第34小節目 ♫ 黒白の国
それからさらに数日が経ち、ついに水平線の向こうに陸地が見え始めた。
クロウリーたちが乗る船は、ゆっくりと港へと近づいていく。
「見えてきたね、ユーリ。
あれがピアノ合衆国だ。」
クロウリーは甲板で風を浴びながら目を細めた。
その視線の先には、巨大な大陸が広がっていた。
「あれが…ピアノ合衆国。
あれ、『ピアノ』だ。」
「ん?」
ユーリの言葉にクロウリーは首を傾げたが、すぐに何を言わんとしているか理解した。
「ああ、そうなんだよ。ピアノ合衆国の大陸の形!
その大地は、まるでグランドピアノを上から見た時のような形をしているんだ。」
広がる海岸線はまるでピアノの外枠。
偶然なのか、それともわざとなのか。ただ、ピアノがこの国を象徴する楽器であるのなら、あの形だって象徴そのものなのかもしれない。
ピアノの形をした大陸の向こうには、まだ見ぬ新しい冒険が待っている。
やがて船が先に進むと、クロウリーたちの視線の先には、几帳面に並んだ白と黒の建物群が現れた。
そして港には空高く掲げられた旗が、風になびき翻っていた。
ピアノ合衆国の国旗。黒白二色のピアノの鍵盤が規則正しく描かれており、そのデザインはシンプルでありながら、どこか威厳を感じさせた。
「鍵盤の数、数えられますか?」
目をこらしながら問いかけるユーリに、クロウリーは笑みを浮かべて答える。
「全部で五十だよ。あの旗は、この国そのものを表しているんだ。」
白色の鍵盤は、元々この国に存在していた州の数を表し、対して黒鍵は新たに独立して増えた州の数を意味している。
白鍵と黒鍵が寄り添いながらその音を補うように、この国の歴史もまた、異なる州同士の調和と補完の物語であった。
「本当に、音楽が国を形造っているんですね。」
ユーリのその声はやや弾み、どこか感嘆の色が滲んでいた。
クロウリーは深く息を吸い込み、目の前の新たな光景に意識を向けた。
つづく




