王宮でのお茶会
私は池を出た後、大急ぎで父の元に向かった。かなり時間がない。これはどっかの誰かさんのせいだ。私は父と合流するとお茶会の会場に行った。そこはまた綺麗な庭園でなかには小さな東屋がある。そして片端にはピアノが置いてある。よくこんなところに持ってきたなあ。きっと大変だっただろう。
「まだ相手の方は来てないみたいだ。」
しばらくすると2人の人が来た。私と同じくらいの年齢の人が1人とその母親らしき人が。
私は子供の方を見て絶句した。
「ええー!」
相手の方も驚いた顔をしている。なんとそこにはさっき池のところで会った少年がいたのだ。
私は何か挨拶をしなければならないことを思い出した。
「ええと、はじめまして…ではないですね。こんにちは、私はリラ•ハーペストと申します。」
「お前、さっき池のところで」
「ちょっ、ストップ、それ以上は言わないで!」 さっきの件を暴露されると少しまずい。私は慌てて止めた。そしてその後にことの重大さに気づいた。今日のお茶会の相手は王子殿下、つまりこの人は…
「ユリアス•クラヴィーア、この国の第一王子だ。」
やばい、私は顔を引きつらせないよう努力した。まさかさっきの人が王子殿下だっただなんて!王子様ってあんな性格悪いもんなの?なんかがっかりなんですけど。
それはそうと何か話題をつくらねば、
「そういえば、バイオリンの演奏はどうするのですか?」
「今からやってもらおうかしらねぇ。」
隣にいた女性の方。つまり王妃様が答えた。
「えっと、伴奏は?」
「あ、それはこのユリアスがやってくれるわ。こう見えてピアノが得意なの。」
ええ…まじか、終わったかもしれない。この人とは合わせれる気がしない。
「あ、練習の時間が必要よね。私たち親は少し話をしてくるから、練習しておいていいわよ。」
殿下と私は2人で取り残された。
「…」
「…」
沈黙が続く。とても気まずい。
「あの、練習、しません?」
「ああ。」
私はのそのそとバイオリンを準備しはじめた。できるだけゆっくりと。ただ、いくら遅くしてもいつかは準備完了してしまう。
「お前、本当にバイオリン、弾けるのか?」
殿下だ。
「弾けますよ。いちおう3年くらい習っていますし。それにあなたこそピアノ、できるのですか?」 私は一応幼い頃からやってきたのだ。とても自信があるわけではないが人前で少し演奏できるくらいの腕前はある。それよりこの人がピアノ弾けるということのほうが信じられない。
「できるに決まってるだろ。俺だって長いことやっている。」
「あ、一人称俺なんですね。」
まあ、この性格で僕とか言ってたらなんか変だもんね。こっちの方がしっくりくるよ。
「人前で変えてるだけだ。」
「それよりはやく、練習しましょう。」
彼が前奏を弾きはじめたとき、私は悟った。殿下は相当ピアノがうまい。私も前世ではピアノを習っていたから指使いや音で分かる。それほどに綺麗な演奏だった。私はぼーっとしてバイオリンを弾くことを忘れていた。
「おい、何している、バイオリンはどうした?」
「あ、忘れていました。」
「本当に大丈夫なのか?やはり弾けないのでは?」「いや、殿下の演奏があまりにも上手くて、聞き惚れておりました。丁寧に練習してきたことがわかる演奏でした。」
「なぜ分かる?まあいい、練習再開するぞ。」
彼は若干頬を赤くしているように見えた。
練習は予想以上にうまくいった。殿下は合わせるのも上手いみたいだ。本当にすごいなあ。私はピアノで拍子を数えるのが苦手だったから。
これなら人前で見せても大丈夫というほどにはなった。どうやら、彼とは演奏の面では気が合うらしい。
その後、演奏のときもうまくいき、お茶会は成功に終わった。王妃様は「パッヘルベルのカノン」をいたく気に入ったみたいだ。まあ、そりゃそうよね。だって、カノンだもの。すっごい名曲だから。私はうまくいったことに安堵し、ほっと一息ついた。
ただ、演奏中に1人の人がのぞいていた気がした。まだ幼い子供だったような。あれはいったい誰だったのだろう?




