第23小節目 ♫ 広がるポワゾン
二人は薄暗いユーリの小屋の中で、燭台を挟んで向かい合っていた。
クロウリーの怪我は完全に癒えたものの、二人の心には不安が渦巻いている。
「やはり王都に戻るべきだ。」
彼が低く口を開いた。
「ボクは本当は生きていて、何もしていないことを証明しなければ、国は混乱したままだ。」
「けれどクロウリー様。正直、この状況はかなり危険だと思います。」
フルート皇国の刺客たちは今も国中におり、クロウリーを”本当に死んだもの”とするために、探し回っているだろう。
さらに国に広まった嘘の噂を、どれほどの民が信じてしまっているかも分からなかった。
「それでも、王都に戻るんですか。」
ユーリは不安げに問う。
「戻らないと何も始まらないからね。
もちろん目立たないように慎重に行動するさ。」
クロウリーの声には、微かな決意が宿っていた。
二人は夜明け前に小屋を出発した。
ユーリはバッツを肩に乗せ、クロウリーはマントを深く被って顔を隠した。
森を抜け、ひっそりと王都に戻ってみると、道端の掲示板や小さな店先に、奇妙な張り紙が目立つようになった。
ユーリはその一枚の紙を取った。
「『亡くなったとみられるクロウリー王子、国家転覆を計画していた証拠が発見される。手書きの文書と目撃証言』…?」
それはまるでクロウリーの悪名を広めるためのものだった。
ユーリは紙をびりびりに破いて捨てた。
「こんなものは全部でっち上げなのに…。
クロウリー様がそんな文書を残すはずがない。」
紙には王子の名前と偽造された計画書の一部が載せられていた。
さらに『目撃者』とされる者の証言も記されている。
「なるほどね…。
フルート皇国の奴ら、ここまでして国を混乱させたいなんて。近いうちに侵略でもしてくるつもりなのか?」
「どうすればいいんでしょう…。」
クロウリーは少し考えた後、静かに言った。
「海の向こうのピアノ合衆国。
そこに信頼できる人がいる。
彼女を頼ってみることにしよう。」
つづく




