↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/7

第07話 昆虫と会話したい子供

 7月。

学校が夏休みに入った頃である。

小学生が母親に連れられて博多から店にやって来た。

その日も、店主のパラカスは真里矢に変わってが応対した。


 「ま〜あ、どうしました?」

 「先生、困りましたわ。ウチのヨシオ君が蟻サンと、どうしてもお話しがしたいんですって」

 「アリって、昆虫の?」


真里矢は二人を応接室に案内する。

案内しながらヨシオに、


 「ソレって夏休みの宿題?」

 「そう。将来、そっちの方に進みたくて」

 「凄〜い! 蟻さんて面白いわよ〜。いろんな事をお話してるのよ」

 「そうなんですか? 蟻さん、僕の顔を見ると一生懸命、話しかけてくるんです。でも何を言ってるのか分からないんです。僕は甘いお菓子を見せるんですが、ソレじゃないみたいなんです」

 「お〜ホホホ。ウチのお店に蟻さんとお話しするDVDが置いてあるわよ」

 「えッ! そんなのが有るんですか?」

 「有るわよ。蟻さんはお尻(腹部)と触覚を使ってお話ししてるの。今、そのDVDをヨシオ君にお見せするわ」


真里矢はピパラス紳書の置いて有る本棚の下の金庫を開ける。

各種昆虫のDVDの中から『蟻』を取り出してヨシオに見せる。


 「コレよ。今、本物の蟻さんも連れて来るわ」


真里矢は奥の部屋に入って行く。

しばらくして、蟻の入った小さな瓶を持って出て来る。

ヨシオを見て、


 「ミカちゃんよ」

 「ミカちゃん? 」

 「正式な名前は『ミカド大アリ』って言うの」


真里矢はテーブルの上にミカド大アリの入った瓶を置いて、DVDをモニターにセットる。

ボタンをオンにするとDVDが回り始め、蟻の映像が映し出される。

蟻は蟻同士で何か話して居る様だか、モニターのスピーカーからは音声が出て来ない。


 「何にも聞こえませんよ?」

 「シッ! 瓶の中のミカちゃんを見て!」


瓶の中のミカド大アリは動きを止めて触覚を立てている。

真里矢はミカド大アリと映像の間にマイクロスピーカーを置いた。

そして、


 「ヨシオ君、向こうのお部屋に行きましょ」

 「えッ? 何ですか?」

 「向こうのお部屋でヨシオ君の脳をバージョンアップします。とりあえず、昆虫の会話が分かる様にします。ソレだけで良いのでしょう 

真里矢はヨシオの母親の顔を覗く。


 「あッ、え、ええ」


するとヨシオが反発する。


 「嫌だ! 話もしたい。僕はたくさんの蟻さんと友達に成りたい。会話が出来る様にして欲しい!」

 「お母さん、どうしますか?」

 「困ったわ〜。お値段は高いのでしょう」

 「少し高いけど、将来のヨシオ君の事を考えたらお安いと思いますわ。昆虫博士に成りたい様だし」

 「・・・。じゃ、お願いしちゃおうかしら」

 「ありがとうございます。まずヨシオ君の脳の中を変えて行きますので10分ほど、お時間を頂きます」

 「ヤッター!僕は天才に成れるぞ」


真里矢とヨシオが別室に入って奥の小部屋に行く。


 「ヨシオ君、そこの椅子に座ってくれます」

 「はい」

 「椅子に座ったらそこに置いてある硬い帽子を被って下さい」


ヨシオはヘルメットを被る。


 「・・・コレで良いですか?」

 「そう」


真里矢は個室に入って上から垂れ下がっている数本のコードをヘルメットに繋ぐと、個室を出て行く。

モニタールームに入りスイッチを入れる。

モニターにはヨシオの脳が映し出される。


ついて来た母親は驚いた表情で、壁のモニターに映し出されたヨシオの脳を見ている。


 「じゃ、お母さん。先ずヨシオ君の一つめの要望、蟻さんのお話しを聞くを始めるわよ」


真里矢はテーブルの上のカーソルで三半規管から前提神経脳幹、脳幹、小脳へとポインターを進めて行く。


 「ほら、このラインで声は脳に伝わり、脳内で理解の段階に入って行くの」

 「・・・凄〜い!」

 「人間の三半規管では蟻さんの声は反応(聞こえない)しないの。音のヘルツ数が限界を超えてるから。だから、三半規管にもう一つの規管を増やし、四半規管にしてみるわね」

 「ええッ! 手術するのですか?」

 「しないわよ。細胞組織を見つけて、その細胞からもう一つ規管を作っちゃうの」


母親は驚いて、


 「ウソ〜、そんな事出来るの?」

 「普通は出来ないわ。神の摂理に反するから。でも、このお店はホモサピエンス(人間)の先祖を創った神さま達の集まる所なの。だから、オプションでバージョンアップが出来るのよ。ウフフ」


母親は気持ち悪そうに真里矢の全身を見る。


 「ちょっと待って。今、四つ目の細胞組織を見つけて、三半規管の隣りにも一つくっ付けちゃうから」


真里矢はポインターを前庭神経組織の一部に当てて内部をクローズアップして行く。


 「・・・あ! あった。コレだ。今、この神経細胞を伸ばすわよ?い〜い。・・・」


真里矢はテーブルの上のコントロールボックスのバーを少しづつ、徐々に上げて行く。

壁のモニターに、大写しに成った新しい『規管』が前庭神経組織から伸びて行く。


 「はい! 四半規管が完成〜ッ!」

 「えッ! もうこれで、蟻さんの声が聞こえるのですか?」

 「ちょっと待って。今、ヨシオ君を連れて来るわ」


ヨシオが別室から出て来て、モニタールームに来る。

そこに映し出された蟻達のDVDを観ていると突然、


 「・・・あッ! 聞こえる! お母さん蟻さん達のお話しが聞こえるよ。あと、30分したら雨が降って来るからみんなに伝えろ! って言ってる」

 「ウソ〜、本当なの?」

 「ウソじゃない。巣の中でいろんな話しをしている」


真里矢が、


 「そう、良かったわね。で、次は蟻さんとのお話しね」

 「じゃッ、ヨシオ君、またあの個室に入ってさっきの帽子を被ってくれる」

 「はい。・・・ちゃんと蟻さんとお話しが出来るんでしょうね」

 「大丈夫よ。蟻さんも地球で生きてるお友達だから」


ヨシオは別室の小部屋でヘルメットを頭に被る。

真里矢はまた天井から伸びたコードをヘルメットに繋ぐ。

直ぐに応接室に戻り、モニターのスイッチを入れる。

ヨシオの脳内がモニターに映し出される。

真里はカーソルを動かし、左脳部分にポインターを当てる。

左脳は言葉の理解と発話を司る重要な部分である。

ヨシオの聴力の限界を新しい規管から更にヘルツ数を上げて、左脳部分への刺激を超微電流で上下させて蟻の発した音を左脳に理解させて行く。

蟻の会話はカラダ(尻・腹部)の擦る上下の微音の振動で成り立たっている。

その微音をヨシオが出せれば、会話は出来る。

真里矢は左脳から前頭葉の運動野にポインターを当てて超微電流でくすぐる。

ヨシオの親指と人差し指が、ひとりでに細かく動き出す。

真里矢は別室に行き、個室のドアを開ける。


 「ヨシオ君、帽子を取りなさい」

 「はい」

 「ここを出て、蟻さんの所に行きましょう」

 「はい」


二人はテーブルの上に置いた蟻の入った瓶の前に行く。


 「ヨシオ君、親指と人差し指を擦(コス)ってみなさい」


ヨシオが指を擦るとまず、ミカド大アリが急に動きを止めて触覚を上下さる。

そして、瓶の中の蟻の動きも一瞬止まり、ヨシオ君の擦(コス)る指に反応する。

ミカド大アリが瓶の中をクルクルと回り始める。

まるでダンスを踊っている様な動きだ。

するとそれを見て他の蟻達も、ダンスを始める。


 「はい、ヨシオ君。アナタは蟻さんとお話しが出来たのよ。今度はアナタが、蟻さんとお話ししたい事を頭の中で思い描いて、言葉に出して親指と人差し指を擦ってみなさい」


ヨシオは少し考えながら真里矢の言葉通りに指を擦る。

蟻達はソレに応(コタ)えるように触覚をピクピクと動かす。


 「先生、蟻さんが僕の言葉に返事(反応)をしている」

 「はい、コレでヨシオ君は蟻さんとお話しが出来るように成ったわ。ヨシオ君?」

 「え?」

 「地球に存在するモノは全て『お話し』しているの。生きて居るのよ。ヨシオ君の耳には聞こえないだけなの。実はね、宇宙のアノお星様達もお話ししているの。宇宙全体が毎日お話ししているの。だから全てがお友達なの。淋しいなんて思ってはダメよ」

 「へぇ〜、先生て凄い人なんですね。誰とでもお話しが出来るのですか?」

 「必要な時はね」

 「また、お話し聞きに来ます。あッ、先生て地球の人ですか?」

 「ウフフ」


母親は唖然として真里矢とヨシオの話しを聞いている。

                        つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。