街へ
「じゃじゃーん!」
「どうですか、兄様?兄弟に見えますか?」
私とクレイン殿下は髪を染めて変装をしていた。
「兄弟…見えなくもない。それにしても馬鹿みたいだな。」
「私たちは真剣なのです。」
「まあ、楽しいならいい。今日は護衛は?」
「なしのつもりです。」
「それはとても危ない気がするが…」
「大丈夫ですよ!わざわざ服まで平民風にしたのですから。」
「そうか。クレイン、護身術の心得は?」
「多少は、あります。」
「ならいい。多分そいつは自分を守れないからいざとなったら置いていけ。」
そいつとは私のことだろう。ひどいことを言われているが、正しいことだ。
「そうです、私は運動ができないのでいざとなったら置いていってくださいね。」
「…」
「まあ、とにかく行きましょう!」
「はい!」
私は街に行くことを結構楽しみにしていた。変装とかもなんかお忍びという感じがして楽しい!あと、久しぶりに黒髪になってなんか安心するなあ。ピンクの髪が視界の端で揺れているとやはり落ち着かない。やっぱ黒髪は最高だ。
「リラさん、そういえば名前はどうしますか?そのままだとまずい気がします。」
「うーん、クレイン様はレインとかでいいのでは?私はライラにでもしましょう。」
「ライラ?」
「ええっと、ライラ(ライラック)はリラの別名で。」
「なるほど、いい名前です。」
「殿下を呼び捨てで呼ぶなんて恐れ多いですが…」
「僕たちは兄弟なのです!姉が弟を様付けで呼んでたら変ですよ。」
「そうですね。あ、レインは私のことライラ姉さんとでも呼んでください。」
「ラ、ライラ姉様」
「違います、姉様ではなく、姉さんです。平民はそう呼ぶのですよ。」
これは前世の記憶。実際はそうなのか知らないが多分そうだろう。私は妹に姉さんとは呼ばれなかったが。
「うう。ライラ姉さん。」
「よくできました。」
「また子供扱い…」
「私は姉なのだから、当たり前でしょう?」
私がそう言うと殿下はそっぽをむいてしまった。どうやらご機嫌斜めのようだ。
街に着いた。ここは王都から少し離れたところにあって、とても美しいところだ。
「着いたー!よし、レイン、レッツゴー!」
「レッツゴー?」
あ、しまった。これは英語だった。
まあ、いいとしよう。ノリでいけるでしょう。
街に入るとたくさんの人がいた。私たちもなんとか馴染んでいる。
「ライラ姉さん、手、つなごう。」
「え、なんで?」
「だって、迷子なると困るよ」
「いや、私たちもうそんな年齢じゃないよ?幼子じゃあるまいし。」
確かにクレイン様は子供っぽいが、それでも11歳。手を繋ぐような年齢ではない。
「年齢を気にするのはよくないよ!」
いや、あなたがいいますかそれ、と声を出しそうになったが、なんとか我慢した。
「レイン、何か食べない?」
「はい!」
私はお腹が空いたので何か食べることにした。
「そこの子達、プレッツェルはいかが〜?残り1個だよ。」
「プレッツェル!」
まさかこの世界にあるだなんて。私は前世、かなり好きだったからとても嬉しい。
「ねえ、レイン、食べよ!美味しそうだよ。」
「うん!」
私たちが無事プレッツェルを購入し食べようとした頃、さっきの店の方から怒声が聞こえてきた。
「ちょっと、プレッツェルが売り切れですって?わたくし、このプレッツェルのためにここに来たのに。ないとはどういうこと?」
「お客様、プレッツェルはちょうど売り切れでして…」
「それはどうにかしなさいよ!それくらいできるでしょ。」
何だか迷惑客がいるみたいだ。可哀そうに…
ん?あれ?あの声、何だか聞いたことあるような…怒ってた人は茶髪に縦ロールだった。この見た目にも見覚えがある。何だっけ?
「ああっ!」
思い出した。あの人はアナベル・デリシエス。
この乙女ゲームにおける悪役令嬢だ。




