第16小節目 フルート皇国
クロウリーの後ろで話を聞いていたユーリは困惑した。
「フルート皇国?死んでもらうって…!?」
フルート皇国___オカリナ王国の北隣に広がる、広大な地を持つ皇国だ。
その名の通り、フルートがこの国を象徴する楽器であり、指使いや構え方など、オカリナと類似している点も多い。
しかしその音色が華麗で技巧的であるように、皇国そのものが華やかで美しい国として知られている。
雪に覆われている銀白の大地が広がり、国全体が白と銀色を基調とした統一感を持つ景観を誇っている。
しかしその印象に反して、かつてはこの世界の南の海に浮かぶ『パーカッション諸島』を侵略し、長きにわたり植民地として支配していたという暗い歴史も持ち合わせている。
侵略による膨大な富と力を蓄えたフルート皇国は、今もなおその野心を隠してはいないようにも見える。
「となると…君らってフルート皇国の刺客ってとこなのかな。」
クロウリーは話の流れでそう推測した。
しかし彼らがオカリナ王国に対して何を企んでいるのかまでは、まだ確証を得られていなかった。
ユーリは恐怖で体を硬くしたが、バッツたちが頭上を低く飛び回り、威嚇するような動きを見せた。
彼女はその意思を感じ取りながら、小さく囁く。
「クロウリー様、私とバッツが囮になります。
逃げる隙を…。」
「いや。」
しかしクロウリーは毅然とした声で彼女を制した。
「逃げるのは奴らの方だ…!」
相手の男たちが一斉に飛びかかろうとした時、クロウリーはユーリを背後に押しやり、倒木の棒を手に取って構えた。
その目には、王子としての誇りが静かに燃えていた。
つづく




