第15小節目 ♫ 冷徹の横笛
横笛を構えた二人の男は、森の静寂を裂くように突然姿を現した。
その艶やかな管楽器は、光を冷たく反射しながら威圧感を放っている。
形状は間違いなく楽器のフルートだが、それを持つ男たちの動作には、奏者というよりも兵士のそれが滲んでいた。
「どうやら友好的な理由で現れたわけではなさそうだけど…。一体どちらさまで?」
クロウリーは平静を保っていたが、同時にその左手はユーリを後ろに制していた。
男たちは白を基調とした華美な衣装を纏っており、その表面にはいくつもの銀細工の装飾が施されていた。
そして、腰には専用のフルートホルダーが備え付けられている。
「俺たちの名など覚える必要はない。」
男が口を歪ませて笑う。
「クロウリー王子。
お前、死んだんじゃなかったのか。」
「死んだ?え、ボクが?」
ここにいますけど、と言わんばかりにクロウリーは平然と両手を広げてみせた。
「お前が塔から落ちてから、王子は死んだと騒がれ、国は混乱している。
民の心は揺れ、王城は今、無防備だ。」
もう一人の男は冷笑を浮かべる。
「そして混乱の中、さらにクロウリー王子は国家転覆を企てていたという噂を流せば、ますますオカリナ国は不安定になる。その方が俺たちには都合がいい。」
「噂…、まさか国がこんなことになってるとはねぇ。」
冷静を保っていたクロウリーも、さすがに表情に怒りが滲む。
「しかし、まさか王子が生きていたとは想定外だった。
お前が生きていたら計画が狂う。だからな、黙ってフルート皇国に来てもらうぞ。
そして”もう一度死んでもらう”だけだ。」
男たちはクロウリーに向かってフルートを構えた。
つづく




