間にも、別のパーティーが呼ばれてはゲートへ入っていく。
騎士団のゲートしか使ったことがないが、
冒険者ギルドにも同じものがあるとは聞いていた。
普段は街から街へ移動するために料金が必要らしいが、
今回は北部支援なので支払いは必要ないとのことだ。
「次、五人パーティー。準備してください」
職員から声がかかった。
いよいよ自分たちの番らしい。
というか、他にパーティーが見当たらないので、最後のようだ。
……あれだけ急いだのに。
結局最後なら、もう少し余裕があったんじゃないか。
案内に従ってゲートの前まで進む。
縁が青白く光り、向こう側が見えない表面が揺らめいている。
見た目は、これまで使ってきた騎士団のものと変わらない。
「順番に入ってください」
カーリナたちに続き、そのままゲートへ足を踏み入れる。
視界が歪み、一瞬だけ感覚が途切れた。
次の瞬間、足元の感触が戻る。
着いたのか。
そう思ったところで、胃の奥がぐるりと持ち上がった。
「うっ……」
そうだった、これがあった。
急いですっかり忘れていたが、ゲートを使えば当然こうなる。
口元を押さえながら、その場で身体を屈めた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫……少しすれば治るから」
レオノールの声に、口元を押さえたまま頷く。
何度経験しても慣れる気配がない。
むしろ、忘れているときに食らう分だけ性質が悪い。
少し身体を屈めていると、
ようやく胃の奥からせり上がっていた感覚が落ち着いてきた。
顔を上げ、そこで初めて、周囲の様子が目に入った。
ゲートの前には自分たち以外にも冒険者がいて、
その向こうではギルド職員が大声で何かを指示している。
「到着したパーティーは、登録が終わるまでばらけないでください!
代表者だけ前へ!」
言われたとおり、到着した冒険者たちがパーティーごとに固まり、
その中から一人ずつが職員の前へ出ていく。
職員とのやり取りは短く、二言三言の確認を済ませると、
代表者は小さな紙を受け取って仲間のところへ戻っていく。
「師匠、すごい人の数ですね」
「ああ……」
カーリナの言葉に頷きながら、人の流れを目で追う。
「前線を希望する」
近くにいた代表者の声が聞こえた。
職員が手元の紙を確認し、赤い線の入った紙片を差し出す。
「前線へ回します。これを持って、あちらの騎士のところへ」
受け取った男が仲間のところへ戻ると、
四人ほどのパーティーがそのまま人混みの中を移動していった。
なるほど。
ここで行き先を決めて、紙の印で振り分けているのか。
声を張り上げる職員の脇を、大きな木箱を抱えた男たちが通り過ぎる。
壁際にも同じような木箱や袋が積み上げられ、
それを別の者たちが次々と運び出している。
ノルデのギルドも人は多かったが、これは少し違う。
依頼を探したり、仲間同士で話し込んだりしている冒険者がほとんどいない。
到着した者を登録し、配置を決め、すぐに外へ送り出している。
空いた場所には、また別のパーティーが入ってくる。
「赤い印を受け取ったパーティーはこちらへ!
前線へ向かう者は、アンネリ部隊長の指示に従ってもらう!」
入口近くにいた騎士の声に、赤い線の紙を持った冒険者たちが集まっていく。
人数を確認した騎士が先頭に立つと、
そのまま全員を連れてギルドの外へ出ていった。
「カーリナ、アンネリ部隊長って知ってる?」
「顔までは知りません。でも、名前は知っています。
コルボラに配属されている部隊長ですし、
騎士団でも女性の部隊長は数が少ないので」
「ふーん。なるほど」
アンネリ部隊長って女性なのか。
その少し先では、別の職員が声を上げていた。
「物資輸送へ回るパーティーはこちらです!
紙を持ったまま外へ出てください!」
呼ばれた冒険者たちが人混みを抜け、そのまま外へ向かう。
さらに別の場所からも声が飛んだ。
「避難民支援に回るパーティーはこちらへ!
教会側はディットマン司祭が取りまとめています!」
今度は何組かの冒険者が、教会関係者らしい者のところへ集まっていった。
「ギルドマスターの指示です!
登録が終わったパーティーから順に移動してください!
そこ! 通路を塞がないようお願いします!」
たしか、ギルドマスターはアルベルタだったな。
これだけの冒険者を受け入れて、絶え間なく送り出す側も大変そうだ。
あちらでは登録を行い、
こちらでは前線へ向かう冒険者を騎士が連れ出している。
何をするかは現地で決まるとアンダースが言っていたが、
本当にその場で配置を決めている。
冒険者街の賑わいというより、
人間まで物資と同じように必要な場所へ次々と送り出しているようだな。
ラティスが陥落したという話を聞いたときよりも、
北部で起きていることが少しだけ近くなった気がする。
「よし、自分たちも行こうか」
「はい、師匠」
職員が並んでいる方へ向かおうとしたところで、
人混みの向こうから声が飛んできた。
「おい、ヒデキさん!」
聞き覚えのある声に振り向くと、こちらへ近づいてくる虎耳の男がいた。
その後ろには羊耳の女もいる。
「トラヴィスさん! アイリスさんも」
「やっぱりヒデキさんじゃねえか。コルボラに来てたんだな」
「ええ、今着いたばかりです。トラヴィスさんたちは?」
「オレたちはこっちで後方支援だ。
人や物資を運んだり、来た連中を案内したりな」
「久しぶりね、ヒデキさん。カーリナちゃんも、レオノールちゃんも」
以前も自分たちの後方支援をしてくれた二人だ。
ここでも似たような仕事をしているらしい。
「トラヴィス!」
「おう、どうしたカーリナ?」
「トラヴィス、団長が今どこにいるか知らない?」
「団長の部隊ならラティスから撤退したって聞いてるぞ」
カーリナが小さく頷いた。
「トラヴィスさん、団長も撤退できたんですか?」
「そう聞いてる。ただ、今どこにいるかまではオレも知らねえな」
少なくとも、
ユーハンもラティスから撤退したという話までは届いているようだ。
「戻ってきた騎士もいるんですか?」
「ああ。一部はコルボラまで戻ってる。
ただ、大半はラティスから避難した住民を護衛して、
北部の難民キャンプへ向かったらしい」
「だったら、団長もそこにいる可能性があるってことですか?」
「さすがにそこまでは分からねえな。オレはこっちの後方支援だしさ。
前線の詳しいことまでは入ってこねえんだよ」
やはり、ここでもユーハンがどこにいるのかまでは分からないか。
トラヴィスが自分たちを見回した。
「そういや、ヒデキさんたちはもうこっちの任務登録は済ませたのか?」
「いえ。今から登録しようと思っていたところです」
「だったら前線で登録しといた方がいいぜ」
「前線ですか?」
「ああ。団長を探すなら、その方がいい。
それならオレが難民キャンプまで連れてってやるよ」
トラヴィスに促され、登録を行っている職員のところへ向かう。
順番が来ると、前線を希望することを伝えた。
職員は自分たち五人を確認し、赤い線の入った紙を差し出す。
先ほど見たのと同じものだ。
赤い線が入っているだけなのだが、赤紙と思うとどうにも不安しかない。
紙を受け取って戻ると、トラヴィスが赤い線を確認して頷いた。
「よし。それなら問題ない」
カーリナがトラヴィスを見上げる。
「これで、難民キャンプまで行けるんだよね」
「ああ。難民キャンプへ案内する」




