第01話 脳を売る店
風と砂浜と山に囲まれた島。
こんな島の集落の一画に、奇妙な名前の店が在る。
夜、海に向かって不気味に照らし出されるサインボード。
『ブレインショップ・パラカス』
『脳を売る店』とはいったいどう云う事なのだろう。
人間の脳など売買して良いのだろうか。
それよりも脳など買いに来る客は居るのだろうか。
ところが、どこで噂を聞きつけたのか・・・繁盛しているのである。
集落の人に尋ねると、この店はパラカスと云う店主が一人で切り盛りしていると言う。
しかし時々、どこからともなく女性の店員?が手伝いに来るらしい。
村人はこのパラカスを、通称『長頭サマ』と呼んでいて、時々店に顔を出す女性店員を通称『真里矢サマ』と呼んでいる。
しかし・・・。
実はこのパラカスは、一人で二役をこなす『異人種(地球人では無い)』なのである。
パラカスの容貌はまさに福禄寿の様な長い頭の持ち主で、白衣を着て片目には『黒いアイパッチ』を付けた、一見海賊風のいでたちで店に現れる。
そして、時々店に現れる女性店員は羽衣の様な白衣を着て、薄く透けたマスクで口の周りを覆ったまるで天女かクレオパトラの様な『超美人』だと村人は言う。
店に入ると先ず目を引くのはパラカス(店主)の由来が書かれた、額に入った『営業許可証』である。
この営業許可証には、パラカスは700万年前に、U.3星と云う星から地球にやって来た『パラカス人(人では無い)』と書いてある。
確かに『地球誕生の歴史』には800万年前から500万年前の間の300万年は空白の時代と言われて、猿人からの進化の形跡(化石)が発見されていない。
したがって、700万年前に地球にやって来たと言う話しもまんざら嘘でも無い様に聞こえる。
しかし誰がこんな営業許可証を発行したのであろう。
パラカスは客が来店すると、
「私はあなた方の父である」
と称して脳を販売している。
またこの店には、U.3星から持参したと謂う『神書?』も販売している。
中身は数百万回再編した様なボロボロの『パラカス神書』と言う代物だ。
その『神書』を開くと、点と曲がった線だけのモールス信号の様な文字で、何が書いて有るのか私達地球人には皆目、理解不能である。
そのパラカス神書の値段は『応相談』と書いてある。
俗人からすると、まるで『宗教団体の詐欺商法』の様に見える。
この店は当初、日本橋(東京)の小網町、『小網神社』の近くに在った。
なぜ小網神社の近くに店を出したのかと言うと、この神社の御神体(七福神の一人『福禄寿』)がパラカスの容貌に瓜二つだったからだそうである。
元来、『七福神』はインド発祥の神だと言うが、アレは真っ赤な嘘で人間達の欲を戒める異星人パラカスの化身として地球に移住して来たそうだ。(※ 七人の乗った宝船は宇宙船である)
それがいつの間にか、利益や芸術、欲の化身として真逆の『人間達の神』に祀り挙げらてしまったそうである。
だからこの場に来る参拝者は長生きや、家内安全、商売繁盛、一攫千金を願う人間ばかりで、『脳』などに興味を持つ客など一人も居なかった。
仕方がなく、パラカスはこんな辺鄙で砂浜と山に囲まれた奇妙な島に店を移転した。
実はこのパラカス、この長い頭の中には『脳が二個』入っている。
一個は男性、もう一個は女性なのである。
したがって長頭人の星には生殖本能(愛や恋)などは存在しない。
またこの二個の脳は、定期的に交互に太陽光によって充電、バージョンアップしている。
まるで植物の光合成の様である。
そのバージョンアップ時に計算された人口数に細胞が分裂し、パラカスは増殖して行く。
パラカスは日本語を流暢に使いこなし、言葉の端端に異星人の訛りが混じって、ソレがまた人間の脳をセールスするにはもってこいの雰囲気なのである。
また営業の仕方もホモ・サピエンス(人間)の心を良く掴み、中々の商売上手だ。
『その客層』だが、主に九州大学の医学部の学生や鹿児島大学医学部の学生が良いお得意様らしい。
たまに京都大学、東京大学、群馬大学医学部附属病院や千葉大学の附属病院の脳外科教授も説明を聞ききに来て、高額な脳を『大学の経費』で買いに来ると言う。
店内には標本瓶に入れられたアルコール漬の、地球のあらゆる動・生物の採れたてのクリーンアップされた脳が、あたかもプラモデルのごとく展示されている。
人間の脳の仕入れ先は主にウクライナや中東からだそうだ。
時々、アフリカの内戦地域からも送って来るらしい。
このパラカス、前に述べたが女性に変わる時は髪の毛を高く盛った、まるで弁天様の様な色っぽい女に変身し、透けたドレスで人生(自我)の相談や小動物(犬・猫)、昆虫、微生物の脳の販売及び、メンテナンスや交換等の話しを持ちかけて来る。
その日、パラカスは『女性に変身』して港の待合室でチラシを配っていた。
つづく




