第14小節目 ♫ 銀色の刺客
ユーリの言葉に、クロウリーはそれ以上聞くべきか迷った。
しかし、彼女の左右の親指の腹にほんのりと見えた薄いタコを見逃さなかった。
それが意味するものに気づいた時、クロウリーは何も言わずにただ口元を緩ませた。
そして彼は、包帯が巻かれた足を気にしつつ、床に足をつけた。
「ちょっと、まだ安静にしていてって…。」
ユーリは、ベッドから出ようとしているクロウリーに少し焦ったように声をかけた。
しかし彼の緑色の三白眼には、王族らしい決意が宿っていた。
「王子が突然いなくなって、国は混乱しているだろうからね。早く王都に戻らないと。」
その言葉にユーリは何も言えなくなった。
「王都に戻ったら、きちんとお礼がしたいな。
ありがとう、ユーリ。」
冷たい風が木々を揺らし、静寂な森に小枝の折れる音が混じった。
二人と二羽は、王都へと続く森の小道を歩いていった。
森の中は昼間でも薄暗く、湿った草木の香りが漂っていた。
クロウリーは周囲を警戒しながら進んでいたが、ユーリとバッツたちの和やかなやり取りが彼の緊張を少しだけ和らげた。
「王都に戻ったらまずは何をするつもりなんですか?」
ユーリが尋ねると、クロウリーはこう答えた。
「王城に戻り、皆に無事を伝えるよ。
それから謝らないといけないな。きっとみんな心配してる。
弟の、ミケルにも…。」
彼は最後に見たミケルの顔を思い出した。
怒りに満ちていたが、それと同時に泣きそうな顔でもあった。
ユーリは何も言わず頷いた。
この時国では、クロウリーは亡くなったと思われ、国家転覆を企てていたなどという噂が流れ始めているなど、二人は知る由もなかった。
その時、バッツが急に羽ばたき、鋭い鳴き声をあげた。
ユーリは振り向き、眉をひそめた。
次の瞬間、二人の目の前に銀色の二本の棒が交差し、行手を阻む形で差し出された。
「これ以上、進ませるわけにはいかない。」
銀に輝くそれは、フルートであった。
つづく




