第10小節目 ♫ オカリナパンと蝙蝠(コウモリ)
「ユーリ…。君が助けてくれたんだね。」
クロウリーの言葉に少女は軽く頷きながら、パンとスープをベッドのサイドテーブルへと置いた。
「はい、焼きたてです。どうぞ。」
「これは…オカリナパン…!」
差し出されたそれは、オカリナ王国特産の硬めのパン、『オカリナパン』だ。
名前の通りオカリナの形をしているそれは、初めてオカリナを作った者が広めたと言われる伝統料理だ。
昔とあるパン職人が、かまどで新しいパンの試作、に励んでいた。
すると失敗作のパンが偶然音を鳴らすことに気づいた。
そこから、『音の出るパン』という遊び心で改良を重ね、いつしかそれが楽器のオカリナとして発展していったという話が残っている。
オカリナパンは、今でもオカリナ王国では家庭料理としても親しまれている。
また、お祭りの日にはそれを配り、吹いて音を鳴らしながら食べるという風習もある。
そのまま食べても良さ、スープに浸しても良さ。
意外な軽さが魅力の、国民食だ。
「すごいよ君、パンが焼けるのかい?」
「子どもの頃から作ってるので…。」
ユーリはさらりと返し、自分の分も用意した。
クロウリーは礼を言ってからパンを一口かじった。
「それにしても、あなたはすごく運が良かったみたいですね。
森にできた粘土が、上から落ちた衝撃を和らげてくれたみたい。」
「粘土…?」
彼はあの時の感触を思い出そうとした。
そして、この家の一角、木で組まれた天井の梁をふと見上げた。
そこには二羽のコウモリがひっそりとぶら下がっていた。
昼間だというのに、どちらも微妙に目を開けており、周囲を伺っているようだった。
つづく




