第13小節目 ♫ 黒マントの妖精【番外編①】
ユーリが一人で暮らすこの小屋の天井に棲みついている、バッツ。
小柄で柔らかな翼をたたむその姿は、どこか愛嬌があり、まるで自分の家だと言わんばかりのくつろぎようだ。
「バッツ、少し静かにしていてね。」
ユーリが台所でパンをこねながら言うと、コウモリたちは小さく「キィ」と鳴いて応える。
二羽のコウモリ___右側のバッツと左側のバッツは、いつも少女の傍らにいる特別な存在だ。
ただのペットではない。ユーリを手助けし、時に話し相手にもなる彼らは、彼女の生活に欠かせない。
一本の梁にぶら下がる右のバッツは、時折その小さな爪で翼を直しながら、上機嫌そうに何かを口ずさんでいるかのようだった。
対して左のバッツはやや気難しいらしく、目を閉じると決めたのか、時折顔を翼で覆うようにして寝入っていた。
「もうすぐ焼きたてのパンができるよ。でも君たちの分じゃないからね。」
そう冗談めかして言うと、右のバッツが不機嫌そうに黒のマントをばたつかせる。
「キィッ」と一鳴きして、何かを主張しているようだ。
「分かってるって。後で果物をあげるから待ってて。」
その言葉を聞き二羽は満足したのか、今度は梁からするすると降りてきた。
そして窓辺のカフェカーテンのひだに腰掛けるように身体を支えた。
まるで人間が椅子に座っているような姿だ。
「昼間くらいちゃんと寝ていればいいのに。」
ユーリはそう呟きながら、思わず笑みを浮かべる。そしてまたパン作りを続けた。
カーテンの隙間から差し込む日の光を小さな背中で受け、バッツの片方が大きなあくびをする。そしてもう片方が隣で小さく丸まる。
二羽は昼間でもユーリの周囲にいるのがすきなのだ。
つづく




