第20小節目 ♫ 枯れ木の大地
「くそっ、逃げたって無駄だぞ!
追手を呼んで、国中を探し回ってやる!」
後ろで叫ぶ男の声が小さくなっていく。
クロウリーたちは息を切らしながら、森のさらに先へと走った。
「撒いたか。ここまで来れば大丈夫だろう。」
クロウリーは呼吸を整えながら言った。
あたりを見渡すと、そこは少し開けており、草木は枯れていた。
まるでそこだけ自然の息吹が失われているかのような場所だった。
「大丈夫かい、ユーリ。
厄介なことに巻き込んでしまったみたいだね…。すまない。」
「いえ…。」
二人は倒れていた大木を背もたれにし、腰を下ろした。
そしてクロウリーは手に持っていたソプラニーノオカリナを見て、軽く埃を払うように撫でた。
「久しぶりに吹いたな…。お前がいてくれてよかった。」
「オカリナに話しかけているんですか?」
ほのかに笑いかけるクロウリーに、ユーリが首を傾げた。
「ああ。彼女には心があるからね。」
彼はオカリナを物としてではなく、生き物のように扱っているようだ。
「あの、さっきフルートが当たった場所…。」
ユーリがクロウリーの肩に手を伸ばす。
「うん、このくらい平気だよ。」
平気と言いながらも、彼はわずかに顔をしかめた。
血の匂いが滲むのを少女は感じ取った。
「やっぱり怪我してる。私が庇ったせいで…。」
「なに、君は悪くないよ。
それにユーリが無事で良かった。
まあ、力比べで負けたのは格好悪かったけど。」
クロウリーは目を逸らして苦笑いする。
ユーリは何かを少し考えたあと、一人頷いた。
そして持っていた肩掛けの鞄にそっと手を伸ばした。
彼女が手にしたものに、クロウリーは目を見はった。
「バスオカリナ…。」
つづく




