第19小節目 ♫ ソプラニーノの一閃
「王子様が民を守るとは感心だな。」
男がにやりと笑う。
そして銀色のフルートを剣のようにして持ち、勢いよくクロウリーに振りかざした。
王子は瞬時にユーリを庇い、その身を盾にした。
フルートの端が彼の腕をかすめ、痛みが走る。
しかし再び棒を構え、毅然として真っ直ぐに敵を睨みつけた。
クロウリーは抵抗するが、力の差に圧され、両腕を捕らえられてしまった。
「くっ…。」
その時だった。
「ギャッ!」
突然、クロウリーを掴んでいた男が間抜けな悲鳴をあげた。
腕には小さな爪痕が残っている。
バッツだった。
「えっ、なんだこのコウモリ!」
「おい、離せ!」
バッツは刺客の顔近くを飛び回り、しつこく羽音を立てながら小さく噛みついている。
続いてもう一羽のコウモリも参戦し、男の肩に降り立つと、服を引っ張るようにくちばしでつついた。
「くそ、小癪な!」
刺客たちが手やフルートを振ってバッツを追い払おうとするが、動きがぎこちなくなった。
「今だ。」
クロウリーはその隙を見逃さなかった。
懐に入れていたミケルのソプラニーノオカリナを素早く手に取り、鋭い音色を思いっきり吹き鳴らした。
ピーーーーーーッ!!!
「ぐっ、この音…!」
高音の振動が周囲の空気を切り裂くように響き、男たちは耳を押さえて苦しみ始めた。
クロウリーは一歩踏み出し、さらに音を奏でた。
その小さなクリスタルから放たれる不思議で力強い音色は、まるで刃の一閃のように男たちの動きを封じ込めていた。
「ユーリ、走るんだ!」
クロウリーはユーリの手を取り、森の奥へと走り出した。
そしてバッツたちも慌てて後を追うように飛び去っていった。
つづく




